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……翌日、朝食を済ませた後に、彼に出かける提案をしてみたけれど、やっぱりあまり乗り気ではないようだった。
「貴仁さま、明日にも見つかるやもしれませんので、今日はせめて別のことを考えられてください。坊ちゃまが憔悴をされていては、彩花さまもお困りですので」
源治さんの助言に、彼がハッとしたような顔つきになる。
「ああ、そうだな……。君まで、やるせない思いに付き合わせてしまうところだった。悪かったな……」
「悪かっただなんて……」と、首を横に振る。
「私は、あなたに心休めをしてもらえたらって」
「そうか、ありがとう」と、彼が笑みを浮かべて見せる。
「では、二人で出かけようか。私は玄関で待っているから、用意ができたら来てほしい」
「はい」と彼に答えて、出かける準備をしに自分の部屋へ向かった。
身支度を済ませて玄関ヘ行くと、待っていた彼から、「車を出そうか?」と、声をかけられた。
「あっ……と、貴仁さんさえ良かったら……」
平静を装ってはいても、まだどことなく打ち沈んで窺える彼が心配になる。
「私は、大丈夫だ。気づかってもらって、悪いな」
彼はそう言って優しげに微笑むと、車を出しに行った。
気をつかってくれているのは、断然貴仁さんの方で……と、感じる。だって、昨日から彼は『すまない』『悪い』って、何度もくり返していて……。
そんな彼のためにも、指輪がどうか出てきてくれることを願わずにはいられなかった。