TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

一覧ページ

「〜ぼっちの月の神様の使徒〜」のメインビジュアル

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

160 - 160話 さようなら。普通の生活。あれ?元々普通じゃなかったな。

♥

8

2024年03月18日

シェアするシェアする
報告する




「で?どうすればいいんだ?」

俺は今、帝都に来ている。

「簡単だよ。いつも通り魔法をぶっ放すだけでいいからね!」

聖奈さんはどこかで見た男の子を連れている。

恐らく捕虜にした皇族の一人だ。


あの後、俺はすぐに立ち上がった。

グズグズしていたらバーランドに合わす顔がないからな。

それからは元帝国平定に向けて動いていた。


「ここで魔法を使ってね」

俺は聖奈さんの指示通りに、空へ向けてフレアボムを放った。


ドーーーンッ


辺りは騒然としてこちらへと視線が集まったところで、聖奈さんはカイザー様から借りてきた拡声の魔導具を使い帝都民へ告げた。


『今回の戦争に帝国は敗れました。あなた達の皇帝はナターリア王国に捕らえられています。

直に処刑される事になるでしょう』


周りはそれを聞いてまたも騒つくが、聖奈さんと俺の間にいる皇族を見て、俺達の話に真実味を見つけた。

ちなみにここは帝都の広場にある教会の屋根の上だ。

目立つ事この上ない。


『今!あなた達は歴史の目撃者となる!

こちらに座すは、先の戦争で三国の英雄となったセイ様。

その右手を振りかざすだけで五万の兵を葬り、左手を翳すだけで癒しを与えたお方である!

見よ!奇跡を!』


(ほらっ!何か凄い魔法だよ!)

急に演劇口調になった聖奈さんが俺に魔法を撃てと言ってきた。

仕方ないので空中に・・・

ファイアウォール火災トルネード旋風

魔力特盛で盛大な炎の竜巻を帝都上空へと放つ。

距離はあるが、焚き火の近くに行くくらいの熱さを帝都民は感じ取っただろう。


『これが私達の主の力である!

ここから逃げ出す者、敵対する者には容赦なくこの力をぶつけることであろう!

しかし!私達の主は前皇帝とは違い、非常に慈悲深いのである!

前皇帝は自分の望みの為に貴方達民から搾取し、犠牲にした!

さらには戦争に駆り出して、多くの国民の命を散らせた大罪人!

その戦場で帝国軍を撃破したのがここに座すセイ様である。

セイ様の力を以てすれば帝国軍を全滅することが出来たにも拘わらず、騙されている軍人に罪はないとして、多くの帝国軍人を逃がしました。

そんなセイ様は力で私達を従わせることが出来るにも拘わらず、ただ国民となるだけで、セイ様の力を使い、この帝都は…いや!帝国全土に富と平和、そして幸福をもたらしてくれると仰られた!

逆らう者は剣を持て!逃げ出す者は動け!

セイ様をこの国の国主として認め、幸せを手に入れたい者は拍手と喝采で示せ!』


うん。力での弾圧だね。ただの脅しじゃん。


『セイ国王陛下万歳!新生バーランド王国万歳!』


くっ…ここでバーランドの名前かよ……

聖奈さんに新しい国の名前に良いのがあると聞いていたが、名付けだけは向いていないから期待していなかったが……ありがとう。

「うぉぉおお!新国王陛下万歳!」

「悪き皇帝を倒してくれてありがとう!」

聖奈さんの声に続いてあちらこちらから声が上がった。

そこからは元帝都中に歓声と拍手が鳴り響いた。

もちろん仕込みだ。

王都と水都から来てくれる人を募り、前もって少しずつ転移させていた。

同調圧力を利用したものだけど、元々帝国は力で支配していた。

支配されることになれた国民は、日本人より同調してくれた。

俺や聖奈さんに大衆を導くカリスマはない。

聖奈さんにあるのは人を追い込む才能だ。

「何か失礼なことを考えてない?」

どうやら心を読む力も身につけ始めたようだ。

気をつけよう。






「それで、この後は?」

もちろん例によって俺には何も伝えられていない。

場所は帝城跡地だ。

民衆への顔見せを終えた後は何をするのか聞いていないので、一々確認する。

「ここに城を築くよ。それとセイくんは帝都の下に来ている元帝国軍に顔を見せてあげて」

城を建てるのかよ……

帝国軍に顔を見せるのは支配下に置けという意味だな。軍さえ掌握すれば後は任せたらいいもんな。

「俺の事を覚えているかな?」

「セイくんのことは覚えてなくても、魔法は覚えているでしょ?

