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夕飯は私が思っていたよりずっと静かだった。
神崎家のキッチンは広く綺麗で、流石金持ちだなと思った。
「日菜子ちゃん、玉ねぎ切ってもらっても良い?」
「あ、はい! 」
直人くんはエプロン姿で慣れた手つきで調理をしている。高校1年生とは思えない手さばきにちょっと驚いた。
「料理、上手いね。 」
「まぁね。兄ちゃん、ほとんどやらないから」
ちらっと、視線を向けると恒一さんはテーブルに黙々と皿を並べていた。
「……最低限はやる」
それだけ言って、また黙々と並べる。
(やっぱり距離あるな…)
別に冷たくされている訳ではない。けれど、
歓迎されている感じもない。
その曖昧さが、胸に引っかかる。
夕飯はカレーだった。
『いただきます。』
3人で同時に言った瞬間、少しだけ空気が和らぐ。
「美味しい!」
思わず声をあげると、直人くんがにっと笑った。
「でしょ?日菜子ちゃん、素直で嬉しい。」
「そ、そんな……」
思わず照れて、俯いた時
「…無理しなくていい」
恒一さんがぽつりと言った。
「え?」
「ここにいる間、気を遣いすぎる必要はない」
そう言って、カレーを1口食べる。
それ以上、恒一さんは何も言わなかったけど
その言葉だけで、少し肩の力が抜けた。
(この人、冷たいんじゃなくて不器用?)
夕飯を食べ終わり、お風呂の順番や、家でのルールを確認してそれぞれの部屋に戻る。
私の部屋は元は客室だったらしい。
ベッドと机と、本棚だけのシンプルな部屋。
でも、綺麗に整えられていた。
机の上には、メモが1枚。
『なにか困ったら伝えてください。神崎』
短くて、丁寧な字。
(……優しい)
胸の奥がじんわりと温かくなる。
その時、コンコンと控えめなノックが聞こえた。
「日菜子ちゃん、起きてる?」
直人くんの声だった。
「うん、どうしたの?」
「これ。」
差し出されたのはマグカップ。
「ホットミルク。眠れるって聞いたから。」
「え、ありがとう…」
「最初の夜ってあんま眠れないでしょ」
図星だった。
「俺たちのこと、気にしなくていいからね」
そう言って、軽く手を振って去っていった。
ドアが閉まったあと、私はホットミルクを飲んだ。
(…温かいな……優しい)
布団に入ってから電気を消す。
天井を見つめながら、今日一日のことを思い出す。 イケメン兄弟との同棲。現実感がなく、まだ夢見たい。
(ここで自分の居場所を作れるのかな…)
そんなことを考えていてもダメだと思い、目を閉じた。
第1話終わりです!よかったら感想などお願いします!お疲れ様でした!