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視界が白から小さな部屋へと変わる。
その真ん中にぽつんと少年が体育座りを
しており周囲には本が散乱していた。
「…君も勝手に過去を覗いていくだけだ。
もう何も信じない、出ていってくれ。」
少年は折西を睨みつける。
「…そうかもしれないね、僕は過去を覗く
だけで過去を変えることは出来ないかも。」
少年の目線の高さになるように折西はしゃがむ。
「…何だよ。」
「けれど君の未来は、僕の世界で生きる君の
今は…君が思っている以上に信用出来る人で
いっぱいだよ。」
「…嘘だ!お前が鍵開けするためだけに
沢山の人が俺を騙してきた!!!」
「そ、それに関しては何も言えないなぁ…
けどもし君が救われたのなら、
その嘘は優しい嘘かもしれないよ。
だからみんなの嘘を優しい嘘に
変えれるように頑張るね!」
「…くそっ…いつもこうだ
…全部俺は騙されていく…」
折西は悔しそうな表情の少年の頭を
優しく撫で、部屋から出ていくのだった…
・・・
折西の視界は一軒家の広間へと移り変わる。
かなり富裕層なのだろう。
広間にはシャンデリアが大きな窓から
入り込む光を反射してキラキラとしていた。
「一颯(いぶき)、よくやったな!!!」
父親らしき男性が紫髪の目元が全て
隠れた少年をわしゃわしゃと撫でる。
一颯は100点のテストを握り、えへへと笑う。
この少年が組長なのか?と折西が思って
見ていると父親がポツリと
「魅久雄(みくお)とは大違いだ。」
と言った。
すると一颯は嬉しそうな笑顔が少し歪み、
苦笑いのようになっていた。
「魅久雄は勉強より周りをよく見て動くのが
得意なだけだよ!!!だから大丈夫だって!」
一颯がそう言うと父親はキョトンとした
顔になりアハハと笑い始める。
「全く一颯は優しい子だなぁ!!!」
また父親は一颯の頭を撫で始める。
一颯の表情はその後からずっと
曇ったままだった。
折西の視界がまた白に覆われ景色が変わる。
今度は同じ建物の別の部屋に変わった。
「また魅久雄はこんな点数とって!!!」
母親らしき人が少年、魅久雄を睨みつける。
魅久雄は50点のテストを持ったまま
俯き何も言葉を発しない。
「あんたはいつもそうよね…都合が悪ければ
黙ればいいと思ってる。」
もういい、と母親は部屋から出ていった。
しばらくすると一颯が部屋のドアをそっと
開けて入ってきた。
「兄ちゃん大丈夫???」
「…うん。けど母さんに渡せなかった。」
魅久雄が何やらベッドの下から箱のような
ものを取り出す。
「もしかして母さんの誕生日プレゼント?」
一颯が聞くと魅久雄はコクリと頷いた。
「万年筆…母さんよくペンを使う
仕事してるから少しお高めのやつ…」
包みを傷付けないようにそっと外すと
軸の部分が透明になっており中にうっすらと
模様が入っているペンが入っていた。
「それさ、10万くらいするやつじゃない!?
もしかしてバイトのお金が全部無くなったん
じゃ…!?」
「…うん、貯蓄以外は全部なくなった。
自分で稼いで買ったとはいえ、母さん僕のこと
嫌いだし一颯が渡した方がいいかも。」
「兄ちゃん…」
「大丈夫。俺は一颯みたいに勉強ができないから
その代わりにバイトで皆んなを助けたいんだ。」
魅久雄が苦笑いすると一颯はそういえば!
と話を切り替えた。
「あ、あのさ!兄ちゃんのバイトの後輩が
魅久雄さんはちゃんと部下がわかるまで
教えてくれる優しい人だって慕ってたよ!
