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Sug
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『……なあ、お前最近おかしくない?』
今日は久しぶりにヒムの家に遊びに行って、近くの公園を散歩して、二人でアイスを食べていた。
『暑いね』『夏だな』なんて世間話を交わしあっていたのに、突如出てくる言葉がそれか?もしや本題はこれだったのだろうか。だとしたらとことん不器用な男だ。
「なに?急に」
『よく手引っ掻いてるし、さすがに心配だよ、おれ』
見られてたんだ。
まあよく会うしな、だけどちょっと面食らう。
『手を引っ掻いてる』、、そっか、俺またしちゃってたんだ。
俺には物心ついた時から自傷癖のようなものがある。
きっかけはいつだったかわからない。気がつけば身体のいろいろなところを傷つけるようになっていたのだから。
他にもヒムに指摘されたことは多々ある。その度上手く交わし続けてきた。今日も、癖だと言えば誤魔化せるだろう。だけど最近『体に力入りすぎ』だとか『昨日より声低くなった?』……みたいな、俺ですら分からない些細なことにも気がつくようになってきてそろそろまずい。てか気づきすぎてキモイの領域いっちゃってる。
まぁその話は置いといて。
自傷癖のこと、ヒムには話さないでおこうと思ってる。なぜかって、余計な心配をさせたくない。それに尽きる。アイツちょっと心配性な所あるから。
てか、薄々気づいてる説ある?
……いや、まさかな。
「……ただの癖だよ」
そう言うと、ヒムは目を見開く。そのまま無表情でこっちを向いて固まっている。
え、なに。 そんなに驚くこと言ったっけ。
なに、怖い。
考える隙を与えられたのは一瞬で――
『お前さあ!俺が気づいてないとでも思ってる?』
ビクッと全身が大げさに跳ねる。
怖い、怖い。大きい、声が。
怒鳴らないで。ごめんなさい。
『っ!ご、ごめん。大丈夫か?おい、聞こえて、』
少しづつ息が荒くなる。
視界がぼやけてしまって、どこに焦点が定まっているのかわからない。
なぜこんなにパニックになっているのか。
ちがう、ヒムは”あの人”じゃない。
『、とりあえず落ち着け』
優しくて、聞き馴染みのある声。近くにいるはずのヒムの声が、遠くで聞こえる。耳鳴りがやまない。
そう、簡単なことだ。呼吸を安定させて
――無理だ。怖い、怖い!
「ヒュッ 、カヒュッ、、ハ ッ、たすけ、てッ、 ッハ、」
アイツの声がフラッシュバックする。
[ふふ、可哀想……。哀れな子供。]
くるしい、 く る し い 。
締めないで、首を。
跡をつけないで。手を近づけないで。
近づかないで。触れないでよ。
違う。こんなことが言いたいわけじゃ、、
やだ、怖い、それでも、それでも怖い……!!
『発作、か、?ッ、エクス!大丈夫だ、落ち着いて聞いてほしい。薬とかは、ある?』
クスリ、
薬……、
そうだ、こういう時のために常備していたのに、なんで忘れてるんだ。
自分の無能さが嫌に、いや、そんなこと考えてないで、早く返事を。
「あ、る、、ッ、かばんの、ポケッ、ト、」
おそらく確認したであろうヒムが、俺に手を差し出す。
ぼやけていた頭も、視界も、だんだん覚醒してきて、周りの景色が鮮明に見える。そうだ、そういえばここ、外なのに。何してんだろう。キモイキモイキモイ、自分、死ねよ。
自己嫌悪に重なる母親の声。
[私が殺してあげるの]
[早く楽にさせてあげなきゃ]
声が、
声がやまない。
無意識に――差し伸べられた手を、俺はバシン、と大きな音を立てて、叩いてしまった。
俺、最低なことッ、、
また、やっちゃった 、?
「っごめッ―!!!!」『大丈夫、な?』
『偉いな。ちゃんと、薬の場所言えて。……俺は見てる、いつもお前が頑張ってること。昔から、頑張ってきてること。……話してくれなくてもいい。俺はただ、お前を守りたい、守らせてほしい』
まただ。いつもの笑顔。
優しくて、不思議と安心してしまえる。
……なんで、優しくするの。
ずっと思ってた。思ってたけど、俺のこの気持ちを、俺自身が信じたくなかった。だから考えないようにしてた。
俺は、普通の人間じゃない。
”普通”になれない。
今だって、こんなに優しくしてもらってるのに、十分恵まれているのに、ずっとずっと自分を好きになれなくて。
ずっとずっとずーっと、
死にたいって気持ちが消えなくて。
勝手なことを言ってるのはわかってる。
最低なんだよ、俺って。
だから、さ、ヒム。
俺なんかに、世話を焼かないで。
これ以上……優しくしないで……。
「アハッ……。」
コメント
2件
なんだろう凄く好きです
第1話めっちゃ刺さった……「手を引っ掻いてる」って気づかれてるところから始まるの、もう最初から胸が苦しくなった。ヒムの「俺は見てる」って優しさに、主人公が「なんで優しくするの」って思う気持ち、すごくわかるよ。それでいて最後の「アハッ」の投げやりな笑いが切なすぎる……。続きが気になるし、主人公の心の闇にちゃんと向き合って書いてるのが伝わってきた。あーーさん、素敵な作品をありがとう。