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side滉斗
学校へ行く前。
俺はいつものようにある家に向かう。
ピーンポーン
「元貴ー!学校行こー!」
「行かなーい。」
いつもの返事を聞いた俺は、1人で学校へ。
いつか、一緒に学校行けるのかな〜
並んで歩ける日を夢見て、俺は今日もインターホンを鳴らす。
事の始まりは数ヶ月前。
…
『滉斗おはよ!』
若井「おぉ!おはよ!」
『なーなー、昨日のテレビ見た?』
若井「あれだろ?めっちゃ面白かったよな!」
靴を履き替えていると、友達が駆け寄ってきて昨日のテレビの話しをしてきた。
並んで教室に向かう途中、友達がふと思いついたように言った。
『そういえば、俺らのクラスに自分で曲作ってるやついるらしいぜ?』
若井「すご!だれだれ!?」
『たしか…大森だっけ?』
大森くん…か。話したことないなぁ。
そもそも数回しか見た事がない。
不登校、と言うやつらしくて、たまに学校に来た時は保健室で過ごしているようだった。
大森と言えば少し癖のある黒髪に特徴的な大きいえくぼ。かわいい顔のやつだったはず。
若井「なんて調べたら出てくる?」
『わかんね、名前で調べてみたら?』
若井「ふーん、わかった。」
下の名前なんて言うんだろ?
教室に入った時、教卓に貼ってある名簿をちらっと見る。
大森…げんき?
わからない、後で調べてみよう。
自席について荷物を置くと、こっそり携帯を取り出す。
YouTubeを開き、大森元貴と検索する。
若井「あった…」
そこには複数の動画がアップされていた。
息吹の唄、5月病、9楚ランドワンダー、愛され症候群…並んだ曲名は俺の興味を惹くものばかりだった。
1つ聞いてみようと思ったが、予鈴が鳴ってしまったので後で聞くことにした。
…
お昼休み。
俺はいつも友達と食べるのだが、今日は大森の曲が聞きたくて、1人で屋上に来た。
段差に腰掛け、イヤフォンを耳に嵌める。
特に気になった動画をタップすると、ぶわっと一気に音が広がった。
若井「っ…すごい…」
聞き終わる頃には頬が濡れていた。
1人でよかった。
俺と同い年のやつがこんなにも凄いものを作っているだなんて…信じられない…。
ますます彼に興味が湧いた。
俺は急いでお弁当を食べ切ると、職員室に走り、先生に大森の家を聞いて、毎朝呼びに行くことを決めた。
…
毎朝、呼びに行って数ヶ月。
無言で無視されてもめげずに声をかける。
そんな俺に転機が訪れた。
修学旅行だ。大森はイベント事は来るようなので今回も来ると信じていた。
俺は大森と同じ班になれるように必死に祈った。
『大森は…若井の班でいいか』
よっしゃ…!
先生の粋な計らいによって俺は大森と同じ班になることに成功した。
修学旅行当日。
大森「え…」
若井「あっ!大森くん!おはよ!」
先生に連れられて来た彼は、心底不快だと言ったような表情で俺を見つめた。
大丈夫かな…仲良くなれないかもしれない…
いや、仲良くなってやるんだ。
固い決意を胸に1日目の幕を開いた。
…
若井「俺大森くんの曲めっちゃ好きでさ!あっという間に全部聞いちゃって!」
大森「へぇ?どれが好きなの?」
若井「もちろん全部好きなんだけど、特に好きなのはね〜…」
話していくうちに俺らはすぐに打ち解けた。
俺は昔から音楽が好きで、最近兄貴のおさがりギターをもらって弾きまくっていた。
その事と、彼が作る曲への熱意を伝えると意外とすんなり受け入れてくれたのだ。
結果、修学旅行は最高の思い出となり、元貴と仲良くなることも成功した。
…
「元貴ー!学校行こー!」
今日も俺はインターホンを押し、元貴を呼ぶ。
仲良くなったからといって、学校に来てくれるようになった訳ではなく、毎日「いかなーい」と断られてばかりだった。
でも今日は何かがおかしい。返事が遅い。
今日はまだ寝てるのかな…
そんなことを考えていたのもつかの間。
ドアが突然ガチャっと開き、寝ぼけながら目を擦る元貴が顔を覗かせた。
若井「えっ、元貴!お、おはよ!」
いつも2階から返事をされるだけだったのでとても驚いた。
寝ぐせなのか、ぴょんと跳ねた髪の毛が少しかわいいな、と思う。
大森「今日、学校行く…。」
若井「お!ほんと!?なら待っとくね!」
ぐいっ
「え」
大森「外、寒いだろうから入って。」
ぐいっといきなり引っ張られて気がついたら俺は大森家の玄関にいた。
は、え?何が起きたの?
