…私は大きく1つ深呼吸してから玄関の鍵を開けて家に入る。
平凡だった私はこのドアを通った瞬間に変わらなければならない。
ここでの私は聞き分けのいい子。
仮に文句があっても本音をいうことは許されない。
そう自分自身に言い聞かせ、ありきたりな生徒の仮面を剥ぎ取る。
『平凡』と言う言葉は可もなく不可もなく…
そんな言葉でよくもないけど悪くもない
でも、どちらかと言えば『良くない方』で捉えられることが多い気がするけれど
玄関という屋外と屋内を隔てる扉、
本来であれば外でつけていた仮面を安心して脱ぎ捨て素顔でやりたい放題出来る扉。
『私』からすれば、家にいる時が1番安心するというような平凡な家庭に憧れる。
…厳格な父に過保護な母。
そんな環境で育った私にはこの仮面が必要だった。
今の私に求められるのは両親が求める姿でいること。
『いつも任せてごめんね…』
そんな声がどこからか聞こえた気がした。
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