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十一

 

 オルフィノのスーパー・プレーによる衝撃は大きかった。だが、ヴァルサは少しずつ調子を取り戻した。アリウムもより徹底してオルフィノをマークするようになり、不安定ながらも追加失点は免れていた。

 前半三十分過ぎ、敵の5番が零れ球を拾った。バックスイングし、大きく蹴り出そうとする。

「させないっす!」右にいた天馬が急加速。スライディングで割り込んだ。

 チッ! 天馬の足先が掠り、キックのコースがわずかに変わった。だが勢いは減じておらず、高速でヴァルサ陣地へと飛来する。

 最後列の暁が腿でトラップ。敵9番が迫り来るが、左で転がして抜き去った。

 暁は猛進を続ける。刹那、神白の頭に閃きが生じた。ゴール前を離れて前進し、暁が上がった穴を埋める。

「神白君?」ベンチのエレナから不思議そうな声がした。今や平行の位置にいるアリウムも、怪訝な面持ちをしている。

 ドリブルし続ける暁に、ルアレ5番が寄せた。暁、小さく蹴り真似を入れると、右方のレオンにパスをした。

 首振りで周囲を確認し、レオンは右のライン際の5番に落とした。5番、小さくバックスイングし、低いクロスをゴール前に入れる。

「これで同点!」力強く喚いた天馬が疾走。頭から飛び込み、ヘディング・シュートを撃ちに行く。

 ボールは天馬の額に触れた。だが直後、モンドラゴンの出した左足に当たり、大きくクリアされた。勢いよく飛んで、守備陣と平行の位置にいる神白へと向かってくる。

「イツキ、どうしてそんな前に──」レオンの驚いた声が耳に届くが、神白は不思議な直感に従い胸トラップした。大きく足を引き、力いっぱい蹴り込む。

 ドライブ(縦回転)の掛かったボールが敵ゴールを襲う。距離はおよそ四十m、紛れもないロングシュートだった。

 ルアレのキーパーはバックステップしていく。その間にもボールは進む。

 キーパーは跳躍した。指先に触れた。神白のシュートは軌道を変え、ゴールの上側に外れた。ヴァルサのコーナー・キックである。

 キッカーの天馬がボールを拾いに行った。神白は全力疾走で、ヴァルサ守備陣の後方へと移動していく。

(なんだろう、この感じ)神白の思考はいまだふわふわと纏まらなかったが、同時に強い全能感も覚えていた。

 

十二

 

 前半終了が近づいた。スコアに動きはなかった。ヴァルサもよく攻めてはいたが、モンドラゴンたちの好守に阻まれていた。

 神白は、依然として不思議な感覚に支配されていた。スタンスは、味方の攻撃時はディフェンスラインのわずかに後ろに移ってパス回しに参加、守備時もゴールから遠い位置、暁たちの十mほど後方に待機というものだった。

(俺の今のスタイルに名前を付けるなら「偽キーパー」ってところか。リスクの大きさはわかってる。だけどそれ以上にメリットはある! 俺が敵を引きつければ、パスコースが一つ空くんだ!)

 不安もあったが、ねじ伏せて堂々と振舞っていた。上手くいっているからか、監督、チームメイトからは異論は出ていなかった。

 ロスタイムに差し掛かった。敵がゆっくりとボールを回し、モンドラゴンがコート中央でボールを持った。

 ヴァルサ8番が詰め寄った。モンドラゴン、右足で小さく跨ぎ左に出した。動きは速く、8番は従いていけない。

 プレッシャーを躱し、モンドラゴンはオルフィノに出した。だがアリウムは密着マークしている。

 オルフィノ、後ろを向いたままリフティングを開始。刹那、神白の頭にスパークが走った。すぐに身体の向きを変え、ゴールにダッシュを始める。

 ドンッ! 低い音が背後から聞こえた。神白は振り返らずに駆け続ける。

 視界をボールが縦断した。(それが水たまりに落ちるんだろ! わかってるっての!)神白の予想通り、ボールは水たまりに落下。急激に加速しゴールへと転がり行く。

(間に合う!)神白は強く信じて走る。そして頭から跳び込んだ。

 神白はボールを片手で止めた。ゴールラインぎりぎりだった。

「あっちゃー、防がれちゃったか。ざぁんねん。良いアイデアだと思ったんだけどな」

 オルフィノの声が耳に届いた。天真爛漫で無邪気な声色だった。

(モンドラゴンのプレーでインスピレーションを得たって訳かよ。恐ろしいほどのサッカー・センスだな。だけど、さっきのプレーで何かを掴んだ! お前の一人舞台もここまでだ、オルフィノ!)

 神白が勇ましく心中で叫ぶと、高らかにホイッスルが鳴った。ヴァルサ、一点ビハインドで前半終了。

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