注意事項
・一話参照
・暴力等の表現が1話より含まれております。
主(一話の視聴回数200越えありがとうございます😭😭😭😭😭😭
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「お前感情ねえのかよ!!イヒヒ!!」
「いやそれな!!だって親いないんだよ!」
「あーそうだったわ!!なんかごめんなあ!!」
腕、足。
次々に飛んでくる痛み。
先生、しま、みんなは、悩みを言ってねと言うけれど。
言うのがどれほど勇気のいることかを知らない。
呆れられてしまうとか、そんな心配はしていない。
言いたい。
助けてって。
言えないの。
だって、自分の言うことなんか理解しないんでしょ。
軽々しく、笑っていじめだとかっていう子達もいるから。
暴力が、今ではイジりとも言えるから。
そんな世界になっていってるから。
そんな中、助けてくれる人はいない。
大人だって、見て終わり。
あの子たちが虐めてくると言えば、
あの子たちに聞いてみるって。
聞いたらダメ。
また怒られる。
違うの。そうじゃないの。
なんで分かってくれないの。
何のために勇気なの。
こんなにも悲しい思いに耐えてる自分を無視して、その子たちを信用するのはなんでなの。
そうして、イジメはヒートアップする。
「なにしてんねんッ!!」
ふと、目の前が暗くなった。
見上げれば、目の前に誰かが立っていた。
両手を広げて、詩葉を守るようにしていた。
安心すると同時に驚いた。
こんな人が現実にいるなんて、と。
目の前の誰かは、殴られたらしく、詩葉の方へと倒れた。
男の子たちはどこかへ行ったようだ。
詩葉は、慌てて倒れた誰かの意識を確認する。
運良く、頬を叩かれただけであった。
「わっ、保健室いく…?」
「え、と、」
「…ああ、ぼくちい!!」
「…なんでたすけたの??」
千衣は、うーん、と言い、にっぱりと笑った。
「いたいから!!」
「…え、。」
「ねえねえ、きみは!!なんていうのー?」
「…しよ。しどー、しよ。」
「あ、ぼく、とうぼくちい!!」
「うん、さっきもきいた。」
「あそっかぁ!!」
千衣、という男の子は性格のわりに不健康な身体をしていた。
異様に細く、肌も傷が所々。
服だってボロボロだ。
それを隠すように明るい笑顔で詩葉の手を取った。
「かえろー!!もんげん!!」
「…うん。」
自分と似たような手を、優しく握り返す。
目の前が明るくなった気がした。
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ドカッドカッ
「なんでお前はいつもこうなんだ!!」
「ぐすっ…あなたぁっ、」
「黙れ!!」
父親と母親。
いいや、違う。ただの他人。
毎日同じ場所で起きて、寝て。
どうしたら逃げれるのかを考えて。
考えて考えて、そしてまたここに捕まって。
ドロドロとしたような何かが足を掴んで離さない。
いっそ、消えてしまえばいいのに。
なんて、思う。
助けてくれるような優しい人がいると、幸せで幸せで消えれないんだよ。
だからさ、もう、ほっといてよ。
なんで構うんだろう。
なんで…。
千衣はベランダで蹲った。
痛む腹を抑え、出てきそうな冷たい夜飯を喉奥に閉じ込めて。
コンコン、と隣の家の窓が開く。
屯である。
昔から、千衣を助けてくれた優しい人。
優しく手が伸びてきたので、千衣はその手に抱きついた。
そのまま、身体が浮き、隣の家のベランダに移る。
部屋に入ってしまうと、怒られる可能性が高くなるので、屯は毛布を千衣と被って温まった。
「…とんくん、きょうね、おともだちできた。」
「そうなん??よかったなあ。」
「うん、あのねあのね…、いたそうだったの。」
「…??」
「ぼくも、いたいのわかるから。わかるんやで。」
「…なにがあっ、」
「千衣い〜、洗濯手伝って欲しいわあ」
屯は、素早く千衣を千衣の家のベランダに戻した。
じゃあね、と小さく手を振る。
屯も返してくれた。
自分とは、全然違う手をしていた。
目の前が、ぼんやりとした気がした。
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『ってことで、今日も千衣お願いしてええか??』
「うんいいよお〜。僕も暇やしい。」
『シッマのとこの子も呼んだれよ。』
「うん、言ってみるう。」
『…なんやその喋り方。徹夜か。』
「うん〜。売れっ子なのでぇ。」
『シバくぞ。』
ブツリ、と音を立てて切れたスマホの電話画面を眺めながら苦笑する。
さてと、今日は千衣がうちに帰ってくる。
掃除でもするかあ、と身体を伸ばす。
屯の家族になった千衣。
だが、屯は少し遠くにある小さな定食屋で働いているため、家を留守にする事がある。
そんな時は、ウツの家に帰らせているのだ。
ウツは、志真の電話画面を開く。
ぽちっ、と押せばすぐに出た。
『よぉ!!どうした!!』
明るいが、少し声が枯れている、疲れているのだろう。
「ちっちがな、僕ん家来るんよ。ぴーくんもどお??」
『まじか!!頼みたかってん!!俺、また明日から少し離れるんよ!!』
「今度はどこやねん〜。」
『今度は、北の方やねえ。』
志真から、詩葉に変わる。
詩葉は、最初同様したようにしていたが、今週、ウツと過ごせると知り凄く明るい声に変わった。