説明もわかりやすいって!!!」
一颯がそう言うと魅久雄は目を丸くしていた。
「そ、そうなの…?俺、あんまり自分が
説明できたと思わないし後輩の子の
仕事の飲み込みがいいだけだと思うけど…」
「きっと覚えるために色々努力したから
相手に覚えやすいように説明するのが
上手いんじゃないかな?」
「そ、そうなのかな…?」
「そうだよきっと…誰にでも得意不得意
あるのを父さんも母さんも分かってくれたら
いいのにね…」
「父さんも母さんも将来を心配して怒って
くれてるんだと思うから仕方ないと思う。
…俺は一颯が理解しているだけでも
十分嬉しいよ。」
魅久雄はそう言うと箱の蓋を閉めて
包みを元に戻し、一颯にそれを手渡した。
「これ、お願いね。」
「…わかった!」
一颯が部屋を出る姿を見て魅久雄は
「今度は一颯の誕生日だな…」
と呟くのだった…
・・・
「母さん母さん!!!」
一颯が母親の元へと駆け寄る。
「あら、一颯ちゃん!!!どうしたの?」
「これ!誕生日プレゼント!!!」
一颯は魅久雄から受け取った箱と
一輪の花を母親に渡した。
「あら!綺麗なお花ね!」
「うん!母さん誕生日でしょ?
俺から何も無いの寂しいなって思って
近くの山に生えてる綺麗な花を
取ってきたんだ!」
「わざわざ山まで!!!ありがとうね一颯!」
母親が一颯の頭を優しく撫でると箱を見る。
箱の包みを破り、箱の中身を見る。
「あ!それは兄ちゃんがバイトで
頑張ってお金貯めて買ってきたって!!!」
嬉しそうに話す一颯と相反するように
母親の顔はみるみるうちに青ざめていく。
「…魅久雄がバイト?」
「…?う、うん…勉強ができない代わりに
バイトで稼いでるって…」
「今すぐ魅久雄を連れてきて。」
母親の無表情に恐怖を感じながらも
一颯は急いで魅久雄の部屋へと向かい、
ドアを開ける。
「…一颯?どうしたの?」
「な、なんかよくわかんないけど母さんが
めちゃくちゃ怒ってる…」
「えっ!?な、なんでだろ…?」
一颯は魅久雄の手を引くと母親のいる
場所まで連れていった。
・・・
「ど、どうしたの…?」
「…アンタどういうこと?
何、バイトしてんの?」
「う、うん…勉強ができない代わりに
働いて母さんと父さんと一颯にプレゼント
とか学費とか払ってあげたくて…」
魅久雄が説明していると母親は持っていた
箱をぐにゃりと曲げた。
「これ以上貧乏臭いことして私たちに
恥をかかせないで。」
「…えっ?」
「アンタは勉強だけやってればいいの!
学費くらいあるわよ!!!
ペンくらい買うお金だってあるわよ!!!」
母親は箱ごと地面に叩きつけると
ガラスでできたペンは粉々になってしまった。
「…こんなことするから頭悪いんじゃないの?
もういい、アンタに部屋なんか渡すんじゃ
なかった…今度から書庫で過ごして本でも
読んで少しは空っぽ脳みそに
情報を入れなさい。」
癇癪を起こした母親はその場から
立ち去り、魅久雄と一颯はその場でただ
しばらく、破片と成り果てたペンだった
ものを見つめることしかできなかった…
・・・
そしてまた景色が変わり、魅久雄は
大人になっていた。
魅久雄は今の組長と姿見が近くなっており、
隣には上司らしき人物がいた。
(…魅久雄さんは組長で間違い
なさそうですね。)
今の組長と顔立ちの似てきた魅久雄を見て
折西はそう確信した。
「魅久雄君のおかげでうちの企業が
大盛り上がりだ!部下を育てるのも
会社を育てるのも本当に上手い…
うちの会社に入ってくれて助かるよ!」
上司が魅久雄の背中をバシバシと叩くと
魅久雄は苦笑いをした。
「いえいえ、むしろこんな大企業に私が
居ていいのか…ですがそう言っていただけて
とても嬉しいです、ありがとうございます。」
「なんだ、君は本当に謙虚だなぁ…
もっと胸を張ってくれ!!!
