「ずっと、ずっと前から」
まっすぐな言葉と、まっすぐな目。
とてもこの状況が現実とは思えなかった。
佐伯(さえき)の手には紺色のケースがあって、中からピンクがかったゴールドのシンプルな指輪が見える。
とても現実とは思えないのに、佐伯の目を見返すうちに、抑えていた想いが湧き上がってくる。
彼に「だれも選ばない」と言われた時、もう終わりなんだと思った。
「振りほどいて」と言われた時、想いは届けられないと思った。
だけど―――。
「皓(ひかる)くん……」
言葉と一緒に、涙がひとつ零れる。
佐伯が大きく目を見開く様子が、視界が白くぼやけていても、はっきりわかった。
「……私ね、子供の頃、海で溺(おぼ)れたことがあるんだ。ひとりで遠くまで泳ぎに行って、足がつってしまったの。その時、溺れた私を助けてくれた男の子がいて……。泣いている私に、浜辺で桜色の貝殻(かいがら)をくれたんだ」***********************
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