『え、あしたからっ??きょうはだめ??』
「あはは〜、もう会いたいんかぁ。」
『うん、うんっ。げーむしたい!!』
「ええよぉ、ちっちも誘おか。」
嬉しそうにしている詩葉の声を聞き、ウツは机を片付けた。
何気に、自分だって楽しみだ。
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「「ただいま!!」」
元気よく2人の声が聞こえてきた。
ウツは、急いで玄関へ向かった。
いつも通りの2人だった。
でも、初めましての時とは違う。
幸せそうな2人だ。
「おやつ用意したで〜、食べよか!!」
「うんっ。」
「そのあと、こーえん!!」
「ええぞお!」
千衣と詩葉はきゃっきゃっと走り、リビングまで行った。
2人の脱ぎ捨てた靴を並べ、ウツも後を追いかけた。
色とりどりのクッキーやチョコやら、チップスやら。
3人は笑いながら食べていた。
「そんでなっ、そんときのしよがな!!」
「だって、ちいがうるさかってんもん。」
「んはは、2人は仲良しやなあ。」
「ともだちやもーん!!」
「ともだち〜。」
「でもさ、もう親友やん??」
クッキーをサクッと食べ、2人を見つめる。
2人は顔を見合せて首を傾げた。
「しんゆうなのかな。」
「しんゆう、かもね。」
「じゃあ、しんゆう!!ウツにい、しんゆう!!」
「あははっ、せやなあ。」
3人揃って、オレンジジュースを飲む。
また、笑い合う。
「そういえばね、せんせいが、まんがよんでたで。」
「え??僕のを??」
「うん、ねっ、しよ!!」
「うん、よんでた。」
「え、僕が書いたって言ってないやろな!?」
「うん!!」
「あははっ、ウツにいほっぺにくっきー、ついてるよ…、くははッ。」
「ほんまやっ!!くははッ…ウツにっんははッ。」
ウツの頬を指さしケラケラ笑う。
ウツは、苦笑して頬を拭いた。
本当に、変わったと思う。
自分も、この子達も。
最初来た時、
詩葉は本当に静かで傷だらけだった。
千衣は本当に可哀想でやつれていた。
…自分は、ほんとクズだった。
全部が変わったんだ。
3人で、変えたんだ。
ウツは、机に置いてある1つの本を手に取る。
「これ、子供向けの漫画やで。お前らには特別な。誰よりも早く読ませてやるよ。」
「ええのー!!やったあ!!」
「ちい、あっちでよもー。」
本を持って、カーペットが敷いてある部屋に走っていってしまった。
お菓子は食べないでおこう。
また後で食べるだろう。
自由気ままでいいんだ。
わざわざめんどくさいことはしなくていい。
自分が幸せであるなら、それでいいんだ。
「それでこそ、僕らやな。」
頬杖を付いて、今ある空間を眺める。
いつか、3人で撮った写真を飾ろう。
いつか、3人で旅行に行こう。
いつか、3人で煙草を吸おう。
色々な未来がぽつりぽつりと浮かんでくる。
あーあ。
目の前は先が気になる輝きで溢れている。
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「ウツにい〜…っ、あ!!」
「どうしたの??」
「しよ、しーっ。」
「??」
本を読み終わり、リビングに戻ってくると、ウツは机に伏せて寝ていた。
すう、すう…と、小さく寝息を立てていた。
2人は頷き、寝室から布団を担いでくる。
それを乱暴ではあるが、優しくウツに掛けた。
「…よるごはん、どーする??」
「あ、おやつ残ってる!!しよ、これ食べよー!!」
「むしばなるで。」
「いいじゃん!!おそろい!!」
「やだよお。」
2人はお菓子が残っている皿を、ウツの頭が乗っかっている机に持ってきた。
「ウツにいのぶん、のこそうね。」
「よろこんでくれるかなあ。」
2人は、3つのクッキーを3人で分け、残った1つのクッキーは、パキッと3人分に割った。
「おれんじじゅーす!!」
「ウツにいのも。」
「…ふふ、」
小さな笑い声に、気が付かないほど2人は目の前が幸せなのだ。
その幸せに、夢中なのだ。
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(おまけ 詩葉と志真)
「詩葉〜、今ええか!!」
「…。」
詩葉は、本を読んでいた。
志真は笑顔で詩葉に近寄った。
「…詩葉??今暇か!!」
「…。」
詩葉は無言で、本を読み続けた。
だけれど、志真は負けない。
「…え、あれ、詩葉クーン!!!!!!」
「うるさい!!」
詩葉は志真の顔をぺちっと叩いた。
詩葉が本を読んでいるのは、ウツの漫画をしっかりと読めるようにするためだ。
そのため、読書は大事な勉強だ。
それを志真に邪魔されては…
「ウツから電話やで!!」
「え、!!」
「ウツにい!!」
まずは本人が1番らしい。
志真は先程とは違う詩葉の嬉しそうに話す姿を見て、笑った。
「詩葉はツンデレっちゅーやつかあ!!」
志真の足の小指に、詩葉が本の角をぶつけるまであと数秒…。
ああもうだめだこりゃ
ちゃんとメモってからやればよかったという後悔を今更します。
コメント
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内容 滅茶苦茶 好き です 。 フォロー 失礼 致します 。
うふん好きでございますですわ
3人で変えたんだって...っすき!!!!😭😭