「こんな関係、もうやめよう。」夜の闇に吸われそうな程の光の朧月が顔を出す静かな夜に私は云った。「どういうことだよ。」中也が少し怒ったような声で云う。中也と私は身体のつながりだけの関係、所謂セフレだ。今夜も私の我儘で事を為していた。「其の儘の意味だよ。もう、こんな事をする必要は私達にはない。中也だって判っているだろう?あの頃の私はもう居ないんだ。全てを諦めた私にどうしてそこまで執着するんだい?」私は突き放すように冷たく云い、片付けを始めた。中也は少し悲しい顔をして口を開いた。「手前を壊したのは俺だからさ。俺の我儘のせいで手前は壊れた。違うか?」私がすべてを諦めたのは私の心が脆いせいだ。だから中也に何も非はない。そう思い私は云った。「中也の所為じゃあないよ。中也は私を救おうとしてくれたんだから。彼の死や其の悲しみから。」中也に伝えたことで改めて自分の心の弱さに思わず泣きそうになり、私は中也から目を逸らした。中也は泣きそうな声で「織田の残した言葉を⋯俺は⋯」と云い、それきり口を開かなかった。私の所為で中也をこんなにも縛り付けて、責めさせてしまい、私は本当に申し訳なくなってしまった。私はもう中也を縛り付けないように、この関係を断ち切るべきだと思っていった。「もう、こんな関係やめよう。次の約束は、もう⋯」中也と一緒にいたいという思いで私は言葉が続かなかった。何処かで中也がまだ私と一緒にいたいと云ってくれることを期待していた。しかし中也は「嗚呼、判った。お互いに⋯忘れよう。」と云った。私は中也をずっと縛り付けてしまっていて、彼の心に私はもういないのだと悟った。其れから私達はお互いに連絡も取らず、私は織田作と中也という二人の支えを失い、私の心は完全に壊れた。もう、この世に希望を感じれなくなり、死のうと決心した。そして私は入水自殺をした。最期に未練を残したまま。
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