テラーノベル
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───────────────ガチャッ!!
扉が壊れるのではないか、と思ってしまうほど凄い勢いで扉を開け、こちらに走ってくるのはここに来てから出会った『バケモノ』
…メメだ
「iemonさんっ!!」
彼女は俺の名を叫びながら突然俺のことを床に押し倒してくる。
彼女の暖かい腕が俺の体に触れる。その時、不意に思う。食べたい、と
…俺は…何を考えているんだ…!?
『ニンゲン』が『バケモノ』を食うなんて…いや…でも…さっき俺はあんな姿で….
じゃあ俺が…いや…そんなわけ…!
そんなことを考えている時、急に彼女が俺の口の中にその手を…腕をねじ込んでくる
「ゲホッ…..何を….してっ…!!」
そんなことをされると、余計に食欲が抑えられなくなる。だんだん口から涎が溢れ出てくる。
…でもダメだ…ここで俺が…この口を閉じてしまったら…彼女の腕を噛みちぎってしまえば…俺は…
「落ち着いてください!!」
俺の口の中に腕を突っ込みながらメメが叫ぶ。大体、メメはなんで俺の口の中に腕を突っ込んでいるのだろう
…それに…落ち着け…だって?
そんなこと、言われなくてもやれるなら….でも…食べたい….食べ…たい…っ!!
自分を落ち着かせようとするが、だんだんその欲が俺の思考を乗っ取ってくる
「食べ…….たい…..」
そう、口にしてしまう。だんだん体が震え始め、自分のことが抑えられなくなる。俺が、俺じゃなくなる….
「…..っ!!」
その瞬間、俺は思いっきり口を閉じる。もう抑えることなんてできない、その欲が爆発する。
…でも、何故だろう。人を噛めば、必ずしも出てくるものが出てこない。いつまでたっても口の中にはその血の味が広がらない。
…イラついて、何度も何度も噛み付く。…でも何度やっても彼女の腕は鋼のように、俺の牙を通してはくれなかった。
「なん….で….?」
思わず、そう呟く。そうしている間にもどんどん腹は空いていって、爪で引き裂こうと、その腕を、彼女に伸ばそうとする。
…しかし、そこでふと気づく。俺の腕が壁に固定されているのだ、とても分厚くて、頑丈なベルトのようなもので。
「ドーピング剤のようなものを事前に打っておいたんです 」
そう、彼女は俺に言う。…ドーピング剤?ああ、だからこんなに噛み付いても腕が噛みちぎれないのか。
…でも、何故俺に会う前に、そんなピンポイントなことが出来る?このベルトも、事前に準備しておかないと、できないような事だ。
ここの位置に俺を誘導して、この罠にはめたとして、そもそも俺がこの部屋に来ると知っていないとできない事だ。
…何故だ…?…俺は…腹を…満たしたいだけなのに…こんなに邪魔をされて…
俺は…食べたいんだ…もっともっとたくさん…!!
「少しだけ…話を…聞いて貰えますか?」
俺に腕を噛みつかれながらも彼女は言う。
さっきからこの腕を引き抜こうとしているのに、なかなかそうさえてくれない…
そして、爪も使えないし…いつの間にか足まで固定されている
…どっちみち、何も出来ないなら、話を勝手に話させておいて、その間に何度も噛んでいよう。そしたらいずれ薬を使っていようがなんだろうが、噛み砕ける
「別に….いいけど..ッ..」
抑えきれないほどの食欲に体を震わせながらもそう答える
「ありがとう…ございます…」
「少し長くなりますけど…我慢してくださいね」
そう言いながら、彼女は話し始める。
その、彼女が見た景色のことを。その、記憶のことを
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──────3年前
それは、ある日突然起こりました。
私たちの住んでいた町の隣の町で、原因不明、謎の病気が流行りました。
その病気の内容は、人が突然バケモノのような見た目になり、人を食べ始めるというもの。
意思疎通も不可能、当然言葉も通じませんでした。
その病気の感染力も凄まじく、感染してしまった人の半径500m以内に数時間いるだけで、その範囲にいた人たちも感染してしまう。
そんな病気、誰にも止められなかった。そのバケモノ達…病気から逃げるためにこちらの町に来た人達から、こちらの町にも病気が蔓延しました。
…それから数ヶ月もしないうちに、私たちの周りでもその病気に体を侵される人々が現れ始めました。
その病気から逃げるため、私たちは住む場所を転々とし、日々怯えながら生活していました。
…その中には、あなた。iemonさんも入っていました。他にも、あなたと一緒に旅をしていたメテヲさん。…私を含め、計15人前後でそんな日々を送っていました。
…でもある時、その中の一人がついに、バケモノに…なってしまったんです。
…そこからは、まるでドミノ倒しのように…みんな、バタバタと倒れて…どんどんバケモノになっていってしまいました。
そして…途中からその仲間を食べ始める人…いえ、もうバケモノになってしまっていましたが…
…要するに、共食いのようなことをし始めてしまったのです。
そこからは、地獄のような日々でした。今共に暮らしている仲間さえも信用出来なくなり、みんな、散り散りになっていきました。
