南米特捜班を出たのは午後六時半のことだった。
DJとは地下の駐車場で別れ、健太は南行きのフリーウェイに乗った。
夕方のラッシュに交通事故が加わり、フェスティバは渋滞にとらわれの身となった。正面から差し込む夕陽に、フロントガラスの上部についているサンシェイドを下げた。シェイドの裏には小さな鏡が付いており、丸いサングラスにツヤのない長い髪の健太を映し出した。
携帯が鳴った。発信元はキヨシだった。
「すいません、用件だけ言います」早口にマレナ宅の現住所と、家が頻繁に引っ越しを繰り返すらしいこと、共和国への避難願いを言うと電話はプツリと切れた。
健太は尻ポケットの手帳に新住所を書き込んだ。
渋滞は解ける様子もなく、赤いテールランプは遠方まで動かないままだ。
DJに連絡を取った。幸い渋滞とは無縁だという。
星が輝き始め、フリーウェイが動き始めた。DJから、キヨシを無事保護できたという朗報を受取った。