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大量のコンテナを転移して並べ終えたところで、聖奈さんが話しかけてきた。
「ここまで綺麗に並べると、コンテナでも壮観だね」
「そうだな。大雑把に転移させた後は人力で微調整したけど…上手くいったな。
ところで、コンテナって安くはないよな?」
コンテナは幅2.3m高さ2m長さ6mくらいのものだ。
それを2段に重ね入り口以外は塞いで、城の堀を一周した。
下は堀になっているから外からだとかなりの高さになる。
結局全部で1500個くらい使った。
「コンテナは一つ2万円だよ!中古でもここまで安いのはないからお得だったよ!
普通は5万〜10万くらいするみたいだね。大量買いするからって値切ったんだ!
向こうも数には驚いていたよ」
「あぁ。それで俺に帝城の大体のサイズを聞いてきたんだな。
でも、帝都民がここを片付けてくれていて助かったよ。
まだ崩れずに結構残っていたからな。城も城壁も」
特に城壁は爆風によって堀の方へ傾いたりしていたからな。
中途半端に壊れるのが片付けは大変なんだよな。塀は内向きには強いけど中から外へ向かう力には弱いんだよな。
「それはセイくんの手柄だよ」
「俺の?何もしてないぞ。それはいつもだけど…」
「ふふっ。セイくんが助けてあげたおじさん達が帝都民を指揮して片付けをしてくれていたみたいだよ。
使えそうだから内政官として雇ってもいいかな?」
おじさん?
ああ!皇帝を捕まえた時に見逃してやったおっさん達か!確かにあの人達なら権力や強い者に逆らいそうにないからいい人選かもな。
「好きにしてくれ。それでコンテナを兵士達に解放するのか?」
「うん。ホントは上の段の為に梯子を準備したかったけど、それくらいは自分達でしてもらおうね。後、中もね!」
そう。コンテナは別にコンテナハウスではない。
多分中はそこそこ臭いし、何も入っていない。
明日にでも換気窓を作ってやらないとな。
その日はそれまでとして俺達はリゴルドーへと帰った。
翌日からは帝都で過ごす事になった。
家はまだだが、聖奈さんがコンテナハウスを頼んでくれていて、それが今晩までに会社に届くことになっていた。
もちろん人数分の広さはあるみたいだ。
そして王都(元帝都)復興をしながら、各地の情報を集めて過ごした。
「いけぇっ!!全軍突撃ぃ!!」
ここはバーランド王国にある、とある領地。
正確には王国に組み込まれることを拒否した領地だ。
ぽっと出の俺達に従えないって理由も存分にあるが、どうやら自分が最大の権力を握りたいだけの奴らしい。
これもおっさん達情報だ。
ちなみに俺は勝手に即位した。
この国の貴族が認めなくとも、周りの国が認めた形だ。
もちろん周りの国が出した条件の一つは国の平定だから、こうしてあくせく働いている。
即位の為の神器のようなものはおっさん達が城跡からちゃんと回収していた。
まさか、持ち逃げしようとしてなかったよな?
まぁただの装飾過多な古びた剣とかだったけど。
『フレアボム』
俺達の要請を拒否した領地へ俺は兵を向けた。
こう言えばカッコいいけど、実際は聖奈さんに言われて仕方なく動いていた。
フレアボムが直撃した外壁は脆くも崩れ去っていく。
「陛下に申し上げます!伯爵領軍降伏しました!」
「わかった」
こんなに簡単に降伏するなら歯向かうなよ……と言いたいけど、訪れた王国兵の言葉を全ては鵜呑みには出来んよな。
『戦争を一人で終わらせた魔王』として各地に報せを走らせたけど、実際に自分の目で確かめない限りは信じられないのはわかるよ。
『山程もある氷を空から降らせた』
『火山の噴火かと見間違える程の爆発魔法を連発した』
『目に見えない鉄の礫を連射した』
うん。嘘にしか聞こえん。
そんな事情もあり、国内を方々旅している。
ついでに調査と転移ポイントを増やす為にも。
転移ポイントっていうけど、行ったところ…通ったところに目に見えない自分の痕跡のような物が残るイメージだ。
最初は見た所なら行けるくらいにしか感じなかったけど、今では自分の魔力痕のようなモノを頭ではなく魔力が覚えているイメージだな。
もちろん見える所にも転移できるからそれだけじゃないんだろうけど。
ここに来て魔法が身に付いてきたんだけど、状況は変わってしまったからなぁ。
早く旅がしたい……
あれ?いつか出来るよね?まさか出来ない?
