コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
実際、この時代の放浪者でスリーマンセル以外の形を取っているのは、西の果て、古い時代にアメリカと呼ばれていた大陸で行動している『冒険者ギルド』と呼ばれる組織だけであったが、通信手段を失って、その存在すら知る由も無い、レイブやバストロには無関係の事である。
彼らにとって、放浪者とは『魔術師』『闘竜』『獣奴』この三種が誓い合って助け合う、スリーマンセル、それだけだったのである。
因みに師匠であるバストロのチームメンバー、赤竜ジグエラとジャイアントボアのヴノは、彼を拾い育て上げた先代の魔術師、グフトマが最後の弟子の独り立ちに合わせた様に、齢(よわい)僅(わず)か三百四十を目前にして身罷(みまか)り、自然引き継いだ仲間達、スリーマンセルであった。
しらっと言ってしまったがこの時代のヒト族の寿命は長くて五十年である。
しかし例外的な存在はあんまり居ないが結構居るのが世の常なのだ。
もうお分かり頂いた事だろうが、敢えて言おう、魔術師となったヒト族は滅茶苦茶長命になるのである。
魔力の制御が関わっているのか、はたまた限界知らずに鍛え捲った全身の筋肉が脳内や心筋の活動にまで影響を及ぼした結果かどうかは定かでは無いが、魔術師と呼ばれる男女は揃って五百年位は普通に生きている。
有名な例を出せば、前世紀に亡くなったアレスタとか言う女性の魔術師は軽く千二百歳を越えていたらしい。
俄かには信じられないだろうが、本当の話である、信じて貰うしかないのである。
んまあ、多少脱線してしまったが、長い魔術師、いいや放浪者の歴史の中で、試行錯誤を経て確立されたスリーマンセル、三人組をレイブとギレスラは、出会って程無い黒い猪、レイブ自身が名付けたばかりのペトラと契ってしまったのである。
事の重要度を理解出来て無いのか? うん…… 間違いないな、判っていないようだ、と言うか考えても居ないだろう、揃ってヘラヘラした馬鹿っぽい笑みを浮かべてお互いの顔を見合っている、レイブ、ギレスラ、ペトラであった。
沈黙を破ったのは、巨大なジャイアントボア、ヴノである。
『いやしかし、こりゃ弱ったのぅ、娘に何と説明したら良いものかのぉ~、いやはや……』
バストロも何かを思い出したのか、顔面を蒼白に変えながら続く。
「あっ! そうかぁ! やばいよな…… キャスのヤツに何て言おう…… 怒るぞ、アイツ…… ぶるるっ」
娘? キャス? 誰それ状態なレイブはキョトンとしているギレスラとボーっとこちらを眺めている門外漢っぽいペトラを代表して口に出す。
「えっ? 何か問題あるの? ヴノ爺さんの娘? それにキャスさん? って一体誰なのぉ?」