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ライトに照らされた廊下は、先ほどよりも暗く感じた。
まるで病院そのものが、2人を“地下へ行け”と誘っているように。
ミチルは震える手でスマホを握りしめていた。
「……ねぇハルカ、さっきの……見間違いじゃないよね……?」
ハルカは首を横に振る。
涙を堪えているのが分かる。
「だって……あれ、ミチルの顔だったもん……
それに私と同じ顔の子も……」
「そんなの、ありえないよ……!
誰かがドッキリ仕掛けてるとか……?」
そう言いながらも、ミチルの声は心細い。
2人の“そっくりな少女”が同時に現れるなんて、
どう考えても普通じゃない。
その時。
ミチルのスマホが勝手に振動した。
「うわっ!?なに!?」
画面には、ありえない通知が表示されていた。
『新しい動画がアップロードされました:地下へ来て』
ハルカは青ざめる。
「ちょ、ちょっと待って!?
私たちアップロードなんてしてないよね!?」
「してない!!
配信以外の動画なんて撮ってもない!!」
ミチルが震える指で通知を開く。
そこにはまた、見覚えのあるサムネイルがあった。
――自分たち、ミチルとハルカの顔だ。
しかも、涙を流しながら
「来て」
と口パクしている。
ハルカはミチルの腕を掴んだ。
「や、やだ……これほんとにヤバいよミチル……帰ろうよ……!」
ミチルも限界ぎりぎりだったが、
それでも目をそらせなかった。
なぜなら――
サムネイルの自分たちの後ろに映っていたのが、
さっきの幽霊たちではなく、
“見知らぬ少女”だったからだ。
髪が長く、制服姿。
でも、顔はぼやけていてよく見えない。
なのに、声だけはハッキリ聞こえてくるような気がした。
――“見つけて”
ミチルは唇を噛む。
「……行くしか、ないかも」
「行くの!?なんで!?」
「だって……動画に写ってた“私たち”……
あれ、本物の私たちなのかもしれない」
ハルカは震えながら否定する。
「そんなわけ……そんなわけないよ……!」
でも、どれだけ否定しても、
胸の奥がざわつき続ける。
もし、未来の自分たちだとしたら?
もし、本当に助けを求めているとしたら?
そして――
また勝手に動画が再生された。
まるで“止めるな”と命じるように。
画面には地下へ続く階段。
その奥から、白い手が出てきて階段を叩いていた。
コン……ッ、コン……ッ
ハルカは叫んだ。
「ミチル!あれ絶対やばいって!!」
ミチルは怖さを押し殺し、
自分の胸に手を当てた。
「……でも、このまま逃げても
また別の怪しい動画がアップされるかもしれない。
もう巻き込まれてるんだよ、私たち……」
ハルカは涙がこぼれた。
「ミチル……私、怖いよ……
でも……ミチルが行くなら、行く……」
その言葉に、ミチルは思わず笑った。
「ハルカ……
ほんと、ずっと一緒だね……」
握り合う手が震えている。
2人はゆっくり、地下への階段の前へと近づいた。
その時――
照らしたライトの光の中に、何かが浮かび上がる。
落書きのような文字。
赤黒く乾いたような色。
そこにはこう書かれていた。
『私を見つけて
そうしないと、君たちは消える』
ミチルもハルカも、喉を詰まらせる。
「み、ミチル……これ本物の……デスゲームとかじゃ……?」
ミチルは唾を飲み込みながら言った。
「……行こう。
私たちの“影”が何者なのか……
そして、“私を見つけて”って誰の声なのか……
全部確かめなきゃ……!」
2人は、互いに手を強く握りしめ、
その一歩を踏み出した。
――ギィ……ッ
古びた階段が鳴る。
光の届かない地下へ。
そして、暗闇の奥から聞こえてきた。
――“ミチル……ハルカ……”
――“こっちだよぉ……”
それは、
2人と同じ声だった。