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「到着です」
ゆっくりと安定した速度がだんだんと遅くなり、マンションのエントランスの前で停車する。
「ありがとうございました」
料金を運転手に手渡し、タクシーから降りる。最後に一礼すると、運転手もニコッと笑顔で小さく頭を下げ、そのまま発車していった。
すぐに元貴に「暗証番号教えて」と連絡する。するとすぐに既読が着き、元貴から暗証番号が送られてくる。エントランスで教えてもらった暗証番号を打つと、すぐにエントランスのロックが解除される。俺はそのまま、元貴の住む部屋に向かうため、エレベーターに乗り込んだ。
エレベーターに乗り込むと、途中の階で女性が乗ってくる。まさか、彼女さんじゃないよな?心臓がドクンドクンと音を立てる。しかし、女性は俺の押した階とは別のボタンを押す。一気に身体中に込められた力がふっと抜ける。
ついに、ここまで来てしまった。もう戻ることはできない。今、元貴はどんな風に待っているのかな。何も思ってないか。エレベーターが目的の階で止まる。
「着いちゃった……」
今、俺は元貴の部屋の前。チャイムを押せば元貴が出てくる。
今になってどうしようもない緊張感が、一気に体を支配し始める。チャイムを押さなきゃいけない、でも押してしまえば”本番”が始まる。
ピンポーン
震える指先でなんとかチャイムを押す。するとすぐに玄関が開き、元貴が顔を出す。
「ぁ、元貴」
「寒かったでしょ、早く上がって」
元貴は扉を開けると、スタスタとそのまま部屋の奥へと消えていってしまった。
「…お邪魔しまーす」
玄関に上がると、部屋の中は暖かく、元貴の家特有の落ち着く匂いがした。
「今家にノンアルなくてさー、普通のビールでもいい?」
元貴が冷蔵庫を開けながら、こちら側に振り向く。
膝上ぐらいのパンツに、若干ダボッとしたロンTという、なんともラフな格好。それなのに一般人ではないオーラを纏った元貴は、オフな彼ではなく、完全に世間の知る大森元貴だった。
「…あ、俺なんも買ってきてないわ、ごめん!」
ふと自分が手ぶらで訪問していることに気づき、なにか手伝おうと元貴のいる台所の方へと足を運ぶも、
「いいのいいの、久々に飲めるのもそうだけど、うちの家来んのも久々でしょ?」
「おもてなしさせてよ」
と元貴からストップをくらってしまう。
確かに、バンドとしての活動休止後から、一気に忙しさは上昇し、今ではなかなかプライベートでの外出は難しくなった。それと共に、お互いの家に遊びに行くことも滅多になくなり、こうして元貴の家に行くのは、なんだかんだ言って半年ぶりだったりするのかもしれない。
「……確かに、元貴の家来るの、久々だね」
ソファの足元に座り、辺りをぐるっと見回す。暗めの色で統一された部屋に、丁寧に育てられているのであろう観葉植物。テレビ台の隣には、元貴が普段使いしているアコギがスタンドに飾られていた。
「今度は若井の家にも行かせてよ、涼ちゃんも誘ってゲームとかする?」
元貴がそんなことを口にしながら、台所から綺麗に盛り付けられた、お店で見るようなおつまみを持ってきては、テーブルに置く。
「てか、ソファ座ればいいじゃん」
「いや!!ソファより…こっちの方が好きだから……!」
なにそれ、と元貴は笑いながら、再び台所へと戻っていく。
テーブルに置かれた青い皿の上には、サーモンとモッツァレラチーズのカルパッチョが盛り付けられており、オリーブオイルの美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。
「……これ元貴が作ったの?」
「うん、上手いしょ?」
「すげー上手……お店で見るやつ」
味にはもっと期待しといて、と元貴の上機嫌な声が届く。
今のところ、いい感じなのでは?特に気まづい雰囲気もなく、普通に「遊びに来た」って感じ。そこにお酒もはいれば、元貴の心の内も聞けるんじゃないか……?
「……氷何個ー?」
カランというコップの音と共に、元貴が台所から顔を出す。
「んー…3個ぐらい?」
はーい、と元貴が返事をすると、氷のカシャッという音がし、そしてすぐに缶ビールを開ける音がする。
「なんかワクワクしてきた」
「……なんで?」
「だって久しぶりに飲むじゃん?」
「結構前にライブの打ち上げでちょびっと飲んだ以来じゃない?」
元貴はそんな俺の話に、「確かにねー」と軽く返し、ビールの入ったグラスを持ち、こちらにやってくる。
「はい、ビール」
「ありがと!」
元貴は俺の正面に座るなり、あの日みたいにグラスをこちらに出そうとしてくるも、俺はそれを遮るように自身のグラスを突き出す。
「……乾杯、でしょ?」
予想外の行動だったのか、元貴は一瞬呆気にとられた表情をしたものの、すぐにニコッと笑い、
「…うん」
と、自身のグラスを小さく前に出す。
「「乾杯!」」
2人の声が重なるのとともに、グラス同士が小さくぶつかり、カランッと音を立てた。
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お久しぶりです!!最近は忙しい日々を送ってまして、なかなか連載できていませんでした(-_-;)そろそろ夏休みも始まりますし、たくさん連載できるようにしたいです🩷
あとあと!長編作品もちょこちょこ頑張って筆を進めてます꒰՞ɞ̴̶̷̥⩊ɞ̴̶̷̥꒱֯💟もうお話の構成はほぼ完璧なんですけど、なかなか思うように言葉が繋がらないんですよね…😿😿とにかく頑張ります!
それではまた次のお話で^^
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コメント
5件
見るの遅れました…、若さん受けというだけで神なのに、小説も神すぎて、すごいです…どうなっちゃうんだろう。
うわあ、ついに元貴の部屋に行っちゃった……!エレベーターでドキドキしてる主人公の心情、すごく伝わってきた。でも「おもてなしさせてよ」って言う元貴が優しすぎるし、乾杯のシーン、自然にグラス出した主人公に元貴が一瞬驚いてから笑うとこ、めっちゃ良かった。この2人の空気感、そっと見守りたくなる……!🌙🤍