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今日という今日がこのまま長く続けばいいのにな…。
昨日入部したばっかりなのに明日からもう本格的に練習が始まるなんて、時の流れの早さに恐怖を感じた。
ちなみに私は今音楽室にいる。今日は学校が短縮授業で掃除もあるのだが私のいる班が今日掃除がお休みだったので、掃除の子より早く部活に向かった。私が音楽室に着いた時は誰もおらず、ポツンと置いてあった椅子に座った。椅子を動かした時のキィキィという音と椅子の足から繋がっているフレームの剥げた色を見るとなぜか懐かしく感じてしまう。また、この椅子はとても座り心地が良い。私は先輩達が来るまで図書館で借りた数冊の本から星空の表紙が描かれている小説を手に取り読んだ。
私は高校に入るまで本を読んだことは滅多に無かったのだが、高校に入ってから、中学とは圧倒的な種類豊富の本に驚きを隠せずにいた私はいつの間にか図書館常連者になっていた。初めの1ページを開いたその瞬間…。
バーンッ!
「おっはよーうごさいまーす! 」
突然音楽室入口の扉から大きな声が聞こえた。私は驚いて声の方に顔を向けると。お団子ヘアにカジュアルな焦げ茶のメガネをかけている先輩が居た。その先輩が私を見て
「あれ?1人?」
「あ、はい」
私が言うと先輩は、荷物を近くにあった椅子に置き私に近づいてきた。
「あれ、真由ちゃんって小説読むんだ。それなんの本?」
先輩が私の手元にある本を見て聞いた。
「中学では本読んだこと無かったんですけど、高校に入ってから読んでみようと思って借りてみました。」
「いいじゃんいいじゃん!最高!」
先輩は元気よく私に言ってくれた。
「ありがとうございます。」
私が言うと先輩は突然私の目線に合わさて姿勢を低くした。
「ねぇ、私の事わかる?」
「え??」
「私だよ?わたし」
「えぇぇ??」
「分からないの?トロンボーンの松山ひかるだよ。」
「え、そうなんですか?分からなかったです。というかお団子ヘアでしたっけ?あと眼鏡買ったんですか?」昨日とは打って変わって雰囲気がガラッと変わっていたから音楽室に遊びに来た先輩だと思ったがまさか松山先輩だったとは。
真由の問いに先輩は前髪のサイドのアイロンで巻かれていた触覚をくるくると回しながら言った。
「あーお団子ヘアは今日雨だったじゃん?朝起きた時は降ってなかったんだけどね、通学途中にいきなり降ってきちゃって。今日偶然傘持ってきてなくて最寄り駅で降りたあと走ってきたんだよね。おかげで靴下濡れて気持ち悪いし、髪濡れたし。だからお団子ヘアにしたんだ。眼鏡はね私元々眼鏡つけるの忘れててそのなんか無くしたの笑笑それで昨日はコンタクトで行ったんだけど、昨日学校の準備しようとしたら、ブレザーのポケットに眼鏡が入っててね。見つかったからかけてるの。にしても真由ちゃんも濡れた? 」
先輩の問いに私は軽く頭を横に振った。
「今日はなんか早く来たい気分だったので、1本早い電車に乗って学校行きました。今日曇り予想だったらしいですけど、学校着いて数分後にいきなり雨が降ってきてビックリしました。」と言って笑った。
「そかそか。早く来るのいい事よね。朝早く学校行くとか真由ちゃん真面目かよ。感心感心」と先輩は頷いた。
「いえいえそんな。今日はたまたま気分でしたから。今日以外はほとんどチャイムなる数分前に着きますよ。」
「あ、そうなんだ笑笑」
「はい。」先輩は笑っていたが、私は静かに微笑んだ。
その時背後からガチャっと音楽室の扉が開く音が聞こえた。ロングヘアで前髪は韓国女子アイドルのように均等にセンター分けされており丁寧にアイロンが巻かれていた。
先生は音楽室にいる私と先輩を見て
「あら2人だけでしたか。まだ人は来ていないのですか?」と先生は聞く。
「もうすぐ来ると思います。掃除が終わった頃だと思うので。」落ち着いた口調で先輩が返す。
「あっそうだったわ。ごめんなさいね。もう掃除始まってたのね。」先生が言ったあと音楽室入って右側にあるアンプとキーボードが置いてある場所に向かった。
「今日は最初に合奏をします。我妻さんは初めての合奏だと思いますが、やり方や仕組みを中心に説明するので安心してくださいね。あと、全員が来た時にも言いますが、研究発表会が近づいているので、発表会で演奏する新譜も配りたいと思います。」
