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俺は、とりあえず先輩が言ったことが本当なのかどうか確かめる為に図書館へ向かった。
3年前の8月20日〇〇ビルの前で起こった出来事の記事を探すために色んな種類の新聞を借りて机に広げる。
そしてある記事を見つけたところで新聞を捲る手が止まった。
それはビルの前で信号待ちしていた人の列に車が突っ込み、死者1人と重軽傷数人が出たという痛ましい事故の記事だった。
亡くなった人は22歳の男子大学生で、大学名も氏名も掲載されていた。
それらをメモすると他にもないかと数日分の新聞記事を確認したがそれらしいものはなかった。
もしかするとこの亡くなった人が先輩の言った先生···?それも新聞記事に書いてあった大学が有名な音楽大学だったことからピアノの先生だったんじゃないだろうか、と俺は思った。
そのまま図書館にあるパソコンで俺はその記事を検索し色々と調べてみる。大体は新聞記事と同じだったがネットでは自宅住所らしきものや、その大学生の顔写真なんかも少し検索していくと見ることが出来た。
どこまで信憑性があるかは不明だが、その住所がそう遠くなかった為、俺は明日行ってみることにした。
夏休みで時間があったし、なにより行動していないと気が済まなかった。
翌日、朝から俺はまず例のビルの前に行ってそこで手を合わせた。
3年前に何が起こったかなんて、そこにはもう何も残ってなくて。
そのくらい他人にとっての3年はあっと言う間のことなのだろう。
けど、涼ちゃん先輩は今でも3年前のまま、ずっと忘れられないでいる。
そう思うと俺は心臓がぎゅっと痛くなった。
電車に乗り、住所の場所を地図アプリで調べながら歩くとそこは普通の住宅地といったところだった。
8月の太陽に照らされて午前中だというのに暑さに汗が流れる。
苗字はわかっていても一軒一軒見て回るわけにも行かず、近くにあった公園のベンチに座り少し休憩しようとすると道の端、丁度日陰になっているところで自分の母親くらいの女性たちが3人でお喋りしていた。
一か八か、少し聞いてみようと近寄る。俺はまぁ普通の高校生だし、そう怪しまれることはないだろう。
「すみません、3年前に〇〇ビルの交通事故にあった大学生の方の家って···ここらへんだと思うんですが、ご存知ですか?」
一斉にこちらを見られて動揺してしまう。1人がどうしたそんなことを調べているんですか?と俺を睨むようにして見る。後の2人は顔を伏せて困っているようだった。
「その方ってピアノの先生されてませんでしたか?俺、その生徒だった藤澤くんの友達で···事故の事聞いて···」
嘘はついていない。
俺のことを睨んでいた女性の表情がさっと変わった。
「そのお友達のお名前はなんて···?」
「藤澤、涼架です。今、高校生3年で、ピアノが上手な···」
その女性は手で顔を押さえて、ぽつりと呟いた。その声は少し震えていて、その人の言葉で俺は、探していた人のもとにたどりついたことを確信した。
「涼架くん、元気にしてる···?その事故にあった大学生はね、うちの子なの 」