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そして……
五日目の朝、である。
レイブは誰よりも早く起き出していた。
この前の冬篭りの間中、ジグエラから口の中が酢で満たされたんじゃないかって位に言い聞かされた、
『あのねぇ、レイブ! 魔術師の朝は早い、そう言われているんだからね? アナタこのままの寝ぼすけさんのままで居たら、バストロみたいな魔術師になっちゃうわよ! ほらほら、起きた起きたっ!』
こんな言葉、まあ説教に因る所が大きかったのだ。
無論、レイブ自身は師匠であるバストロを尊敬していたし、近しい存在になる事を心から望んでも居る。
だが、日々の暮らしの中でジグエラやヴノと会話を重ねる中で、全く別個の思いも抱いていたのである。
端的に言おう。
――――そりゃ師匠みたくなりたい気持ちには嘘の欠片(かけら)も無いけどぉ…… でもぉ、もう少し知的だったら最高なんだけどなぁ~
…………まあ、バストロってあんな感じだからね、レイブの気持ちも判らなくは無い、な……
そんな理由からレイブは冬篭り前とは違って、早起き属性にキャラチェンを果たしていたのである。
岩山の岩窟はその名の通り、山を登った高所に存在している。
冬が去ったとは言え未だ早春の山岳地なのだ。
薄っすらと明るむ山の空気は、太陽の熱に因る放射冷却に因って、一層厳しい冷気を少年の柔肌に向けて刺す様に襲い掛からせるのであった。
レイブの吐く息吹も真っ白だ。
「ふうぅ~、ふうぅ~」
冷たい風と外気に上半身を曝した少年は、年齢に似合わぬパンクアップされて脂肪の欠片も見つけられる事が出来ない馬鹿みたいに鍛え抜かれた肉体を紅潮させながら言う。
「まだまだ冷え込みは厳しいけど、まあ、良い朝だな! いつもと変わらない何でもない一日の始まり、そんな感じだね! でも…… そろそろ、おじさんやジグエラ、ヴノが帰って来て欲しいなぁ、んまあ、今日辺り帰って来るんだろうけどぉ…… ん?」
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
レイブの独り言を中断させるけたたましい音に、当のレイブは心底残念そうな表情を浮かべて呟くのである。
「ああ、また僕が作ったアミュレットの誤作動かぁ…… 個人用の石化防止の護符、タリスマンや治療薬の粉薬、強壮剤の血清は上手に作れる様になったのになぁ、あの警報装置、アミュレットだけは中々上手く作れないんだよなぁ~、今回こそは上手く作れたと思った自信作だったのになぁ~、レイブがっかりだよ~、はあぁ~」
ふむ…… レイブ本人は自作のアミュレットの不具合に嘆く事一入(ひとしお)だな。