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元貴に抱きしめられたまま、しばらく動けなかった。
(……体、だる……けど、なんか、あったかい)
「若井。シャワー、浴びよっか」
「えっ……あ、うん……」
頷いたものの、立ち上がろうとして膝がガクッと崩れた
一緒入る?って言おうと思ったけど、ぐっとこらえて若井を脱衣所まで運んだ
「どっち先入る?」
「元貴先はいりなよ」
「いいの、ありがと」
wki side
元貴の背中が風呂の中に消えていく
若井は静かに扉を閉め、その場に立ち尽くした
(……なんで、「一緒に入ろう」って言えなかったんだろう)
ドアの奥からシャワーの音
まだ身体の奥に残っている熱とだるさが、じんわりと自分を包んでいた
(あのまま、もう少しだけ――そばにいたかったのに)
言葉にすれば、きっと彼は笑って頷いてくれた
わかっている。でも、それでも言えなかった
恥ずかしかったのか、意地を張ってしまったのか、自分でもよくわからない
ただ、胸の奥にぽっかりと小さな空白ができたような気がした
(こんなときくらい、素直になればよかったのに)
omr side
髪にお湯を通しながら、そっと目を閉じる
まぶたの裏に浮かぶのは、さっきまで触れていた、若井のあたたかさ
湯気の中、小さく息を吐いた
それは寂しさでも、後悔でもなく――ただ、彼に甘えたいという、静かな想いだった