テラーノベル
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エデン仮アジト――。
静かな部屋。
誘拐された社長の娘は、椅子へ座りながら小さく震えていた。
「……。」
涙が止まらない。
グラビティは部屋の入口で腕を組み、静かに見守っている。
ゲイルも珍しく口を閉ざしていた。
ブレイブは少女を見つめ、小さく呟く。
「本当に……これで良かったんでしょうか。」
ヴォイアントが静かに部屋へ入る。
少女は怯えた表情で後ずさった。
「来ないで……。」
ヴォイアントは一定の距離で足を止めた。
「安心しなさい。」
「君に危害を加えるつもりはない。」
少女は震えた声で尋ねる。
「……どうして私を連れてきたの?」
ヴォイアントは静かに答える。
「世界を変えるためだ。」
「そのために、君のお父さんには選択をしてもらう。」
少女は涙を流しながら首を振る。
「分からないよ……。」
「パパは悪い人じゃない……。」
その時だった。
ポタッ……
少女の涙が床へ落ちる。
次の瞬間――
パァァン!!
透明な光が少女を中心に広がる。
半球状の結界が少女を優しく包み込んだ。
グラビティが目を見開く。
「これは……。」
ゲイルが思わず一歩下がる。
「結界能力か。」
ノイズも端末から顔を上げた。
「能力が発現しました。」
少女自身も驚いていた。
「何……これ……。」
ヴォイアントは結界を静かに見つめる。
「恐怖が引き金になったようだ。」
「まだ未熟だが……。」
一瞬だけ目を細める。
「……そうか。」
それ以上は何も言わなかった。
ブレイブだけが少女へ優しく声を掛ける。
「大丈夫です。」
「僕たちは、本当にあなたを傷付けるつもりはありません。」
少女は涙をぬぐいながら、小さく頷いた。
-–
能力犯罪総合対策本部。
作戦室。
御堂鷹臣は机へ拳を置いていた。
「私の責任だ。」
誰も口を開けない。
篠宮玲司が静かに報告する。
「全国へ緊急配備を要請しました。」
「各都道府県警とも連携を開始しています。」
御堂は静かに頷く。
「必ず助け出す。」
その声には強い決意が込められていた。
-–
東洋未来ホールディングス本社。
社長はソファへ座ったまま動かなかった。
机の上には家族写真。
写真へ手を伸ばす。
「必ず迎えに行く……。」
その瞳には涙が浮かんでいた。
-–
翌日。
学校。
事件は日本中で大きく報道されていた。
「社長令嬢誘拐事件。」
教室中がその話題でもちきりだった。
神童がニュースを見つめる。
「とうとう子どもまで巻き込んだか……。」
小春も複雑そうな表情を浮かべる。
「でも……。」
「エデンは危害を加えないって言ってたよね。」
湊は静かに答えた。
「誘拐された時点で十分傷付いてる。」
「どんな理由があっても、許されることじゃない。」
昼休み。
三人は中庭へ向かった。
すると、一匹の野良猫が小春へ近付いてくる。
「ニャー。」
小春はしゃがみ込み、優しく微笑んだ。
「こんにちは。」
神童は苦笑する。
「また動物と話すのか。」
湊も静かに見守る。
小春は猫へ尋ねた。
「昨日、泣いている女の子を見なかった?」
猫は少し考えたあと答える。
「見たニャ。」
小春の表情が変わる。
「本当?」
猫は尻尾を揺らす。
「黒い車。」
「鉄のにおい。」
「大きな建物。」
「海の近くだったニャ。」
小春は真剣な表情になる。
「海の近く……。」
湊も考え込む。
「廃工場かもしれない。」
神童が腕を組む。
「かなり範囲は広いけど……。」
「何もしないよりはいい。」
三人は顔を見合わせた。
-–
その頃。
研究室。
博士はニュースを見つめていた。
「蓬莱……。」
「とうとう、ここまで来たか。」
静かに目を閉じる。
-–
エデン仮アジト。
グラビティが報告する。
「任務は完了しました。」
ヴォイアントは静かに頷く。
「よくやった。」
「これからが本番だ。」
少女はヴォイアントを見つめる。
小さな声で尋ねた。
「……あなたたちは。」
「悪い人なの?」
部屋が静まり返る。
ヴォイアントは少しだけ考え、穏やかに答えた。
「その答えは。」
「君自身が決めればいい。」
少女は何も答えられなかった。
その透明な結界だけが、静かに揺れていた。
第50話へ続く
コメント
1件
第49話、読み終えました。タイトルの「聖域」が、ラストの少女の結界と重なってとても印象的でした。恐怖が引き金で能力が発現する瞬間、ヴォイアントの「その答えは君自身が決めればいい」という台詞が、あの場面で善悪を押し付けずに読者へ委ねる形になっていて、すごく考えさせられました。小春が猫から情報を引き出すシーンも、この世界の設定を活かした自然な伏線で好きです。続きが気になります。
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あまね🍡💠
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