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自創作月光

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自創作月光

1 - 第1話

♥

27

2025年12月19日

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バイトがなかなか決まらず途方に暮れていた帰り道、杠は電柱に貼られた一枚の古びたチラシに足を止めた。


「学生、未経験者大歓迎……レストラン月光で愉快な仲間と楽しく働きましょう……へぇ……って月給高っ!? ここなら……!」


思わず声に出しながら、杠は半信半疑で住所を検索する。案内された路地裏は薄暗く、どこか現実離れした空気を孕んでいた。


だが、その奥にぽつんと灯る看板には、確かにこう書かれている。


──レストラン月光。


おそるおそる扉を開けると、柔らかなランプの灯りが落ち着いた店内を照らし出した。カウンターの奥から現れたのは、両目を白い包帯で覆った女性だ。


「いらっしゃいませ。どうぞ、お好きな席へ」


不思議な容姿のはずなのに、どこか安心させる声だった。


すすめられるまま席に座り、料理を口にした瞬間、杠は言葉を失う。夢中で食べ終えると同時に、胸の奥がふっと軽くなるような感覚があった。


「えっと……僕、求人広告を見て……」


「そうでしたか。申し訳ございません。食器を片付けてまいりますので、少々お待ちください」


店長と名乗った女性は柔らかく微笑む。食器を下げると、穏やかな声で言った。


「長くなりますので、詳しいことはまた明日お話しいたします。学校終わりでよろしいので、もう一度ご来店ください」


(……あれ? 僕が高校生って言ったっけ?)


奇妙な胸騒ぎを抱えながら、杠は礼を言って店を出た。


翌日。

遊びの誘いを断り、杠は急ぎ足で月光へ向かった。


「よし……採用されるようにがんばるぞ」


気合を入れてドアを押し開けると、昨日とは打って変わって妙に騒がしい。カウンターでは痩せ型の男が椅子を回転させながら鼻歌を歌っていた。


「お客さーん? どうぞお好きな席へ〜」


にこにこした顔は人懐っこいのに、どこか底が知れない。杠は背筋を伸ばす。


──見覚えがある。


「……あ、思い出した」


春夏冬サグメ。

奇抜な感性でテレビにも頻繁に出る人気小説家だ。

本人を前に呆然とする杠をよそに、サグメは水差しを置きながら朗らかに言う。


「こちらお冷やでございまーす」


「……」


「どうしたの? 顔、青いよ?」


軽い声なのに、どこか背筋が冷える。


だって──春夏冬サグメは三年前に…


「えっと、求人募集を見て……」


「あぁ、昨日ヒカリさんが言ってた。ちょっと待ってね」


サグメが立ち上がると、厨房の奥の扉が開いた。


「やっほー!」


現れたのは中性的な子ども。手にはシャベル。


「……え? 子ども?」


「お客さん? こんにちは!」


シャベルをぶん、と振り回す。金属音が響き、杠は慌てて身を引いた。


「ちょ、ちょっと待って!? なんで武器持ってるんですか!!」


「武器じゃないよ。愉快さんって呼んで!」


「余計怖い!!」


昨日はただの隠れ家レストランだと思っていたのに。


「……やばい店に来ちゃったかも」


逃げたい気持ちを押し殺し、杠はソワソワと椅子に座る。


そのとき、サグメが戻り、伝言を伝えた。


「ヒカリさんがね、ツクヨミって人が来るまで待っててほしいって」


(ツクヨミさん……どんな人だろう。怖くないといいけど)


「ごめんね、待った?」


裏口の扉が開き、若い男が姿を見せた。左手と右足を骨折し、右手には杖。それでも隠しきれないカリスマ性がある。


「ツクヨミさん……ですか?」


「あぁ、そうだよ。こんにちは、杠さん。こちらへどうぞ」


柔らかな声。そしてこの怪我の量。杠は心の中で「いやいやいや」と三度唱えた。


コトン、と杖の音が落ちる。


「杠くん、少し話をしようか」


「は、はい」


ツクヨミはソファに腰掛け、落ち着いた笑みを浮かべた。


「ここでやってほしいことは一つ。お客さんを喜ばせること、満足させること」


「はい」


「一般の人手が足りなくて困ってたんだ。助かるよ」


(……一般? 一般って何だ?)


杠の混乱を見透かしたように、ツクヨミは優しく笑った。


「ようこそ、レストラン月光へ」


「……はい!」


そして、ふっと声色が変わる。


「ところでユズリハくん……君、戦える?」


「……は?」


杠の思考が一瞬停止する。


「ご、護身術とかってことですか……?」


「まぁ、戦えなくてもいいけどね。君は一般人でしょ? この店、結構刺激強いと思うんだ」


「へ……?」


そこへ、サグメがひょいと横から口を挟む。


「まあまあ杠くん、肩の力抜きなって。ここ、探偵事務所も兼任してるんだよ。みんなリンクスで構成されててね、戦う探偵事務所として評判いいの。探偵というより何でも屋だし、簡単簡単」


「採用後に言わないでくださいよ!!」


ツクヨミは苦笑しながら続ける。


「食事も楽しめて、依頼も解決。これが月光の仕事だよ。言い忘れててごめんね」


「今さら辞められないですし……やりますけど……」


「いい子だね」


(……なんなんだこの店……ただ働きたいだけだったのに……)


「明日からよろしくね、ユズリハくん」


「は、はい!」


普通のレストランじゃなかった事実に震えつつ、

杠はもう、うっすら辞めたいと思っていた。


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