あれから1週間後
学校の教室で今日もお弁当を前に、僕は箸を持つ手が止まっていた。
味がしないから、もう味付けもしてない。意味がないから。
「紗奈、今日のお弁当も美味しそうだね!一口ちょうだいよ!」
あ、今日もか……。
クラスの子たちが、にこにこしながら攻めてくる。
「え、…えっと…その…」
言葉が詰まる。
どう断ればいいか分からない。
心の中では、「やめて……」と叫んでいた。
そのとき、横から声がかかる。
「だめです〜!これは俺の!」
振り向くと、陽葵が大きな口を開けて、僕のお弁当を一口で頬張った。
「え……?」
クラスのみんなも一瞬、固まる。
僕はただ、少し顔を赤らめて見上げた。
陽葵はにこっと笑う。
「うん、とっても美味しい!」
それだけ言うと、陽葵のお弁当をくれた。
僕の心は、ふわっと軽くなった。
学校が終わって、教室のざわめきも遠くなった。
帰り道、僕は陽葵の横を歩きながら、少し勇気を出して口を開いた。
「陽葵……ありがとう、今日も……助けてくれて」
陽葵はすぐに笑顔を向ける。
でも、今日はいつもより少しだけ落ち着いた、優しい笑顔だった。
「ん?別に当たり前だろ。」
その言葉に、僕の胸の奥がじんわり温かくなる。
陽葵の前では、無理しなくてもいいんだ……
少しだけ歩幅を合わせてくれる陽葵の横で、僕は小さく頷いた。
心の中で、もう一度だけ「ありがとう」とつぶやく。
この瞬間は、ただ穏やかだった。
……でも、その時の僕は、まだあの地獄のような時間が来るなんて、思ってもみなかった。







