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多分もう、居ないけど。
そう僕が言ったら琴は固まった
春の風が吹いた
僕が言わないようにしていた言葉を
吐き出すように背中に風が直撃したんだ
柔い風だったのに、後押しされた
倒れるほど苦しかったんだ
吐き出したことで体が軽くなった
言いたくないけど言わざるを得なかった
さっきまで言うことを恐れていた自分は
脱皮した後の皮のように床に転がっている
琴は固まって絶望したような顔をしていた
魚みたいに口をパクパク動かして
なにか伝えようとしているけど、
まだ言葉は見つからない様子
僕自身も何も言えずだった
言ってしまえば楽になる
けど同時に相手の言葉を失わせる
苦しませる
自分が得になれても
相手は得になれない
僕はただいい気になった
琴に恨まれながら
琴に嫌われながら
琴に離れられていきながら
琴は口を閉じた
言うことを諦めたみたいだ
僕は話した
春だね。
適当に言った
琴は俯いた、それから、泣いた
琴は僕に ごめん。 とだけ言って、
夏風のような髪がふわりと揺れた
傷がくっきりとあった
見えるはずの無い傷がくっきり、
僕に見えるように、
琴は僕にわかりやすく、
春と同時に別れを告げてしまった
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あの日から2ヶ月たった今、
僕らは全く連絡をとっていない
お互いがお互い、バットエンドを
想像してしまったみたいだ
けど本当に琴と彼女は似ていた
日々を照らす太陽の様な笑顔、
たまに冗談を言う無邪気な性格
ぶっちゃけ言ってしまえば、
琴と会う度彼女を思い出すから
居ない彼女を思うから辛かった
彼女思い出せば僕は何も言えなかったあの、
無力感が頭の中を支配して動かなくなる
辛かった
多分琴も同じなんだろう
もう今は、分からないことだらけで
琴の声も、忘れてしまったけど
それでも、彼女についてたくさん、
根付られた気がするから
彼女のことは忘れもしない
鮮やかな光が灯きったあとの暗い夜に
僕は時折思って、後悔してしまう
もしあの時、僕が彼女を話さなかったら
琴と一緒に居られたかもしれない
バットエンドを想像させてしまったのは
紛れもない僕自身だった
僕から始めた物語を
僕の手で汚してしまった
手は血だらけだった
思うだけで心は汚れた
心は傷だらけだった
けど、琴は生きている
彼女はいないけど琴は生きている
連絡は途絶えてしまったけど
会おうと思えば会える
琴は今もどこかで誰かと居るか、
ひとりで僕みたいになっているか
僕みたいになっていないといいな
僕のこと忘れてくれているかな
忘れてくれていたら、いいな
もう僕で苦しまないで欲しいし
一時期の友情があまりにも儚くて
綺麗だから、その綺麗さに揺らがれて、
苦しまないで、生きて欲しい
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琴
私は瞬時に悟った
それと同時に目が覚めた
私が見たあの日の夏の彼は、
君なんかじゃない、と
私が見ていたのはただの幻覚で
そっくりさんなだけなんだ
世界は広いからそっくりさんなんて
ごまんと居るしたまたま、
そこに偶然居ただけなんだ
それにもう昔ばっかり、
囚われるのは面白くないだろうし
私はずっと囚われすぎて
周りが見えていなかったんだし
粘着しすぎたんだ、私は
深くまで言及してはならない
よくある話だ
信じすぎた結果、その反動で、
辛くなってしまうのは
仕方ない、こと
離れていくことは自分勝手だけど、
きっとお互い離れたいと思ってる
合わないって感じた
分かっている
私ら、会うべきじゃなかった
ごめん。
君にその重大さが伝われば、いいな
2ヶ月たった今でも君のことを
考えて、ずっと男とは会っていない
それに夏の匂いがしなくなった
夏だというのに、夏っぽくなくて
匂いなんかしなくて、ただするのは
君といた春の匂いだけ
今度は春の匂い、
また頭を悩ませるのか、
君が好き、なんて、夢で言ったけど
離れてから気づくことって沢山あるんだね。
君の存在の重大ささえも、
自分が抱いた感情も
けど気付いたって今では要らないもの、
あったらただ辛いもの、苦しいもの、
でももしかしたらこれから
君を忘れないために必要かな
夏の匂いを感じなくなるためには
これは必須なものだよね、
でも辛いのはいやだなぁ、
どうにかして君を忘れないように…
あー、まぁ、もういいや。
君のいい所が私にも移っていた
深くまで、考えちゃう、
言わば全てのことで頭を抱えられる
君の、いい所
嗚呼、好きだなぁ、
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今考えたら題名くそ適当ですね。
なんや「琴」って、もっとあるやろ!!!
コメント
2件
あの、完結してません