俺の自慢の職員なんだから!」
「…そう言っていただけて光栄です。」
魅久雄が優しく微笑むと上司は少し目を見開く。
「そういえば魅久雄君…顔立ち綺麗だけど
好きな子は居ないのかい??」
「す、好きな子…?」
「おや、てっきり恋人の1人や
2人いるものだと…」
「ふ、2人いるのは不味いのでは…?」
「ははは!!!2人は冗談だよ!!
…意外だ。こんなに礼儀正しくて綺麗な人、
誰もが欲しがると思うんだが…」
上司が魅久雄に1歩近づきスマートフォンの
画面を見せる。
そこには淡い桃色がかった銀髪の優しそうな
女性の写真があった。
「…私の娘なんだが、どうだ???
1度話してみないか?」
ニヤリとしている上司に断ることが
出来ずに魅久雄は話してみたいです、と
言ったのだった…
ーーーーー
魅久雄が連れてこられたのは
人こそ少ないもののアンティークを
彷彿とさせるような洒落た喫茶店だった。
上司はニコニコとしながら「それじゃあ」
と喫茶店から出ていった。
…いつの間にか魅久雄は店長から
案内されたカウンター席に座ると隣には
写真で見た女性が座っていた。
「ごめんなさいね。私の父、
変に世話焼きなところがあって…」
女性が申し訳なさそうに微笑んだ。
「いえ、私は大丈夫です。むしろ貴方が
素敵なお召し物を着ていらっしゃるのに…
自分は日頃からもう少し身だしなみを整えて
おかなくてはいけませんね。」
急に呼ばれたにも関わらず身なりに
気を遣っている女性に申し訳ないと
魅久雄は苦笑いた。
「私は身なりに気を遣う時間があるだけです。
それに、貴方はすごく身なりに気を遣って
いらっしゃる方だと思いますよ。」
2人でぎこちない会話をしていると
店員が注文を聞いてきた。
魅久雄が女性に頼みたいものを聞き、
自分のコーヒーと女性のココアを
一緒に注文した。
「…そういえば貴方のお名前は?
父から何も聞いてなくて…」
「申し遅れました、私は魅久雄です。」
「魅久雄さんですね、私はライと申します。」
よろしくお願いします、とライは頭を下げる。
窓際の席だったからなのか、
それともその時既に恋心を抱いていたのかは
定かでは無いが魅久雄の目に写った
桃色がかった銀色の髪はキラキラと
テーブルに光を散りばめていた。
「よ、よろしくお願いします…」
その後も2人の会話は続き、ぎこちない
会話の歯車も次第に回り始めたのだった…
・・・
景色が変わる。
今度は秋の空の下、公園の広場で
魅久雄が1人でぽつんと立っている。
魅久雄は辺りを不用意に見渡したり
動き回ったり、どこか落ち着かない
様子だった。
そんな魅久雄の所にライがやってくる。
魅久雄は人の少ない木の下にあるベンチの
方を指さしてライを連れていった。
「…魅久雄くん、なんかソワソワしてない?」
ライは疑心暗鬼な表情で魅久雄をじっと見る。
「えっ、あの、その…」
魅久雄は1度目を逸らし、
ライの方を向いて真剣な顔に戻る。
「あの、ライさんが宜しければ…
お、お付き合いが…したくて…」
魅久雄が手に持っていた小箱の中には
ネックレスが入っていた。
「…あら、何かと思えば…」
魅久雄の顔は真っ赤になり
咄嗟に目を強く瞑った。
「…喜んで。」
ライが箱を受け取り、微笑む。
まさかお付き合い出来るとは思っても
いなかったのか魅久雄は目を丸くしていた。
「い、いいの…?本当に…?」
「もちろん!何度もデートOKにしてるのに
逆になんでダメだと思ったの?」
「そ、それは…」
自信を持つ機会がなかったから。
なんて事をこんなに喜ばしいタイミングで
言うのは違うのではと思った魅久雄は
他の理由を探そうとする。
そんな様子を見てライは魅久雄の両手を
包み込むようにして握った。
「もっと自分に自信を持って
いいんだよ、魅久雄くんは。」
レイの目は真剣で、それでいて優しかった。
その言葉に安心した魅久雄はどこか顔が
綻んでいるように見えた。
・・・
先程の秋の綺麗な公園とは相反し、
モノクロの雪景色へと移り変わる。
明かりの着いた小さい建物に折西が
目を向けるとそこには魅久雄と一颯が
建物の中でなにやら口論になっていた。
「ライはそんな人じゃない!!」
魅久雄が息を荒らげていると
一颯はため息をひとつついた。
「だから、何度も言ってるけどライには
嫌な噂か回っているんだ。
兄さんにはもっといい人がいるって!」
「ライは俺を認めてくれた数少ない恋人なんだ、
噂なんて関係ない!」
「目を覚ませ兄さん!!!
