テラーノベル
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たっつんに手を握られた瞬間。
じゃぱぱは少しだけ息を呑んだ。
冷えていた指先に、
じんわり熱が移ってくる。
「……たっつん」
「んー?」
「……恥ずい」
「今さらやろ」
さらっと返されて、
じゃぱぱが困ったみたいに笑う。
でも、その笑い方はさっきまでよりずっと柔らかかった。
たっつんは気づいていた。
じゃぱぱは今、
“頑張って笑ってる”んじゃない。
ちゃんと安心して、笑えてる。
それが嬉しかった。
マンションに着くまで、
二人はゆっくり歩いた。
途中で会話が途切れても気まずくない。
たっつんが隣にいるだけで、
じゃぱぱの張り詰めていた神経が少しずつほどけていく。
部屋に入ると、
じゃぱぱはようやく大きく息を吐いた。
「……なんか、どっと疲れた」
「そらそうやろ」
「今まで無理やり立っとったんやから」
たっつんは慣れた様子で電気をつける。
それから冷蔵庫を開けて、
中を見た瞬間、盛大に顔をしかめた。
「お前ちゃんと食っとらんやろ」
「……ゼリーはある」
「終わっとる」
即答。
「人間ゼリーだけで動けへんねん」
じゃぱぱは少し気まずそうに視線を逸らした。
たっつんは呆れたようにため息をつく。
でも、本気で怒ってるわけじゃない。
心配で仕方ないだけだ。
「なんか作るから座っとけ」
「え、悪いよ」
「今さら遠慮すんな」
そう言われて、
じゃぱぱは小さく「……はい」と答えた。
その返事が妙に素直で、
たっつんは少しだけ笑う。
数十分後。
温かいスープの湯気がテーブルに広がる。
じゃぱぱはそれを見つめながら、
ぽつりと言った。
「……こういうの、久しぶりかも」
「何が?」
「誰かに“休め”って言われるの」
たっつんの動きが少し止まる。
じゃぱぱは静かに続けた。
「最近ずっと、“もっとやらなきゃ”しか考えてなかったから」
「止まるの、怖くて」
「……」
「止まったら置いてかれる気がしてた」
その言葉に、
たっつんはゆっくり椅子へ座った。
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「なあ、じゃぱぱ」
「ん?」
「お前さ、“頑張れる自分”に価値があると思いすぎや」
じゃぱぱが目を伏せる。
否定できない顔だった。
たっつんは真っ直ぐ言う。
「頑張れん時のお前にも、ちゃんと価値ある」
「休んどっても、弱っとっても」
「俺らにとって大事なやつなんは変わらん」
静かな声。
でも、
ひとつひとつがちゃんと届く。
じゃぱぱは唇を噛む。
「……なんでそんな優しいの」
「優しいんちゃう」
たっつんは少し笑った。
「好きなやつが無理しとったら止めるやろ」
その瞬間。
じゃぱぱの目が見開かれる。
空気が止まったみたいだった。
たっつんも「あ」と小さく固まる。
数秒の沈黙。
「……今の」
「……忘れろ」
「いや無理でしょ」
じゃぱぱの耳が一気に赤くなる。
たっつんは片手で顔を覆った。
「最悪や……このタイミングで漏れる!?」
「漏れるって何!?」
さっきまで泣きそうだった空気なのに、
変な方向で二人とも慌て始める。
でも。
じゃぱぱは気づいてしまった。
今の言葉が、
冗談でも勢いでもなく、
たっつんの本音だったことに。
コメント
1件
第6話、読みました。たっつんの「好きなやつが無理しとったら止めるやろ」、あれはもう完全に本音のポロリですね。“漏れた”って言い直す彼の焦りと、じゃぱぱの耳が一気に赤くなる描写にこっちまで照れました。でも一番好きだったのは「頑張れん時のお前にも、ちゃんと価値ある」という台詞。ゼリーだけの食生活を即答で終わらせるところから、全部がじゃぱぱを休ませてあげたくて動いてるのが伝わってきて、とても温かい回でした。