国会議事堂で私達を出迎えてくれた美月さんと日本政府首脳陣。それに周りを見ると凄い数の報道陣が集まって、議事堂前には数えるのも嫌になるくらいの人が集まっていた。
これはゆっくりお話が出来るような雰囲気じゃないね。美月さんとはまた時間を作ってもらってお話をした方が良さそうだ。
「こうしてあなた方をお迎えすることが出来て嬉しく思います」
美月さんが笑顔のまま右手を差し出してきた。ハリソンさんともやったけど、ここで握手するのが友好のアピールになる。
でも、ここで私は個人的な意思でちょっとしたアクションを起こすことにした。もちろん今回は事前にばっちゃんと相談した。
ばっちゃん曰く少なくとも私にとって悪いことにはならないらしい。それなら大丈夫かな。
美月さんの手を取らず、足に力を入れて、少しだけ翼を羽ばたかせて身体を浮かせて……ちょっとだけ勢いをつけて、美月さんに飛び付いた。
美月さんは驚きながらも私を優しく抱き留めてくれた。
「「「おおおーーっ!??」」」
私の行動にどよめきが起きて、ものすごい勢いでフラッシュがたかれてる。
チラリと見ると、フェルもビックリしたのか目を開いて二対の羽根が広がってる。ばっちゃんだけは上機嫌に笑ってるし、翼をパタパタさせてる。
私の行動を地球側がどう受け取るか分からないけど、好意的に受け取る人も居れば反発する人もいるだろうなぁ。
そんなことを考えながらゆっくりと美月さんから離れる。
「ティナちゃん、どうしたの?」
美月さんは笑顔のままだ。ビックリしたことを感じさせない。ハリソンさんもそうだけど、国を率いる重責を背負ってる人は腰が据わってると言うか……。
「久しぶりに美月さんと会えたから嬉しくて」
「あらそうなの?私もティナちゃんとまた会えて嬉しいわ」
微笑み合う私達を見て再び大歓声が起きて、メディアの皆さんも騒がしい。ゆっくりお話が出きる雰囲気じゃないけど、このアクションで日本への好感度を表明できれば良いんだけど。
「このままティナちゃんとお話をしていたいけれど、いつまでも皆さんを待たせるわけにはいかないわ。さっ、中へ入りましょう。パーティーとは言わないけれど、歓迎させてちょうだい」
「はいっ!」
私達は国会議事堂の中へと案内された。前世でニュースなんかでよく見ていた景色が広がり軽い感動を覚えた。
いやぁ、まさかこんな場所を自分が歩くことになるなんて、人生何が起きるか分からないね。二度目だけどさ。
そして通された場所はまさかの国会の場で、たくさんの議員の皆さんが拍手で出迎えてくれてビックリした。まさかの議員さん勢揃い……いや、違う。空席がちらほらある。体調でも悪いのかな?
『ティナを国賓扱いにすることに反対する政党所属の議員ならびに個人的な信条から反対した議員が欠席しています』
やっぱり日本にも居るよねぇ、ある意味安心したよ。ちなみに合衆国では議会に呼ばれたことはない。アリア曰く賛成派と反対派の対立が凄いんだとか。
まあ異星人だしね。私に対する疑問を持つのは個人の自由だし、皆に賛成されるなんて考えていない。
でもできれば、アード人やリーフ人が気にすること無く観光できるようにしたいかな。頑張らないと。
私達は壇上で皆さんに自己紹介をして、私が代表してちょっとした質疑応答の時間を取ることにした。美月さんからの要望だし、政治家の皆さんに私の気持ちを伝えるのは大切なことだ。こんな機会を作ってくれたのは素直に嬉しい。
さて先ずは。
「改めまして惑星アードからやってきました、ティナです!こんなに素敵な歓迎を受けてとっても嬉しいです!日本の皆さんと仲良くしていけたらなって思っています!よろしくお願いします!」
うーん、ちょっと幼すぎるかなぁ?まあいいや、気持ちが伝われば良いし。
「では早速質問ですが、ティナさんは地球の食べ物が大好きだとお聞きしましたが本当ですか?」
女性議員さんの質問だ。
「はい、大好きですよ!現に合衆国から頂いた食べ物はアードでも大好評なんですよ!」
ここで私はアードの食料事情を簡単に説明しておいた。基本的には無味無臭の栄養スティックが主食だと伝えると、皆さんなんとも言えない顔をした。まあそりゃそうだろうね。
日本人は人一倍食事の味にこだわる民族だって聞いたことがあるし、それはあながち間違いじゃないと思う。
こんな感じで簡単な質疑応答が続いた。緊張してるけど皆さんが好意的なリアクションをしてくれたし、少しはリラックス出来たかな。
そして最後に気の強そうな女性議員さんが立った。所属政党なんかは正直分からないけど、なんだろう。敵意を感じる。側に居てくれるフェルが明らかに警戒してる。
嫌な予感がする。
「では、ティナさんに質問させていただきます」
「はい、どうぞ!」
私は努めて笑顔で返した。思い違いだと良かったんだけど……。
「ティナさんは交流するために来たと言いましたね?ならばなぜ戦艦でやって来るのですか!?何故戦闘機を持ち込むんですか!?侵略の意図があるからでしょう!」
「……はい?」
あんまりな質問に私は固まってしまい、周りの議員さん達もざわめいてる。でも、質問者さんは止まらない。
「平和な国である我が国に武器を持ち込む時点で、平和的な交流をするつもりはないんでしょう!?平和的にとの言葉を信じるなら、武器や軍艦は要りませんよね!?
それに、さっきだっていきなり首相に抱き付いて!何を企んでいるのですか!」
侵略者扱い!?しかも美月さんとの友好アピールもそう言う風に見ちゃうの!?
ええっ、どうしよう。センチネルのことを伝えるわけにはいかないし……。
私が戸惑っていると、代わりにばっちゃんが壇上へ上がってきた。
その目はキラキラと、滅茶苦茶生き生きとしていた。
同時刻、新日本国際空港に一人の漢が降り立った。彼は父祖の故郷の空気を胸一杯に吸い込み、周囲から浴びせられる奇異の視線を気にすることもなく胸を張り堂々と歩みを始める。
「我が父祖の母国よ、私を受け入れてくれたことに感謝を捧げる。この体に流れる血に反するような行いはしないと誓おう」
異星人対策室の職員であるジャッキー=ニシムラ(バニースーツ)は、ティナ達に遅れて日本上陸を果たした。
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