〈べる視点〉
…あの日から一ヶ月が経った。
凸さんは2週間ぐらいは部屋に籠もりっきりだったけど、今では部屋から出てきてくれるようになった。
…少し立ち直れたんだね!ってこの文だけではそう思うかもしれはいけど
真逆、凸さんの状態は悪化していた。
目は虚ろで、リビングとか部屋とか…地面に座り込んでぼーっとすることがほとんどだった。
私が話しかけても反応が無く、ご飯もあまり食べていない。
流石にヤバそうだから、精神科でも連れて行こうかなと思ったんだけど…凸さんの腕を掴んだら、今までの無気力さが嘘のように物凄く強い力で振り解いてきた。
…うたいさんはニグさんの家に居て、凸さんは私の家に居る…
………二人の家は、今は誰も居なくて、冷たいままなんだろうな。
〈ニグ視点〉
………消えたい。
だって俺が居なかったら、うたいさんは俺を好きになることなんてなかったんだから。
俺は毛布に包まり、ベットの上でスマホをいじる。
ネットの検索履歴には、『記憶喪失について』『記憶喪失 治し方』などの記憶喪失に関することが並んでいる。
…俺が仮に今消えたら、うたいさんはどうなるんだろ?
目を瞑り、想像してみる。
うたいさんが地面に泣き崩れて、泣き叫ぶ姿。
叫び声までも鮮明に想像できて、俺は慌てて飛び起きる。
1分も立っていないのに、俺の身体は冷や汗でいっぱいだった。
…そうだ。もし俺が居なくなったら…
うたいさんは2度も最愛の人が傍から消えることになる。
例え、凸さんのことを思い出せなくても…
凸さんと別れて、あそこまで心が壊れたうたいさんは…
俺がこの世から居なくなれば、2度と立ち直れない。
…え、じゃあ俺は、どうしたらいいんだ…?
…三角関係。
漫画とかドラマで散々見た光景を、まさか俺が経験することになるなんて、思いもしなかった。
…あ、もうこんな時間だ。
夕飯、作んないと…
コメント
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続きありがたい…みんな暗い雰囲気になってきてる気がする…