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サカバンバスピス☆
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「、、、ぅぅ、」
僕は1人、部屋のベッドの上で足を抱えた。背中がズキズキと痛む。数ヶ月前から始まったその痛みは、徐々に強くなっていき、今では仰向けに寝られない程にまで強くなっていた。
「兄さん、、んね、、っ」
縋るように、あの日から一度も会えていない、兄の名を呟く。誰にも拾われず、暗い部屋に落ちただけの呟きは、可視化したら、きっと山のようになっているだろう。また背中の痛みが強くなった気がして、僕は足を抱えたまま、ぎゅっと小さく丸まった。そんな僕が「天使病」と診断されたのは、数ヶ月前の事だった。朝から背中が痛くて、それが何週間も続くものだから、医者に診てもらうと、皮膚下に細胞分裂の途中で突然変異を起こした翼があるとわかったのだ。それからは、薬を飲んで進行を抑えているものの、それで病を治せるわけではない。それからしばらく経つと、背中に突起ができて黒い痣が浮かび、血管が少し浮くようになった。医者には、そのうち羽が皮膚を突き破って生えるだろう、と伝えられた。それが激痛を伴う事も。僕は今日も、それに怯えながら一夜を過ごすのだろう。夕陽が水平線に沈むのを、僕は虚な目で窓から眺めていた。
「、っぁあああ”あ”っ、、!?」
朝、僕は痛みで目を覚ました。背中が、まるで火で炙られた鉄の棒を突っ込まれたみたいに痛い。視界がチカチカして、耳鳴りが酷い。何も見えないし、聞こえない。ただ痛みだけが、鮮明に伝わっていた。何かが、内側から僕の背を食い破ろうとしているような、引き裂かれる痛み。朦朧とした視界と意識の中で黒い羽が散ったような気がした。
それから何時間経っただろうか。目を覚ませば、日は少し斜めになり始めていた。
「、、、んん、、なん、ね、?」
1番最初に目に入ったのは、いつもの部屋のサイドテーブルだった。卓上には、桶と櫛が置いてある。そこにかけられたタオルは血塗れだった。よく見れば、今僕自身が横たわっているベッドのシーツも所々、いや、3分の2ほどが赤く染まっている。
「一体なんなんね、、、」
思い出そうとしても、覚えているのは、白い視界と甲高い耳鳴り、そして痛みだけだ。わかりそうにない。
取り敢えず、状況を確認しようと体を起こそうと思った時だった。
「わっ、、んね?!」
僕は思わずバランスを崩した。ぼすっと間抜けな音がして、シーツに体が沈む。なぜだか、異様に体が重い。そして、視界の端に何かが映った。黒くて、ふわふわしてて、、、まさか。
「、、、嘘、なんね、、?」
羽だった。真っ黒い、大きな羽。手で触れると、触感があった。つまりこれは、僕から?僕の背中から?でも、そう思うと現実と合致する。前に医者から伝えられた、天使病患者に見られる、背中から羽が生える症状。もし、僕の背中からこの羽が皮膚を破って出てきたのだとしたら。体が重いのも、シーツが血塗れなのも、朝の痛みも、全部、辻褄が合う。あぁ、そういうことなのか。 羽を開こうとしてみたら、意外にもちゃんと動いた。まだ実感が湧かないけれど、感覚が全て現実だと証明していた。しかし、僕は絶望よりも、好奇心の方が大きかった。この羽使ったら浮けるのかな?僕、似合ってるのかな?そしてなにより、兄さんはなんていうかな?僕は自分で自分の羽にくるまって、なんと言われるか想像してみた。成長したね、かな?似合ってるね、かな?くすくすと笑いが漏れた。孤独と絶望しかなかったこの10年間に、初めて希望が持てた気がした。僕は、シーツが血塗れなのも忘れて、自分の羽に包まれながら、何年かぶりの深い眠りに落ちた。この部屋の 外で、何が起きてるかなんて、知ろうともせずに。
【next story】
Story4 破滅の始まり、世界大戦へ(Part1)
コメント
2件
皮膚を突き破るなら、汚れて生えたはずの彼の羽を手入れしてくれたのは、一体誰なんでしょうね? 次回から、いよいよイタ王兄弟以外の化身が登場します!お楽しみにー!
みぅ🤍🥀 「天使病」…背中から羽が生えるっていう設定、すごく切なくて、でも美しかった。痛みの中で「兄さん」だけを頼りに呟く姿、そして羽を見つけた後の「似合ってるかな」「兄さんはなんていうかな」っていう純粋な想いに胸が詰まったよ。孤独と絶望の中に、一筋の希望が灯った瞬間が、本当に丁寧に描かれてて…。儚淡花病さんの書く“闇の先の光”が、すごく好きです。続きも大事に読ませてもらうね🌙