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※前回の“束の間の休暇〜Lupinにて〜”を第6話なのに第7話と書いてしまいました。僕の確認不足ですすみません。今回が第7話になりますどうぞご了承ください。
太宰の執務室…かな?
「そういや、手前どうして人虎と鏡花を探偵社へやったんだよ?こっちにやっても戦力になっただろ?」
そう疑問をぶつけたのはポートマフィア幹部の中原中也。相手は勿論同じくポートマフィア幹部の太宰治だ。
中原は太宰がポートマフィアを裏切っていない、探偵社に就いたのは任務の為、と知った時からこの疑問を感じていた。
が、4年ぶりに敵としてでは無く再会出来たと言うこともあり、一ヶ月と少しは聞けずにいたが諸々が落ち着いた今、その疑問を吐き出していた。人虎然り、鏡花然り、ポートマフィアに居た方が此方が有利になる程の戦力だ。其れを何故一時的に居るだけの探偵社に、光の世界に叩き出したのか。
「ふふ、其れはね、“三刻構想”の為だよ。敦君と鏡花ちゃん、私が居ない探偵社では三刻構想の一角を任せるには力不足だと思ったんだ。頭脳は乱歩さん独り居れば申し分無い。だが“武装”している人間が少し、ね」
三刻構想、ヨコハマの秩序を守る為の構想。昼は特務課。夜はポートマフィア。そして、その昼と夜のあわいを武装探偵社。其の三刻が己の領の秩序を守る事だ。
「私はね、此の三刻構想を実現させたいと思っている。其れじゃ、理由にならないかい?」
「いーや、充分だ」
中也は安心した。心底安心した。実の所、心配していたのだ。太宰がポートマフィアを裏切っていないと聞いてから。
何を?それは勿論太宰がポートマフィアを任務では無く、本当に裏切っていると云う心配だ。
所謂二重スパイ。あちらには稀代の名探偵が居るのだから有り得ない話ではないし、何より人虎と鏡花を探偵社に入社させた事がその心配を加速させていた。
俺でもあからさまに裏切りの可能性のある行動をポートマフィア首領である森鴎外が気にかけていない訳が無い事は分かっているが如何せん“あの”太宰だ。何かと言いくるめてそうでは有るが恋人である俺に本当の事を言ってくれていると信じよう。
「はーっ…」
「おっと、最小幹部はお疲れ様かな?」
「うるせー、最少年幹部」
少なからず緊張していたのか、肩の力を抜いて脱力し太宰の上に雪崩込んだ。
筋力の無い太宰は急に倒れ込んで来た中也に対応し切れず其の儘後ろへ倒れ込む事となったのだった。
「…ゴホン、次の任務の話をしに来たのですが…」
「あゝ、芥川君。入って良いよ。」
「はい」
芥川は、次の任務を伝えに来たら親しい上司二人がベッドでくっついて寝転んでいる。と云う世にも珍しい場面に遭遇したが慌てずに…否、慌てたことを表には出さずに対応したのだった。
まぁ、太宰は心の中で(芥川君が焦ってるの面白いなぁ…よし、次の悪戯の標的は芥川君にしよぉ〜っと!)となっていたが。
「次の任務なのですが、太宰さんと中原さん、僕(やつがれ)の三人で行けと」
任務メンバーだけでも衝撃のものとなっていた。
双黒は元々組んでやってきていたが中也が幹部になった時点で以前より組んで任務に当たる事自体少なくなっていた。それは、ポートマフィアにとって双黒が組む程の強敵が中々に居ない事の表れでもあったが、今回はその双黒に加えてポートマフィアの禍狗、芥川での任務だ。どんな強敵だろうか。
「幹部二人と芥川ァ?そりゃ、どういうこった!そんな大事なのか?俺は何も聞いてないぜ!」
「ふむ…部下はどの位だい?出来れば、」
「事後処理の人員は居ますが他は居ません」
「そうだね、そうこなくっちゃ」
全く付いて行けていない中也、恐らく森の真の目的を含めて全てを察したであろう太宰、独り資料を見て何がおかしいかまでは分かった芥川の沈黙が訪れた後
「いや、手前!分かってんなら説明しろよ!」
「えぇっ!ちゅーや分かってなかったの!」
「分かってない事分かってた癖に煽って来るんじゃねェっ!」
中也が耐え兼ねて太宰を問いただし始めたので太宰は中也を思う存分煽った後に口を開いた。
「芥川君、中也に資料を見せてあげて」
「は、はい」
「……んだコレ?俺等三人も要らねェじゃねェか」
そう、今回の任務は裏でガラクタの武器を流通させている弱小組織の壊滅であり、双黒+禍狗等というガチガチの装備でなくとも良いのだ。
「其処なのだよ。でも、私は此の資料を前に見たことが有るよ」
「あ?何処だよ」
「探偵社さ」
「「!」」
探偵社、其の名を出した途端中也と芥川、二人の肩が揺れる。
「此れだけのヒントが有れば二人でも分かっただろう?」
「未だ太宰さんを奪還しようと動いている探偵社へのトドメ、ですか」
「其の通り!私の記憶が正しければ日程も丸被り…否、探偵社よりも少し早いね?」
「探偵社より早く片付けて太宰の実力を見せ付けようって魂胆か」
「ふふっ、森さんも良いことを考えるね」
太宰は独り、妖しく嗤う。