大森「はやくきてよ。」
若井「え、どういうこと?」
全く状況が飲み込めない。
大森「おれ、朝弱いからてつだって…」
若井「わ、わかった…?」
とにかく支度を手伝えばいいらしい。
若井「おじゃましまーす…」
今日は時間割変更があることを伝えると、分からないから、とやらされている。
横では元貴が着替えているのだが、無防備すぎて思わずこちらが目を逸らしてしまう。
男の裸なんて見慣れてるはずなのに、
若井「よし、終わり…」
大森「おれも…。」
ちらっと様子を伺うとシャツのボタンを数個かけ違えていた。
若井「あ、元貴ボタン掛け違えてる。」
大森「んえ、あぁ。ありがと。」
意外と抜けてるとこもあるんだ。
用意が終わると1階へ。
テーブルにはしっかりと朝ごはんが用意されていた。
携帯でも見て時間を潰そうとすると、元貴が口を開けてこちらを見つめていることに気付く。
「あー…」
若井「えっ、俺が食べさせるの?」
大森「ん、だめ…?」
若井「別にいーけど…」
食べさせるとか赤ちゃんみたい…。
慣れないながらそっと口に運んであげる。
大森「ん、おいし…」
数口食べさせると慣れてきて、安定してあげられるようになった。
大森「ごちそーさまでした。」
食べ終わったらトイレに行かせて。
鞄を持たせて一緒に元貴の家を出る。
大森「いってきまーす。」
もう既に疲れたような顔をした元貴と並んで学校へと歩き始める。
突然、元貴が尋ねてくる。
大森「ねぇ、なんで毎朝来てくれるの?」
そんなのもちろん
若井「元貴と一緒に学校行きたいから。」
やっと一緒に行ける。
改めて認識すると心が踊る。
大森「…ふぅん。」
少しの間があった後、弱い返事が返ってきた。
ちらっと元貴の顔を見ると、下を向いて耳を真っ赤に染めていた。
な、なんでそんな照れてんだよ…
こっちも恥ずかしくなるじゃん…///
慌てて気持ちを切り替え、他愛もない話しをしていると、あっという間に学校に着いた。
靴を履き替えて教室へ向かう。
若井「今日は保健室じゃないの?」
大森「ん、頑張ってみるの。」
若井「そっか、偉いね。」
わしゃわしゃと頭を撫でると少し嬉しそうな顔で怒ってみせる元貴。
大森「ちょ、やめろ、!」
そうこうしているうちに教室に着いた。
教室に入ると、クラスのヤツらに絡まれる。
『滉斗今日おせーじゃん!』
『一緒に来たの誰?』
若井「大森だよ。急でごめんけど、今日俺あいつと一緒に過ごすからよろしく、」
『ふーん、了解!』
元貴の方を見ると、少し寂しそうに下を向いていた。
すぐ行かなきゃ。
若井「じゃーな!また!」
『おう!またな!』
急いで元貴の席へ向かう。
若井「元貴!ごめんごめん、あいつら引っ張っていくから…って今忙しかった?」
元貴は驚いたような顔をした後、すごく嬉しそうに笑って、イヤフォンを外した。
大森「…別に、!笑」
若井「あいつら力つえーからさー…」
若井「…ってか何聞いてたの?」
大森「昨日作ったばっかの新曲。」
若井「え!聞きたい聞きたい!」
大森「しゃーねーなぁ」
俺たちは本鈴ギリギリまで相耳して元貴が作った新曲を聞いていた。
コメント
4件
食べさせてあげてるのとか相耳してるのとか妄想するだけで鼻血ブー
うわああ二人の絡みかわいすぎやろ……イヤホン相耳とか、考えただけでニヤつくぜ笑