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若き覇王に、甘くときめく恋を

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若き覇王に、甘くときめく恋を

183 - 第五章 彼と共に育む、真愛の形 EP.2「幸せな暮らしに落ちる、不穏な影…」⑥

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2025年06月01日

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「どこに行こうか?」


助手席に乗り込むと、彼から尋ねられた。


「そうですね……」と、しばし頭を巡らす。


できれば、彼が少しでも気分が紛れるところへ行きたかった。


「……じゃあ、あのホテルのカフェに行きませんか?」


ふと考えついて口にすると、


「ホテルの……?」と、彼が首を傾げた。


「あなたと初めて会った時に行った、ホテルです。あのカフェで、もう一度ティータイムがしたいなって」


「ああ、あそこか。わかった」と、彼が頷いて、ハンドルを握り直した。


あの場所には、一概にいい思い出とは言えないところもあったけれど、こうして幸せになれた今では、せっかくの初めての出会いの場として大切でもあるあそこには、いつかまた記念に二人で訪れられたらと、ずっと頭の隅に抱いていたことでもあった。


カフェに着き、頼んだシフォンケーキと紅茶を前に、彼と向かい合った。


ふわふわのホイップクリームが添えられたケーキを、フォークで切り分けて一口を頬張る。


「おいしーい。ここのケーキって、こんなにおいしかったんですね」


ほっぺたを片手で押さえて言う私に、


「ああ」と、彼が短く頷く。


「このシフォンケーキのうまさは、前から私も知っていたんだが、そんな話をするより先に、君を帰らせてしまうミスを犯した……」


彼が、ふーっとため息を吐いて、


「改めて言うが……、あの時は私の思い違いのせいで、本当に君には悪いことをしたな」


小さく頭を垂れるのに、「いえ! 貴仁さん、ストップ!」と、急いで否定をした。


「えっと、その……前にも話したかもしれないですが、あの出会いがあったから、私はあなたのことをよけいに気になってしまったと言うか……」


照れ隠しに、ティーカップを口元に運びつつ、はにかんで口にすると、


「よけいにか……」


彼が呟いて、ふっと緩やかに顔をほころばせた。

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