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仲間
夜。
焚き火の音だけが、静かな森に響いていた。
パチ、パチ…。
炎の前に座るゴンとレオリオ。
少し離れた場所で、クラピカは地図を広げている。
そして――
×××は、ひとり、木にもたれて座っていた。
膝を抱え、視線は地面。
(……まだ、慣れない)
胸の奥が、少しだけ苦しい。
数日前まで。
自分は「幻影旅団No.22」だった。
敵。
討伐対象。
倒されても文句は言えない存在。
それが今――
こうして、ハンターたちと同じ焚き火を囲んでいる。
「……不思議」
ぽつり、とつぶやく。
その声に反応したのは、隣に座っていたキルアだった。
「なにが?」
×××は少しだけ驚いて、顔を上げる。
「……いや。なんでもない」
そう言って、また視線を下げる。
キルアは、しばらく×××を見つめてから、ふっと息を吐いた。
「さっきから、元気ねーな」
「……そう?」
「そう」
即答。
「考えすぎ」
×××は、小さく笑った。
「……キルアは、怖くないの?」
「は?」
「私が……元・旅団ってこと」
空気が、一瞬だけ止まる。
焚き火の音だけが残る。
ゴンも、クラピカも、レオリオも。
全員、聞いていた。
キルアは、少しだけ目を細めて――
そして、あっさり言った。
「別に」
「え…」
「だってさ」
キルアは×××の方を向く。
真っ直ぐな目で。
「俺らのために、命張ったろ」
あの日。
大量出血で倒れながらも、
「先に行って」って笑った×××。
自分を犠牲にしてまで、守った。
キルアは忘れていなかった。
「裏切ったとか、元敵とかさ」
「正直、どうでもいい」
×××の目が、少し見開かれる。
「今の×××は、俺らの仲間」
ゴンも、うんうんと頷く。
「そうだよ!×××はもう仲間だもん!」
レオリオも腕を組んで笑う。
「今さら疑うわけねーだろ」
クラピカも静かに言う。
「…君は、もう“蜘蛛”ではない」
「私たちの側の人間だ」
×××の胸が、ぎゅっと締めつけられる。
(……ああ)
(こんなふうに、言われたの…)
(初めてかもしれない)
今まで。
旅団では「道具」だった。
「戦力」だった。
「番号」だった。
でも今は――
「×××」として、見てもらえている。
ぽろ…。
気づかないうちに、涙が落ちた。
「……っ」
慌てて拭こうとすると、
キルアがハンカチを差し出した。
「ほら」
「……ありがと」
小さな声。
キルアは照れたようにそっぽを向く。
「べ、別に」
「泣かれると、調子狂う」
×××は、くすっと笑った。
「……優しいね」
「うるせー」
耳が赤い。
ゴンがニヤニヤする。
「キルア、顔赤いよ〜」
「黙れ!!」
皆が笑う。
久しぶりに、心から。
×××も、笑った。
その夜。
×××は久しぶりに、ぐっすり眠れた。
“敵”でも
“裏切り者”でもない。
“仲間”として。
ここに、いていいんだ――
そう思えたから。
to be continued…
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