曇り空が広がるある午後、高校の中庭は静かでどこか薄暗い雰囲気に包まれていた。泡羽 澄麗はその中庭の隅で静かに佇みながら、何かを見つめていた。彼女の瞳には曇り空の奥に潜む小さな光を探すような輝きがあり、その姿はどこか謎めいていた。
ふいに冷たい雨粒が頬をかすめる。澄麗は顔を上げ、まるでその雨が自然のメッセージであるかのように感じた。雨が好きでも嫌いでもない彼女にとって、それはただ一つの現象にすぎないはずだったが、この雨にはなぜか特別な意味がありそうだった。
そのとき、傘を持った北条 誠がふらりと現れる。「珍しい天気だね。」誠の声は低く、どこか冷静だが優しさも感じさせる。澄麗は彼を一瞥しながら、言葉を返すことなく雨の音を聞き続けた。
誠は澄麗のそばに傘を差し出しながら、雨の中でただ静かに佇む彼女に興味を抱いた。「狐の嫁入りって、知ってる?」彼の言葉に澄麗の表情がわずかに動き、彼の顔をじっと見つめた。
しかし、その日はそれ以上の言葉を交わすことはなく、雨音だけが二人の間に響き渡る。そして、澄麗は誠が「雨男」であることも知らず、誠もまた澄麗が「晴れ女」であることに気づかないまま、一つの運命が始まろうとしていた。
澄麗は静かに本を閉じ、微かに雨音が響く中で誠を一瞥した。「ついてきて。」と短い言葉を残し、彼女は立ち上がった。その言葉には迷いがなく、誠はその不思議な空気に引き寄せられるように彼女の後を追った。
二人が階段を上るにつれ、雨は少しずつ強まっていった。澄麗の足取りは確かで、その背中には何か隠された秘密があるように見えた。屋上に着いた瞬間、澄麗は立ち止まり、曇った空を見上げた。そして、髪につけていた黄色いビー玉のような髪飾りを外すと、それをそっと両手で包み込み、目を閉じて静かに手を合わせた。
その瞬間、雲が割れ、空は明るさを取り戻していく。晴れ間が広がり、雨は消え去り、濡れた地面が光り始めた。誠は信じられない思いでその光景を見つめた。澄麗が何かを起こしたことに気づきながらも、その力の源を理解できずにいた。
澄麗は無言で髪飾りをもとに戻し、誠の方を向いた。その表情は冷静で、まるでその奇跡的な出来事は自然の一部に過ぎないかのようだった。「あなた、新聞部でしょ。」彼女は淡々と語り、「これを記事にしたかったら書けば。私は泡羽澄麗。晴れ女。」と言い放った。
その言葉は誠の心に深く響き、彼は彼女がただの高校生ではないことを痛感した。そして、二人の物語は静かに動き始めた。
つづく
コメント
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めんどくさいぃぃぃぃぃぃぃ!でも頑張る!
おー、新作だ‼️ 通知に来なかった💦💦 晴れ女と雨男が題材なのめっちゃ良いね👍️ 他の作品の完結目指しつつ、頑張れ🔥