テラーノベル
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沈みかけの夕陽が周囲を赤く染める。
眩みそうになった視界を腕で隠していると、ふと重たく陰鬱な風が遮られた。
人の気配がする。
「ねぇ」
近くで高い声がした。
このまま無視しようとしたが、その声の主はもう一度「ねぇ」と言った。
しぶしぶと腕を外して目を開ける。
逆光で最初はよく見えなかったが、シルエットから判断して、どうやら話しかけてきたのは男の子のようだ。
目が徐々に慣れてくる。
男の子は見た感じ小学校高学年か。
さらさらの髪の毛に中性的な顔立ちが特徴的で、これであと二年もしたらアイドル系だと女の子に人気が出そうなタイプだ。
それが、迷彩柄のTシャツに半ズボン、黒の運動靴という幼さのまだたっぷり残った格好をしており、半ズボンから伸びる脚は細く枝のように華奢だった。
「なんだよ」
胡乱な彼の反応に男の子は少し怯んだ表情を見せたが、すぐに真っ直ぐな視線で彼の目を見返した。
「お兄さん。うちの犬見なかった?」
「犬? どんなの?」
「耳が三角でさきっぽが折れ曲がってて、茶色と黒の間みたいな色しててこれくらいの·····」
男の子が手振りつきで一生懸命説明する。
が、生憎そのような犬はここに来る前も途中も見かけなかった。
彼は上半身を起き上がらせながら答えた。
「いや、見てないけど。逃げたの?」
「うん。さっきまで一緒に散歩してたんだけど、信号待ちしてる間にいなくなっちゃって。あいつすごい足速いから·····」
そう言って長い睫毛を伏せた。
可哀想だと思ったが自分にはどうすることもできない。
一緒に探してやるほど自分もお人好しではない。
「悪いけど他あたって」と言おうとしたとき、男の子の肩越しに河川敷を下へ横切る茶色い影が見えた。
「あ、あれじゃね?」
男の子が振り向く。
「あっ!」と声を上げると同時に、見つかったことに気づいた犬が突然走るスピードを上げた。
犬は男の子の言うとおり、とても逃げ足が速い。
男の子が追いかけるが、子供の脚ではとても追いつきそうにない。
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