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2 Start
「……ん、ぅ……」
夜中の3時。
すちは、奇妙な『トントン』という軽い音で目を覚ました。
気のせいかと思い、ベッドから起き上がってリビングへ向かう。
友達4人に相談して少し安心したはずなのに、なぜか部屋の空気がひどく冷たい。
トントン。トントン。
音がしたのは、ベランダのガラス窓からだった。
すちは生唾を飲み込み、カタカタと震える足でカーテンへと近づく。
「風、かな……?」
自分に言い聞かせながら、そーっとカーテンの隙間を数センチだけ開けて、外を覗き込んだ。
その瞬間、すちの心臓がドクンッと跳ね上がった。
「――――ッ!!!???」
悲鳴すら出なかった。
月明かりに照らされたベランダ。
手すりの外は地上数階の虚空のはずなのに、そこには、向かいのビルから飛び移ってきたらんが立っていた。
らんはガラス窓にぴったりと顔をくっつけ、暗闇の中で瞳をドロドロの愛で濁らせながら、すちをじっと見つめて歪に微笑んでいる。
「……すち、みーつけた」
らんの口元がそう動いた気がした。
パニックになったすちがガタガタと後ずさりすると、らんは窓ガラス越しに愛おしそうに手を伸ばし、すちの顔の輪郭をなぞるようにガラスを撫でた。
そして、怯えるすちに向かって、そっと口元に指を当てて『しーっ』とジェスチャーをし、パチッと甘いウインクを返して、闇の中へと音もなく消え去っていった。
「いやぁぁぁぁぁっっっ!!!!泣」
すちは恐怖のあまり床に腰を抜かし、大号泣しながらスマホをひったくった。
パニックで震える指で、4人の友達のグループ通話へ必死に発信ボタンを押す。
プルル、プルル、ガチャッ!
『……ん、すち? どうした、こんな夜中に……』
一番に電話に出たのは、眠そうな声のいるまだった。
「いるまちゃん……っ、助けて、助けてぇぇぇ!! 窓のところに、ストーカーがいて……っ、おれ、殺されちゃうよぉぉぉ!!!」
すちが泣き叫んだ瞬間、電話の向こうで凄まじい物音がした。
『あァ!? 居やがったのかそいつ!! すち、今すぐ鍵閉めてベッドに隠れてろ! 俺が今から5分でそっち行く!!!』
『僕も今すぐ行く!! すちくん待ってて!!』
『こさも行くーっ! すちくんを苛める奴は絶対に許さないーーっ!!😭』
『俺、包丁(※料理用)持ってチャリで爆走して向かうわ、すち、絶対外出るなよ!』
グループ通話で繋がっていた他の3人も一瞬で目を覚まし、大親友のピンチに正気を失うほどの勢いで家を飛び出した。
わずか数分後。
バァァァン!!!と玄関の扉が開き、息を切らしたいるま、なつ、みこと、こさめの4人が雪崩れ込んできた。
「すち!!! 無事かっっ!!」
「いるまちゃん……みんなぁぁぁ……っ!!!」
すちは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、4人の胸の中に飛び込んだ。
175cmのすちの体が、自分より背の低いお兄ちゃんお友達たちに四方八方からギチギチに抱きしめられる。
「怖かったよね……もう大丈夫、僕たちがついてるからね」
みことがすちの背中を優しくさすり、なつが「これからはマジで24時間体制でお前を守る」と誓う。
4人のピュアで温かい友情の包囲網に守られ、すちは真っ赤な顔で泣き止むのだった。
――だが、その様子を。
向かいのビルの屋上から、望遠レンズのカメラでじっと盗撮しているらんの姿があった。
「ふふ、お友達が集まっちゃったね。……でも、そんなに怯えて泣くなんて、やっぱりすちは可愛いなぁ。早く俺の可愛い小鳥(ケージ)にしてあげるからね……」
らんのストーカーとしての執着は、友達のガードを前にして、さらに狂気的に燃え上がるのだった。
2 終
次回♥️290💬1
コメント
11件
やっぱ人って怖えぇ俺もおばけとか大丈夫だしホラゲー好き
やっぱ人間って怖いなってこの作品見て思い知らされた... 幽霊なんかよりも数百倍怖い(うち幽霊怖くないタイプ)
うわぁ、このエピソード、心臓に悪い……! 深夜3時のベランダにらんさんが立ってる描写、月明かりに照らされたあの歪んだ微笑みが本当に怖くて、読んでるこっちまで息を止めちゃいました。でも、すちくんのピンチに4人の友達が寝ぼけまなこで飛び出して駆けつけるシーンは一気にあったかくなって、ギュッと抱きしめ合う友情にじんときました。ラストの盗撮カットも不気味で、続きがすごく気になります……!
ᰔ
82
#初心者🔰
ゆあ
238
#緑愛され
ゆらね🎼🍵🍍🌸
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