お母さんは、悲しくない転校だと思っているけど、本当は、先輩と離れるなんて悲しい。
足が重くなりながら、学校へ行く。
「咲希さんから、お話があるんだよね。」
全員の前だから、もっと緊張する。周りを見渡すと、ざわめいていた。
「ら、来週、転、校する、こと、に、なりま、した。」
相変わらず、こんな風になってしまう。
「そうなんだよね……」
「今まで、ありがと、うござい、ました。短い間だ、ったけれど、楽しか、った、で、す。」
楽しかったのは、先輩だけ。ただ、それだけだけど、こう言った。
もう、転校するのか……
先輩に、言わないと……あと、連絡先も交換したいな……
先輩の靴箱の中に、手紙を入れよう。
二年三組。と、確認しながら、佐々希奇空という、名前を探す。
他の学校とは違って番号ではないから、わかりやすい。
あ、あった。
誰かにばれないように、こっそりと、隠して、入れる。大丈夫かな……
次の日、先輩から話があると言われたので、緊張しているけど、行ってみる。
「こんにちは!」
「こん、にちは」
手紙のことかな?
「何の、ことで、すか?」
「転校、するんだよね?」
突然、先輩の顔がくもった。
「は、はい……」
「そっか……」
「連絡先、交、換しても、いい、ですか?」
「やりたい!やろ!」
先輩は、いつものように明るい笑顔で満たされているけど、心のなかでは泣いているんだろうな……
もう転校か……本当に、時の流れは、はやいな……
「今、まで、ありがと、うござ、いました。」
それが本当の気持ち。
そう言って、桃山高校を後にした。
_先輩、またどこかで、ね
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