先生の言葉に私たちはゆっくり頷いた。
「あの、先生。研究発表会ってなんですか?」
「東部支部研究発表会のことですよ。ホールで演奏するんです。私たちだけでなく他校の演奏も聞けるいい機会ですよ!」
「なるほど、それはいいですね。ありがとうございます。」
「我妻さんは吹奏楽部に入ること自体初めてだったりしますか?」
「はい。今まで楽器をやったことがないんです。」
「そうなのですね。ここの部活の部員は初心者が多かったんですよ。」
「へぇそうなんですか。」
私は吹奏楽部に初心者として入部したが、先輩の中で初心者が多かったのは意外だった。私の隣にいるトロンボーンの松山先輩も雰囲気はとてもトロンボーンを上手に吹ける人だと思った。
「松山先輩はトロンボーン上手いんですか?」気づけば思ったことを口にしていた。
私の問いに先輩はスマホを操作している手を止め驚いた様子で視線を合わせると全力で手と頭を横に振った。
「いや全然!上手くないよ!?」
先輩の言葉に先生はくすくす笑った。
「何言ってるんですか松山さん。少しずつ上手くなってるでしょう?あなた自分でも自慢してたくらいですからね。」と彼女に視線を向けた。彼女に見えないように私を手招きするとあの子いつもああなるのよ。と彼女に聞こえないようにそっと耳打ちした。私は彼女に視線を向けると再びスマホを操作していた。
『こんにちは!』
その時音楽室から元気な声が聞こえた。見ると掃除を終えた先輩達がぞろぞろと音楽室に入って来た。
私は音楽室に入ってくる先輩に向かって1人ずつ会釈した。
「さて皆さん揃ったと思うので適当なところに座ってくれますか?」
と言うと私を含めた部員らは音楽室の中に散らばっていた椅子を少し列を整えて各自座った。
「では皆さん揃ったところなので。ミーティングお願いします。」
『はい!』
部長、副部長、副部長の3人の先輩が順番に私たちの前に立った。
「それではミーティングを始めます。出席確認です。フルート………」
喋っているのは私と同じフルートパート3年の小柴先輩だ。長めのポニーテールにきちんとセットされた前髪と触覚。部員の名前と楽器が書かれた名簿を読みながらいない人はいないかと確認していく。名簿から目をあげるごとに長めのポニーテールが少しだけゆらゆらと揺れる。
出席確認が終わり部長含めた3人の先輩が戻ると先生が言う。
「では、東部支部研究発表会で演奏する曲を配ります。パートリーダーは前に出てきてください。」
それぞれの楽器のパートリーダーが次々と先生から楽譜が渡される。
「うわ!音色の彼方じゃん!私これ大好き。」
「ほんとだ。音色の彼方ってすごくいいメロディーのある曲だよね。」
配られた楽譜を見てワイワイ話していたのはトランペットとユーフォの先輩だった。
「真由ちゃん、はいこれ。」
私が話し声に夢中だったのか同じフルートパートの小柴先輩が話しかけてくるまで気づかなかった。
「え、あごめんなさい。」
「大丈夫だよ。」
私は先輩から楽譜を受け取ると1番上に【音色の彼方】と書いてあった。その下にはflute thirdと書かれている。私は楽譜を見ながら先輩に聞いた。
「小柴先輩はこの曲知ってますか?」
「うーん、知ってるというかトランペットとユーフォの先輩が話してるの聞こえてたかもしれないけど、去年の東部支部研究発表会で私の知り合いがいる大塚高校の吹奏楽部で音色の彼方演奏してたんだよね。多分2、3年の多くは知ってるかもしれないね。」
「そうなんですか。」
先輩の知り合いの通う高校が音色の彼方を演奏してるということが驚きでもあったが、何より演奏できることにすごく感謝したいという気持ちがあった。東部支部研究発表会でこの曲を演奏するのが楽しみだ。
「はい皆さん注目してください。」
先生の言葉で楽譜を見ていた先輩の目線が一気に先生の方に向いた。
「東部支部研究発表会は1ヶ月後です。今は4月の上旬ですが少しずつ本番は近づいています。みなさんで力を合わせて、演奏がんばりましょう。」
『はい!』部員の元気な返事が聞こえた。私もすかさず返事をした。
「それでは今日はこの辺で終わりにしたいと思います。明日から曲練習が始まるので今日は明日に備えてゆっくり休んでくださいね。ありがとうございました。」
『ありがとうございました!!』
そして部活が終わった。