テラーノベル
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翌朝。
すちは、先に目を覚ます。
熱はほとんど引いたらしく、頭の重さも昨日ほどではない。ゆっくり瞬きをしてから、腕の中の温もりに視線を落とす。
みことは、すちの胸元に顔をうずめるようにして眠っていた。昨夜抱え込んだままのすちの服ごと、ぎゅっと抱きしめて離さない。足まで絡めてきていて、まるで少しでも離れたくないと言っているみたいだった。
(……可愛いなぁ……)
寝息は規則正しく、長いまつ毛が微かに震えるたびに、胸の奥がきゅっと締め付けられる。こうして当たり前のように隣で眠っていることが、どれだけ大切で愛おしいのかを、すちは改めて噛みしめた。
そっと顔を近づけて、小さく囁く。
「……みこと」
返事はない。まだ夢の中だ。
すちは、みことの唇に軽く触れるように、やさしくキスを落とした。ほんの一瞬、体温を伝えるだけのキス。
すると、みことの眉がわずかに動き、ゆっくりと目が開く。
「……ん……」
寝起き特有の、ぽやっとした表情で、ぼんやりとすちを見つめる。
「……すち……?」
「おはよう」
そう微笑んで、もう一度、今度は少しだけ長めに唇を重ねる。みことは驚きつつも、拒むことなく身を預けてきた。
そのまま自然に距離が近づき、キスはゆっくりと深まっていく。互いの呼吸が近くなり、ぬくもりがじんわりと伝わる。
みことは次第に目が覚めてきたものの、すちの甘く包み込むようなキスに、頭の中がふわふわと溶けていく感覚に身を委ねていた。
「……ん…ん…」
小さく声が漏れ、無意識にすちの服の裾をきゅっと掴む。その仕草があまりにも無防備で、胸の奥がくすぐったくなる。
ゆっくりと唇を離すと、みことはまだ少し名残惜しそうに瞬きをしていた。
「……目、覚めた?」
「……うん……ちょっとだけ……」
すちは、まだ少しぼんやりした表情のみことを見つめて、くすっと微笑む。
「……ねぇ、もう一回してもいい?」
甘えるような声色に、みことは一瞬きょとんとし、それからじわじわと頬を赤く染めた。
「……ほ、ほしい……」
小さくそう答えて、恥ずかしそうに視線を伏せながら、そっと唇を寄せてくる。その控えめな仕草が可愛いすぎる。
急がず、確かめるように、ゆっくりと重ねるキス。みことは少し背伸びするように身を寄せ、すちはその腰をやさしく引き寄せる。
頬をなぞるように指先で触れながら、すちはみことの表情を間近で見つめる。みことのまつ毛が小さく揺れて、安心したように力が抜けていくのが伝わってきた。
「……すち……」
小さく名前を呼ばれただけで、胸の奥がじんわり温かくなる。
しばらくして、唇を離すと、みことは顔を真っ赤にしながら、少し息を整えていた。心臓の鼓動が早いのか、胸元に手を当てて、ぽかんとした蕩けたような表情をしている。
その様子があまりにも可愛くて、すちは思わず微笑んでしまう。
「……可愛すぎて、つい」
そう囁いて、みことの額に軽く口づける。
みことはくすぐったそうに目を細めながら、すちの胸にそっと額を預けた。
穏やかな空気の中、二人はそのまま、ゆっくりとした幸せな時間を味わうのだった。
ふとみことは、少し迷うように視線を揺らしたあと、意を決したようにすちの胸に顔を埋めた。
「……昨日、嫌いって言って、ごめんね」
ぎゅっと腕に力を込めて抱きしめる。すちの服に頬を擦り寄せるような仕草は、まるで不安を確かめる子どもみたいだ。
すちはふっと柔らかく笑った。
「大丈夫だよ。みことが心配してくれてたの、ちゃんと分かってるから」
そう言って、みことの背中に腕を回し、包み込むように抱きしめ返す。ゆっくりと手のひらで背中を撫でると、みことの体から少しずつ力が抜けていくのが伝わってきた。
それでも、みことはまだどこか不安そうに眉を下げる。
「……でも、すち、あのとき……一時停止みたいに固まってた…」
思い出したように、ぽつりとこぼす声。自分の言葉が、すちを傷つけたかもしれないという後悔が、滲むように表情に浮かんでいる。
すちは苦笑しながら、みことの髪に頬を寄せた。
「まぁ、正直ちょっとショックは受けたけどね。でもさ、俺のためって分かってたから」
安心させるように、額と額を軽く合わせる。
「……ねぇ、みこと。俺のこと、嫌い?」
冗談めかした声音だけど、ほんの少しだけ、本音が混じっている。
みことはその問いに、ぱちぱちと瞬きをして、視線を泳がせる。どう答えようか迷っているのが丸わかりで、耳までほんのり赤く染まっていく。
やがて、みことはそっとすちの肩に手を添え、背伸びするようにして耳元へ口を近づけた。
「……あ、愛してる、よ?」
小さく、くすぐったそうな声で囁かれる言葉。息がかかって、すちの耳がじんわり熱を持つ。
その瞬間、すちの胸の奥がふわっと温かく満たされて、思わず笑みがこぼれた。
「……それ聞けただけで、全部帳消しだよ」
そう言って、もう一度ぎゅっと抱きしめると、みことは照れくさそうに小さく笑った。
コメント
2件
もうなんか綺麗な(?)カプですわ
もはや美しい(?)