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うわぁ‥なんだかとっても惹かれる文章です。読み進めるのが楽しい✨
雨が降ってる。
ザーザーと音でもしそうな勢いで。
こんな日のダンス練習は好きじゃない。
床が湿気で滑るからだ。
キュッと鳴った床に舌打ちをしつつ、放り出してあったタオルを手に取る。
今は、一人。
同居人は出かけて行った。
「多分ねぇ、夕方までには帰るよ。だから晩ごはんは一緒に食べようね?」
そんな言葉を残して。
そーいやアイツ、どこに行くのか言っていかなかったな。
壁に掛かってる時計を見上げれば、6時になろうとしてる。
「…夕飯作るか。」
呟いた独り言は思ったより響いて、同居人を思い出させた。
やだやだ、あんなクセが感染るのは。
「あ。」
しかも今日の当番、アイツじゃねーか。
明日やらせよ。
でも、同居人は、
9時を過ぎても帰って来なかった。
夕方までには帰るって、言ったよな?
奴の数少ない交友関係を思い出して、連絡を取ってみるけど、誰のところにも居なくて。
まさか轢かれたとか…ないと思いたい。
それなら真っ先に、元貴のところに連絡が行くだろう。
そんな元貴からメールが入る。
『高野のとこに行ってたみたい。ただ、もう帰ったって。』
元貴もあちこち連絡取ってくれてたらしい。
返信を打とうとしてたら、もう一通メールが届く。
『ただ、喧嘩別れみたいになって、りょうちゃん、部屋を飛び出してっちゃったから、謝りたいって。まだ捕まってないよね?』
ちまちまメールを打つのが面倒になって、電話する。
持ち物は…タオルと、鍵と…。
「今から探しに行くわ。」
コール二、三回で出た相手にそう告げる。
『頼んだ。心当たりは?』
「あるっちゃあるけど、ないっちゃない。」
アイツの行動範囲まで把握してねーよ、俺。
なんなんだよ、俺、アイツの保護者か?
立場逆転してねぇか?
アイツ、俺より年上だぜ?
『オレ、ちょっと身動き取れないからさ、若井よろしく。』
「よろしくされたくねぇ。」
元貴の笑い声を残して、通話は切れた。
たった一つだけ、心当たりはある。
同居初日の外食帰りに、寄った公園。
ここから近くて、都会には珍しく緑がいっぱいで、アスファルト敷きじゃなくて。
「タンポポ咲いてる!」
「これなずな!これスミレ!」
やたらアイツがはしゃいでたあの公園。
背がデカいくせに、足元しか見てなくて、張り出してた木の枝に激突してた公園。
…バスタオルの方がいいか。
伸ばしかけの、最近は綺麗になった髪を思い出して、俺はバスタオルを取りに行った。