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「…私は、ただ友達を助けたかっただけ。あなたはついでに助かっただけ」
雪乃の突き放すような言葉にシュンとする男子生徒。
チーノとショッピもその空気に何も言えなくなる。
「でも、あなたが助けを求めたその勇気を、私は見てたから。差し伸べられた手を、私は無視したりしない」
『助けて』と伸ばした手を、私は掴んだだけ。
「あなたの“これから”に、幸がありますように」
にこりと微笑む雪乃に、パァッと顔を明るくした男子生徒は「ありがとうございます!」と深く一礼し、嬉しそうに去っていった。
「…ゆっきーも大概、ツンデレやな」
「は?どこがやねん」
「そうやって使い慣れへん関西弁使って照れ隠ししとるとことか」
「だーから照れてないっつの」
「ツンデレっていうか人たらしちゃう?この人」
「ショッピくんまで、人聞きの悪い…。私そんな変な事したかね」
「いや、褒めてるんやけど」
無表情で言われると本当なのか嘘なのか分かりづらい。
「そうそう。ショッピの言う通り。ゆっきーのそういうとこ、ええと思うよ」
チーノはそう言って笑う。
煽られてる?と思いながらも「ありがとう」と一応言っておく。
「まぁ彼の虐めの件も風紀や先生方で対応済みだし、もう大丈夫なんじゃないかな」
「せやな。あ、そういえば、今日呼んだんはもう一つ理由があって」
そこまで言ったチーノの背後から、二、三人の影が現れた。
雪乃は「げっ」と声を漏らす。
「よぉチビ、こんな所で談笑しながら食事たぁ、随分余裕そうだなぁ」
それは紛れもない兄、春翔の姿だった。春翔の後ろには鬱先生とシャオロンも見えた。
「な、なんでこんな所に…」
雪乃はハッとチーノを見た。そっぽを向いてわざとらしく口笛を吹いている。
こいつ、情報リークしやがったな。
「ありがとよチーノ。いい後輩を持ったぜ俺は」
「お褒めに頂き光栄です草凪先輩」
「何で鬱先生とシャオさんもおるんすか」
「てへ☆草凪が学食行くって言うから付いてきちゃった☆」
「同じく」
鬱先生がウインクして舌をペロッと出しながら言った。
「きしょ」とショッピがボソリと呟いた。
「こないだゆっくり喋れへんかったからな。良かったなゆっきー、お兄ちゃんと会えて」
シャオロンがチーノの隣に座りながら雪乃に意味ありげに微笑む。
どっちかというと今一番会いたくない人物なのだが。
「まぁまぁ、兄妹仲良くご飯食べたらええやん」
鬱先生が雪乃の左隣、ショッピの前の席に座りながら手を合わせる。
「ゆっくり飯なんか食えると思うなよ」
雪乃の右隣に座った春翔の脅すような言葉に、雪乃はチーノを睨んだ。
「お前なんか友達じゃねぇ…」
雪乃の悲痛な声に、チーノは楽しそうにケラケラと笑った。