2025.2.5
紫目線
2025年2月5日、23時23分。
配信が終わり、モニターの光だけが残る。
静かになったリビングにひとり。
「結婚……ね。」
改めてその事実に息が詰まる。
付き合っていたのに。
彼とは”恋人”だったのに。
関係性の名前が変わってしまった。
それを世間が知ってしまった。
モニターが歪む。
あの日のように感情が溢れる。
「……なに泣いてんの。」
「ないてねぇよ…」
エアコンも付いていないリビングにいた俺に、毛布と優しい声がかけられる。
そのまま背中から体温が伝わる。
あぁ、彼のこういうところが好きなんだ。
「配信、聴いてたんだね……」
「ぅん…」
「…聴かないでよ、あんな配信……」
「ねぇ、きりやんは…後悔、してない?」
「……してないよ。」
左手にある白金が光を反射する。
それを愛おしそうに眺めては、蜂蜜を蕩けさせる。
心臓が収縮する感覚がした。
「そう…か……」
「…スマイルは後悔してる?」
そんなに不安そうな顔でみないでくれ。
話を持ち出したのはきりやんなのに。
区切りをつけたのはきりやんのくせに。
「してるよ…少しね。」
「……そっか。」
こんな小さなリングで、彼は縛り付けられることになってしまった。
罪悪感も後悔も懐疑心もある。
「じゃあ、スマイルは幸せじゃない…?」
「…もちろん。」
「結婚できて幸せだよ。」