「どうだった?」
コンテナハウスに戻ってきた俺に聖奈さんが聞いてくる。
ちなみにライル達は王都内に新たな店をつくる為に奔走している。
「少し手こずった場所もあったけど、問題ないな」
「セイくんが手こずったの?」
「ああ。フレアボムを撃ったら1撃目はくらったが2撃目を防がれたんだ。
気になったからどこまで防げるか試したけど、5発目から防げずに6発目で降参したな」
「どうやって防いだの?」
「多分障壁系の魔法だな。一人で使っていたのか集団で使ったのかもわからんかったけど、問題ないから調べなかった」
ずっと張っていられるものではないのだろう。
それなら1撃目を被弾した意味がわからんからな。
それに物理攻撃力に全振りしたアイスブロックとかは防げなさそうだったし。
被害がデカいから試す気にもなれなかったけど。
「まぁセイくんが人間に、それも集団戦で負けるわけないもんね。負ける時は搦手だね。
泣いてる子供が暗殺者だったり、毒を盛られたり、ハニートラップだったりだね!」
うん。貴女になら簡単に殺せそうだね?やめてね?
「だがこの世界は個人の強さがモノをいうからな。まだ見ない強者にアッサリやられる事はあると思うぞ」
「セイくんをアッサリ倒せる人が無名の訳ないからなさそうだよ?
どっちにしても王族に正面から喧嘩売る人なんていないよね。
それにこれからは兵が肉壁となり守ってくれるから大丈夫だよ!」
やめて…そんな事をされても嬉しくないから。
「明日で反抗している領地周りは終わりそうだね!
お城の工事も取り掛かっているし、順調そのものだね!」
「いや、何も順調じゃないぞ。俺の冒険がまだ未定だ!」
「何いってるのよ。
セイくんはこの世界では覇王になって、地球では経済界のドンになるんだよ!」
えっ…なんですかそれは?
あれ?俺って何が目標だったっけ?
ハーレム欲が薄れてしまって、目標がフラフラしているな。
俺達がアホな事を言っていると、ライル達が帰ってきた。
「やっぱりこの家は違和感だらけだぜ…」
そう漏らすライルの気持ちはわかる。
鉄の箱に屋根にはソーラパネル。
中はソファとテーブル以外は地球産のもので、テレビまで置いてある。
テレビは主にDVDを見たりゲームをしたりだ。
「私は好きですよ?特にゲームが楽しいですね」
「それはミランが強いからよ…私はセイさんが作ってくれた露天風呂がいいわ」
「二人ともまだまだです!ここのいい所はお菓子の戸棚に鍵がないことです!」
ミランは意外(?)にもゲームにハマってしまった。目が悪くならないといいけど。
マリンの言っている露天風呂は聖奈さんに頼まれて作った。
作り方は雑にスコップで掘ってセメントのようなモノで固めただけ。お湯は魔導具だ。
エリーは…またおやつ抜きにされるだろう。学べよ……
「此度はこの様な大勢の人々が息子の告別式に参列してくれた事、嬉しく思う。
第一王子であるバーランドは、いつも国や家族のことばかり考えている男だった。
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を以て挨拶とする」
エンガード王国王城のバルコニーにて、参列者に感謝の挨拶と息子への惜別の言葉をエンガード王が紡いだ。
今日はバーランドのお別れ会だ。
告別式といってもバーランドの遺体はすでに埋葬されている。
平民であれば死ねば3日くらいで告別式を行うが、王族ともなれば別だ。
国中から貴族や豪商が集まる為、開くのに猶予が必要だからだ。
もちろん外国からも人が来る。
そうなると亡くなってからひと月以内に開く事が出来ない。
俺も参加しているが、王族の告別式はあくまで外交の一種だ。
バーランドの埋葬の時に、本当の別れはちゃんと済ませておいた。
「セイ…いえ。バーランド国王。
此度は兄の告別式に参列くださり、ありがとうございました」
「アンダーソン王子。
勝手に兄の名前を使ってしまい、申し訳ない」
「いえ。兄も喜んでいることでしょう。
そして何よりも、私達家族が一番喜んでいます。
兄の名は永遠に歴史に名を刻んだと」
相変わらず出来た王子だこと。
アンダーソン王子に婚約者が決まれば、そこで王太子に指名するとエンガード王がいっていたな。
アンダーソンが跡取りになればこの国は安泰だ。
「そう言ってもらえて助かる。
バーランドの手紙に記されていたことでもあるが、これからも仲良くしてくれ」
「もちろんです。私の手紙にも同じことが書かれていました」
ここでは立場上この口調だけど、プライベートではフランクに喋りたいな。
死んでも尚、人を繋ぎ合わせるバーランドはやはり出来た人だったんだな。
酒を酌み交わすことは一度たりとも出来なかったけど、これからは晩酌の度に思い出すよ。
月の神様と共に。
〓〓〓〓〓〓〓〓後書き〓〓〓〓〓〓〓〓
第一部ということは…ええ、そうです!
第二部があるということです!
間話ssの後から始まります。
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