…まだ、散り散りになったもの達は良かった方なのかもしれません。バケモノになってしまった方や、そのバケモノに食われてしまった方…本当に…救いようのない死に方をしてしまった方もいました。
私は…運良く生き残り、遠くの地へ命からがら逃げ延びました。
…私はそこで、共に過ごしていたみなさんを元に戻すため、研究を始めることにしました。
…まず、研究し始めたのは言語です。よく観察しているとバケモノも、人のようにコミニケーションをとっていることが分かりました。
…そこで少しずつバケモノに話しかけては、攻撃されそうになったら、すぐに逃げるということを繰り返し、バケモノの言葉を少しずつ覚えていきました。
そんなこんなで、バケモノの研究を続けていると、とあることが分かりました。
あなたたちバケモノは、バケモノと人が、逆に見えているということです。
…ここまで言えば…….分かりますよね…
…あなたは、あなたたちは、3年前のあの日から、ずっとバケモノとして…人を食って生きてきたんです。
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「そして…大切なのは…ここからです」
そう、彼女はまた話し始める。その頃には既に薬の効果は薄くなってきていて、腕からは少量の血が垂れていた。
「私は…別の世界線の…未来から来ました」
「詳しくは…あなた、iemonさんがバケモノとして、メテヲさんを…」
そこから先を、俺は聞きたくなった。
…というか、その前の言葉も、正直言って意味がわからない。
「そこからは…言わなくていい…」
聞かなくても、その先の言葉は大体予想ができる。今の俺の状態であれば。
…最早、気持ちが複雑すぎてか、信じられないことを言われてか、彼女の腕に噛み付く俺の牙は、その動きを辞めていた。
「…そうですか」
彼女はそう言うと、また深く息を吸う
「私は…そんなiemonさんを…見ていられませんでした」
「だから…そこから数年をかけて、過去に戻る薬を作ったんです」
「…まあ、戻ると言っても、その元の世界線の記憶を持った状態で、この世界線の私に乗り移るような感じですがね」
「そんな感じで、今日の、あの時に戻り、iemonさんを止めようと思ったんです」
「…せめて、この世界線のiemonさんだけでも…普通に暮らして欲しかったんです」
そう、彼女は少し悲しそうな目をして言う。俺は…きっと今彼女がいなかったら…またどの世界線だろうと同じことをしていただろう。
気づけば全身から力が抜けていて、食欲もだんだん薄くなっていっていた。
「…だから…iemonさん…」
「これからも一緒に…暮らして貰えませんか?」
そう、彼女はまっすぐな目で俺を見つめながら言ってくる。
きっとそこに、悪意なんてものは欠片も存在しないのだろう。
「あなたは…私の元いた世界線で…泣いていました。」
「…私は…iemonさんが暴走しかけたら、こうやって少しは止めることができます」
「iemonさんも…自分が抑えられなくなるの、嫌…なんですよね」
「私と一緒に過ごしてもらえれば、絶対に人なんて食わせません」
「私は…少しでもあの時の仲間を…取り戻したいんです」
「…そして、最終的には…全員…バケモノになってしまった全ての人を…助けたいんです」
…一緒に暮らそうという誘い、俺に断る理由なんてひとつも無かった
だって…俺は、何度も彼女に助けられたし、なんなら今だって…俺のためだけじゃないのは分かってるけど、わざわざ別の世界線から助けに来てくれているぐらいだ。
…少しだけ、覚えている。…というか、鏡を見た時思い出した。俺が、俺たちが人間だった頃の記憶。
俺も、あの日々を取り戻したい。…だから…
「…もちろん」
…と、そう答える。その返答を聞いた彼女はとても優しく、嬉しそうに笑った
なんだか…俺も少し嬉しくなった。
「では…メテヲさんにも了承を得てきますかね〜」
そう言いながら彼女は部屋を後にしようとする。
…きっと、これから先も、決して楽な道のりではないのだろう。けれど、あの日々を取り戻すためなら…俺は何だってやろう
…そんなことを、またみんなで焼肉したいな、なんてどうでもいいことを考えながら思った。
まだ、完全に思考がまとまった訳じゃない。だって急にあなた達がバケモノで、メメは俺があのまま暴れてしまった世界線から来ていて…なんて、一瞬で理解出来るわけないのだ。
…それに、多分メメのあの腕、ドーピング剤に加えて、食欲を抑える薬でも打っていたんだろう
本気で俺を止めようとしてくれていたのが伺える。
…そんな、頭が良くて、とても優しくて、これから一緒に暮らしていく彼女に俺は言う。
思い出したての、へにゃへにゃな人語で
「よろしく…メメ」
コメント
11件
がだんるなくなが力彙語がて全
うぇ〜い見事にハピエン引いたぜ〜〜!これから大変だろうな〜暴走しないようにずっと注意するから Aも見てくるわ〜〜
わぁあああぁあああああああ…!!!!!!!!!!!!(再放送) やっぱりメテヲbadめめhappyよな…!! メテヲの最後までiemonを大事にしてる感じほんとに、ほんとに…!!! 神作品をありがとう…!!