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⚠ 首締め表現🈶 ⚠
「ここアジト」
『あじと…?』
しばたく歩き着いた場所
はアジトと呼ばれた何かの倉庫のような所。ゆっくりと周りを見回すと四角い鉄の箱のようなものがゴロゴロと途切れなく転がっているのが視界に映った。
「鶴蝶、なんか食いモン買 ってこい。」
「了解」
そういえば何も食べてないなぁ、と腹部の物足りなさを感じながらぼんやりとイザナさんたちの会話を聞き流す。
私の頭の中はイザナさんの説得という大きな課題で埋め尽くされていた。
どう話を出そうか、どう言葉を出そうか、ぐるぐるとその問いが狭い脳内を巡り出す。しかしどれだけ考えてもいい案は思い浮かばなかった。
鶴蝶さんに分かったと返事をしたのに。と申し訳なさが胸をきつく締め付ける。
「…なぁ○○」
『な、なんでしょうか。』
そんな中、いきなり喋りかけられつい裏返った声で返事を返してしまう。
今、鶴蝶さんは買い出しでいない。つまりイザナさんと私、二人きり。改めて状況を理解するとあまりの気まずさに奇妙な焦燥に駆り立てられる。
「オマエ、全部知ってンだろ。」
ドクンと心臓が大きく跳ねあがる。心が掻きむしられるような焦りが体の内側から感じる。
『ぜ、全部って……』
これでも必死に取り繕ったつもりだった。だけど感情の制御が出来ず、明らかに誤魔化すような声が喉から這い出る。
『なんのことで……』
「とぼけンな」
ピシャリと強い口調で話を遮られ、肩が跳ね上がる。
イザナさんの顔色を恐る恐る伺う。感情の読みづらい無の表情には、微かにだが怒りの色が読み取れた。
イザナさん、怒ってる。
完全に怯えに染まり切った思考の端で、ハッととある事に気づく。
そうだ、この流れはむしろこちらからすればチャンス。この流れのまま言葉を紡げば。
そう気づくと微かに震える唇を固く結び、決意を固める。
『…知って、ます。』
声が恐怖に震えるのを抑えきれない。なんとか聞き取ることほど困難に思える声を精一杯に繋ぎ、必死に訴えようと口を開く。
『……へ』
だけどその先の言葉が紡がれることは出来なかった。
ドンッと後頭部と背中に固い衝動と痛みが走る。その瞬間、両手首にも絞めつけられるような圧迫感が襲う。
押し倒された。そう理解するのに大分と時間がかかってしまった。
『は……ぇ……』
視界にはイザナさんの顔と鉄の天井。まるで世界が反転したかの様な現象にすぐに言葉が浮かばず、酸素を求める魚のように口をぱくぱくと動かすことしか出来なかった。
なんだか酷く嫌な予感がする。
「…なぁ○○はオレの事好き?好きだよな?」
『え?』
突然の話の変更に困惑の声しか出てこない。困惑と恐怖を宿した瞳で怯えながらイザナさんを見つめる。私の目に映るイザナさんの目はいつもよりずっと濁って見えた。
好き。好きってなに?
「好きって言えよ……なぁ!」
『う…ッ!?』
イザナさんの叫び声にびくりと体を大きく震え上がらせたその瞬間、手首にあったはずの圧迫感はいつの間にか首に移動していた。
「なんですぐに返事してくんねェの?」
喉が苦しい。熱く固い塊に塞がれて息を吸うことも吐くことも出来ない。
もはや“首を絞められている”と理解することすらも出来ない。
この苦しみからどうにか逃げ出そうと体をジタバタと動かしてみたり、イザナさんの手に爪をたてたりしてみるが彼の手はより強まっていくだけで弱まることを知らない。
自然と目から熱い水が溢れ出てきて、頬へと伝っていく。
「一回、自分がどんな立場にいるか教えてやるよ。」
そう言うイザナさんの表情は酷く虚ろだった。視界はちゃんと私に向けられているのに集点があっていないような、そんな違和感を抱く。
「…オレの事思い出してくんねェし」
力任せにグッと締めつけられ、酸欠で体が熱くなってくる。イザナさんの声すらも聞こえてこない。もう、彼が言う“思い出す”の言葉の意味を理解する理性も残っていなかった。
ただ痛みと苦しさだけが永遠に消えず、体全体に波紋のように広がっていく。
「痛い目みたら思い出してくれる?オレのこと、また好きって言ってくれる?」
「オレはずっと○○のこと好きだよ、大好き。世界で一番愛してる。」
段々と意識が深い深い闇の底に引きずり込まれ、遠のいていく。
とうとう瞼が勝手に下がっていく。彼の手を掴んでいた手に力が抜けていく。
「○○ちゃん!?」
最後に見たのはイザナさんの虚ろな表情と、鶴蝶さんの焦ったような叫び声。
それっきり、私の意識はぷつりと糸が切れた様に途切れた。
続きます→♡100