放課後。図書室奥の目立たない席。きっかり2時間だけ。
彼女はいつも本を読んでいる。
ジャンルは決まっていない。
昨日はSF小説。
一昨日は料理雑誌。
その前は….なんだっけか。
今日はありふれた恋愛小説を読んでいるようだ。
僕は彼女の斜め前、いつもの場所に腰掛ける。
今日手に持っているのはSF小説だ。
昨日は料理雑誌。
一昨日は…あぁ、あの推理小説だ。
明日はきっと恋愛小説を読むのだろう。
僕は彼女のことはあまりよく知らない。
知っているのは、本を読む時周りが一切気にならなくなること、長い黒髪がとても美しいこと、僕より一年長く生きていること。
…そのくらいだ。
3月になっても外はまだ小寒く、ストーブが付いている。
じんわり温かいこの部屋には、僕と彼女以外の姿は見えない。
明日になれば僕1人になる。
やっぱりあの恋愛小説を読むことはもうないかもしれないな。
視界の端で彼女が立ち上がる。
あぁ、もう2時間経ったのか。
いつも通り彼女が部屋を出た少し後に部屋を出る。
荷物を取りに入り口へ向かうと、荷物の上に一枚の紙切れ。
いつもと違う様子に首を傾げて中を読む。
「あの本は王道すぎて退屈だから、読まなくてもいいかもね」
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