頑張って恐怖の大王を演じてきてね」

拡声の魔導具と台本を預かり、元皇子と共に帝都の外(崖の上で城壁の外)へと転移 た。

ドーーーンッ


フレアボムが帝都の下の大地で爆発した。


『聞け!帝国軍よ!帝国は滅びた!先の魔法を見たであろう!此度の戦争でお前達を焼き尽くした炎だ!

私は此度の戦争の功績により、エンガード王国、ナターリア王国、ハンキッシュ皇国の三国会議により選ばれた、この地の新たな王である!

お前達は一度私に剣を向けた!だが、それは水に流そうではないか!

私は敵対する者に容赦はしないが、味方は必ず守る!

よって!ここで決めるのだ!敵対するか、手を取り合うのかを!』


俺は長い台本を無事に読み切り、最後の仕上げに移る。


『まだ迷っておるのかっ!!

では、今一度思い出させてやろう!あそこを見よ!』


俺はアリンコの様に見える帝国軍の塊とは離れた何も無い荒野を指し示した。


『アイスブロック』


ドゴーーーーンッ


「ひっ!?」

横の元皇子がビビっているが、お前じゃない。

ビビらせたいのは帝国軍だ。

砂塵が収まると・・・


『さあ!私の元へ来て共にこの国を盛り立てていこうという者は、私の名を叫ぶのだ!』


「セイ新王万歳!」

かなり距離はあるものの、その声は次第に大きくなってきた。


『良いだろう!共に歩むぞ!軍の上位者100名は帝城跡地にくるがいい!

その他はその場で待機だ!』


「「「「「はいっ!!!」」」」」

ここへ帰ってきていたのは凡そ10万。

どこの戦地に居たのかは不明だが、これからさらに数は増すだろう。

こんな演説、もうしたくないんだけど……

遥か下からこちらを見上げる兵士達の前で、俺は転移した。






「わかったかな?」

聖奈さんが軍のお偉いさんに向けて指示を出し終えたところだ。

ちなみに俺は元皇子を水都に送ったりしていた。

聖奈さん曰く、ここまで脅せば私一人をどうにかしようとなんて思わないから大丈夫とのことだったが、本当に大丈夫だったようだ。

「大丈夫そうだな。それでどうなった?」

「大丈夫だよ。彼らからしたら戦争から戻ったら城がなくなっていて、それをしたのがセイくんだと伝えたら心はボロボロだよ!

それでも歯向かうくらいの気概があれば、帝国もこんな事にはなってなかったんじゃないかな?」

辛辣ぅぅ!

「この後は彼らには布告をしてもらうことにしたの。

元帝国全土に対しての布告は流石に人手がいるからね。

後、残っている貴族に対しての抑止力にもなるし、放っておいてもセイくんの話は広まるだろうね」

「城はどうするんだ?まだこれから帰ってくる軍を使うのか?」

「勿論手伝って貰うけど、城が出来るまで時間がかかるよね?」

「そりゃそうだろ?多分何年も掛かるんじゃないのか?」

この世界の建築期間なんてわからんけど、ほぼ人力なら何十年とかかるんじゃないか?

「そこで城を囲む堀は残っているからその内側に城壁を作りたいの。お願いできるかな?」

「いや、俺は何でも屋じゃないぞ?そんなもの作ったことないし…」

「それは石造りだからでしょ?そんなの無理だよ。もっと便利で簡単な物があるの」

その後、聖奈さんから受けた説明に俺はそれなら出来るなと思い、取り掛かることにした。

この方法なら兵士の仮設住居になるな。夏は住めそうにないけど……



夜になり、俺は地球へと転移した。


聖奈さんから言われた所に行くために車を走らせた。

向かうのは港。港といっても世界中の荷物が集まる様な所だ。

港へ着いた俺は聖奈さんから渡された許可証(?)を管理している人に見せて、とある一画へと向かう。


そこには・・・


「いったい何百のコンテナがあるんだ…」

綺麗に整頓されて積み上げられたコンテナの中身は……

空だ。

目的は空のコンテナ。

これを城の城壁として使う。

聖奈さんは今回の戦争が始まると、その後のことまで準備していた。

むしろ戦争は俺がいれば問題ないから終わった後のことばかり考えていたらしい。

まぁ俺は何も考えてないけどな!

何、考えていなくても臣下が準備してくれるのだよ!はっはっはぁ……

くっ…こんなはずじゃなかったのに……


俺の異世界生活の予定が、いつの間にか大幅に変更されたことを嘆きながら、転移しまくるのだった。

loading

この作品はいかがでしたか?

8

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