それに兄さんを認めることなんて俺でも」
「一颯じゃ埋まらないんだよ!!!
俺の恋愛感情は!!!!!!!」
魅久雄がガタッと椅子から立ち上がると
部屋から勢いよく出ていった。
部屋に残された一颯は両手拳に力を入れる。
「…だったら分かりやすく教えてやるよ。」
不穏な空気が漂う部屋は揺らぎ、
また景色が変わっていった。
・・・
雪の積もった街道をトボトボと魅久雄が
歩いている。
「…ライはそんな人じゃない…違う…違うんだ。」
大切な弟から否定されるなんて思っても
いなかった魅久雄は終始暗い表情をしていた。
「…そういえば明日はライの誕生日だったな。」
魅久雄はカレンダーを確認するために
携帯電話を取ろうとポケットに手を入れる。
しかしポケットには何も入ってなかった。
「…今帰れる状況じゃ無いし、ライに
誕生日プレゼントを買おうかな。」
魅久雄が辺りを見渡すと1つのお店が目に
入る。ショーウィンドウの中には眩い光を
散らしたリングが置かれていた。
値段は…15万だ。
「…プロポーズリングか。」
魅久雄はすぐに店に入り、リングを
買うのだった。
・・・
魅久雄は一颯の家へと向かうことにした。
リングを買って気持ちが落ち着き、
酷いことを言ってしまったのではないかと
思い、一颯に謝ろうと思ったのだ。
「…流石にあの時言いすぎたな。
弟が心配性なのは昔と同じはずなのに。」
リングの入っている紙バックとは別の
紙バックを見る。
そこには一颯に渡す用のお菓子の箱が
入っていた。
「ライより安くなってしまって申し訳ないな…」
魅久雄は思わず苦笑いした。
しかしそんな顔を弟に見せるわけには
いかないと頬をペチンと叩いた。
部屋に入ろうとドアノブに手をかけ、開ける。
「さっきはごめんね。いぶ…」
魅久雄は目を見開く。
ベッドには一颯と隣に桃色がかった銀色の。
「…ライ?」
「魅久雄くん…!?な、なんでここに!?」
「それはこっちのセリフだ!!!
なんで弟の家に君がいるんだ!?」
「兄さんが目を覚ますためだよ。」
「目を覚ますって…」
「アンタ騙したわね!?!?!?」
「…お前みたいな人間に兄さんに渡す
くらいなら兄さんから引き剥がして
やりたかったんだ。」
「お前に会うのに苦労したよ。なんたって
社長の娘だ。上手く入り込めるように
兄の会社の取引先に就職して、
兄より収入を得て来たんだ。」
一颯は気味の悪い薄ら笑いを浮かべる。
「ただ言えるのはお前が『承認欲求の化け物』
で良かったってことかな。
ブログに証拠を残す位には馬鹿で
良かったよ…見てみな。」
一颯が携帯の画面を魅久雄に見せる。
そこには見知らぬ男性との写真や
魅久雄の予定を切った日付に別の男性と
遊んだという内容まであった。
「俺は言いたくなかったんだよ…不用意に
兄さんを傷つけたくなくてさ。
けど、俺を信じてくれない兄さんが悪い。」
「…う…あ…」
「…何吃ってんの、あんたいつもそうだね。
人の事情も知らないで言葉をそのまま
受け取って私と付き合ってさ!」
ライは魅久雄にぐっと近づく。
「あんたみたいな人間、代わりなんて
幾らでもいるのよ。」
その言葉を放ったあと、魅久雄の視界は
ぐにゃりと曲がる。
やっと景色が元通りになったかと思うと
そこには血痕や白い破片のようなもの、
桃色がかった銀色の髪だったものが
散乱しており、その中に一颯と魅久雄は
立ち尽くしていた。
「…!」
魅久雄は一颯も殺そうと刃物を構える。
しかしその刃物は一颯を刺すことはなく
地面にビシャリと落下した。
刃物を落とした時に跳ねた血は
一颯の服の裾につく。
「…処理は俺がする。替えの服渡すから
魅久雄はシャワー入ったらそれを着て帰れ。」
一颯はタンスの引き出しを開け、
袋の中に入った着替えを指さした。
魅久雄は無言でシャワールームまで行き、
ぐちゃぐちゃした思考回路のまま
身体から赤が無くなるまで水を浴び続けた。
魅久雄が服を取りに行く頃には部屋の1部が
綺麗に拭きあげられており、そこを通って
着替えを引き出しから取り、
外へと出たのだった…
・・・
どれくらい時間が経ったのだろうか?
