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◇懇談の日
私と夫が懇談場所に行くと、すでに松尾さんと淳子さん、松尾さんの
ご両親が待っていた。
私たちが部屋に入るや否や、松尾さんがすぐに立ち上がり挨拶してくれた。
「いやぁ~渚ちゃん、わざわざ私事でご足労おかけしてすみません。
淳子さんが渚ちゃんとは親しくしていてよく知っているので自分のことは渚ちゃんに
聞いてほしいって言うものですから。あっ、こちらはご主人?」
「はい、私の主人です」
松尾さんが話している間、匠平さんが一緒に来るなどと思っていなかった
淳子さんの顔色が何となく悪い。
「……と言うのも、僕の昔気質の両親が心配性なもので淳子さんの素行調査を
してからでないと結婚は許可できないと言うものですから。
まさか、ご主人まで同行してくださるとは……お忙しいのに恐縮です」
「ご挨拶が遅れました。はじめまして、加納匠平と言います」
「こちらこそ、申し遅れましたが松尾佑と申します。
今日は来ていただきありがとうございます」
ここまで挨拶を交わしたところで私たちは松尾さんに促されて席に付いた。
そして私たちは松尾さんのご両親にも簡単にご挨拶を済ませてから
本題に入った。
「松尾さん、正直に言いますと淳子さんとは学生時代の先輩後輩として以前は
親しくさせていただいておりましたが、同じマンションで出会ったあと淳子さんの言動に
不信感を持つようになり夫とも相談して引っ越ししたのです」
「えっ、引っ越した原因が淳子さんなんですか? えーっ、それは……」
「ですから今回のお話も何度も私どもはお断りしました」
「でも、今日こうして来てくださったのですよね?」
「松尾さん、これを見てください。
淳子さんから届いたメールの内容と、淳子さんがお店に直談判にやって来た
日にたまたま私たちの側にいた桜さんが撮ってくれていたものです。
順番通りにお見せしますので、流れが分かっていただけるかと思います」