テラーノベル
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タボちょん、捏造有り
直接的描写はありませんがセンシティブ注意
三十四歳にしてこんなにも心臓が忙しくなる夜が来るなんて思っていなかった。
ちょんまげは幼馴染のターボーの家のソファに腰かけながら、落ち着きなく指を組み替えていた。
「先に風呂入ってくるな」
そう言って浴室へ消えたターボーの背中を見送ってから、もう五分は経っただろうか。
付き合うことになったのはほんの一週間前。
子どもの頃仲が良かったものの疎遠になっており、大人になりここ数ヶ月で再会した相手がある日突然「好きだ」と真剣な顔で言った。
その意味を理解するまでにちょんまげは丸一日かかった。
――恋人。
その言葉の重みが今更のように胸にのしかかる。
緊張を紛らわせようと立ち上がり、何気なくテーブルの上を片付けようとした時だった。
引き出しが少し開いているのが目に入る。閉めておこうとして視線が止まった。
そこにあったのは見慣れない小さな箱。
数秒遅れて、それが夜の行為をする際に利用する物だと理解する。
「……っ」
どっと熱が顔に集まった。
用意、してるんだ。
つまりターボーは自分とそういうことを――
期待と、不安と。
自分はちゃんと応えられるのかという戸惑い。
三十四年間、恋愛らしい恋愛をほとんどしてこなかった。ましてや、誰かと深く触れ合う経験なんて。
浴室のドアが開く音にびくりと肩が跳ねた。
「ちょんまげ?」
タオルで髪を拭きながら出てきたターボーが不思議そうに首をかしげる。
「顔赤くない?」
「な、なんでもない」
声が裏返る。
ちょんまげの後ろの引き出しが開いていることに気付き赤面の原因を察したターボーは、少しだけ目を細めたあとふっと優しく笑った。
「無理しなくていいからな」
その一言に胸がぎゅっと締まる。
強引なところもあるくせに、こういうときはずるいくらい優しい。
ベッドに座らされてもちょんまげの鼓動はおさまらなかった。
「緊張してる?」
正直に頷くと、ターボーは隣に腰を下ろす。
「俺もだよ」
「え?」
「ちょんまげ相手だと余計に」
指先がそっと触れる。
昔、一緒に遊ぼうと手を引っ張られたときと同じ大きな手なのに、今はまるで意味が違う。
「嫌なら、やめる」
真剣な目で言われて、ちょんまげは首を横に振った。
「……嫌じゃない」
寧ろ触れてほしいと思っている自分がいる。
ターボーはゆっくりと距離を縮め、そっと唇を合わせた。
「大事にするから」
その言葉通り、急ぐことはなかった。
キスも、抱きしめる腕も、すべてが確かめるように優しくて。
ちょんまげのこわばりは少しずつほどけていった。
不安よりも、安心のほうが勝っていく。
好きな人の体温に包まれることが、こんなにも心を静かにするなんて知らなかった。
――その夜、ちょんまげは初めて誰かに全てを預けた。
朝。
カーテンの隙間から差し込む光で目が覚める。
隣には、まだ眠っているターボー。
無防備な寝顔を見て、胸の奥がじんわり温かくなる。
「……おはよう」
小さく呟くと、ターボーがうっすら目を開けた。
「ちょんまげ?」
「うん」
「逃げてないな」
冗談めかした声に、思わず笑ってしまう。
「逃げないよ」
そう言うとターボーは安心したように笑って、もう一度ちょんまげを引き寄せた。
子どもの頃から見慣れていたはずの相手がまるで違って見える。
大人の恋は、思っていたよりもずっと甘くて、温かい。
ターボーの胸に頬を預けながらちょんまげは静かに思う。
これから先も、こうして同じ朝を迎えられますように、と。
END
コメント
5件
嫌なことあったけど たぼちょん最高すぎて幸福
ドキドキと甘いのと、緊張してるちょんまげをリードしてあげるターボーがスパダリでキュンキュンしましたー!ありがとうございますー!!!