魅久雄は見知らぬ洞窟へといつの間にか
辿り着いていた。
中へ入るとその場に座り込み、
街中で買った水と大量の薬を取り出した。
薬を口の中に含み、一気に水で流し込む。
すると突然、
「フハハハハ!!!!!!!!!
死のうとしているのか美青年!!!!!」
「ブッ!!!!!!!!!!!!!」
石のようなものが魅久雄の背中に突き刺さり、
水も薬も全て吐き出してしまった。
「だっ、誰だ!?」
魅久雄が後ろを振り返るとそこには
青い水晶が浮かんでいた。
…恐らくだがいちばん鋭い所で突っ込んで
来たと思う。
「我はファージだ!代償をお前から貰う代わりに
能力を付随し願いをひとつ叶えられる!」
水晶が紫へと変化し、魅久雄の周りを一周した。
「…契約していいからお願いとして
この薬を元に戻してくれ。」
「それは出来ない願い事だな!
契約した後お前が死んでしまえば
我まで死んでしまう!!」
「それじゃあ遠慮させてもらう。」
魅久雄は立ち上がると水晶は回り込み、
「待て!!!」と引き止めた。
「お前が今後生きる意味を持たないのなら、
我のために生きてみないか…?」
「お前のためにか?」
「厚かましい話にはなるんだが…
契約した後代償とは別に少し任せたいことが
あってだな…」
「…影街にある白い大木は知っているか?」
「昔教科書で見たくらいだ、詳しくは知らん。」
「存在を知っているのか、話が早いな。
…あの大木を殺すのを手伝って欲しい。
あれは世界を破滅へと導く。」
つれない表情の魅久雄を見て慌てて
水晶は話を続ける。
「も、勿論お前の願いも聞こう!!!
…だから頼む。あの木を殺すのは我の
自己満足であり使命でもある。
…しかし我単体だとどうにもならんのだ。」
「…分かった。ただこちらの願いも
聞いてくれないか?」
「死ぬ以外ならなんでも良いぞ!」
「ありがとう。
…俺はこの名前がどうも好きじゃない。
だから名付けてくれないか?」
「成程…それなら『垓(がい)』はどうだ?
数の単位で京の次に大きい。
存在が大きくなるように…という意味合いだ。」
「…それでいい、契約しよう。」
「い、意外とあっさりしてるな…こちらと
しては助かるのだが…」
「そうか?それならこちらも任務を与えよう。
…仲間を探すのを手伝ってくれ。
お前が1人で何も出来ないように、
俺一人では何も出来ん。
代償に出来るものは…概念でもいいのか?」
「…了解した!代償は概念でも構わん!」
「それなら、「努力」を代償に出来ないか?
何も持っていない身なのでな…」
「むしろ強力な代償じゃないか!!!
助かるぞ美青年…じゃなくて垓!!!」
魅久雄…改めて「垓(がい)」は
水晶、「エフォートファージ」に触れ、
辺りが白に包まれたのだった…
・・・
景色が暗転し、折西の目の前には
鍵が3つ現れた。
「…」
折西は黙って鍵を全て取り、
そっと握りしめた。