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真っ暗な公園を、街灯の明かりだけを頼りに、人を探す。
なかなか難易度の高いミッションだと思う。
しかも降ってる雨で、視界はさらに悪い。
アスファルトじゃない地面が、足元を容赦なく汚していく。
「どこ行ったんだよ、アイツは…。」
公園の隅にある遊具、点在してるベンチ。
一通り回ってはみたけど、人影らしきものは見当たらない。
時々通る車が、植え込みを照らして行く。
…ん?
今、明らかに木じゃない影があったような…。
アイツが頭をぶつけてた枝のそば、背の低い植え込みの間に。
「…やっと見つけた。」
膝を抱えて座り込んでる探し人がいた。
いつからいるのか、被ってった帽子の縁からは水が滴ってるし、服なんか絞れそうなくらいに濡れてる。
てか、すぐそばにベンチあるのに。
地面に直接だから、履いてたカーゴパンツも上のTシャツも泥だらけになってる。
「おま…。」
『お前ね!』と言いかけて、口を閉じた。
俺の目に映る彼が、とても小さく見えて。
「涼ちゃん。」
呼びかけない訳にもいかなくて、とりあえず名前を呼んでみる。
膝の間に埋めてた顔を上げて、彼は俺の方を見た。
「………。」
雨の音に消されて、何言ってんのか分かんねぇよ、涼ちゃん。
首を横に振って、また膝に顔を埋めて。
最初と同じ姿勢に戻った涼ちゃんに手を伸ばす。
「帰るぞ。」
風邪引くから。
虚弱体質なの、昔から変わってねーだろ。
伸ばした手が腕に触れた瞬間に、涼ちゃんはもう一度顔を上げて。
はっとした表情になった。
「ごめんねぇ、わかい。」
口調も、いつもので。
顔も、笑顔だけども。
「あなた、今、絶対無理してるでしょ。」
そのくらいは、俺でもわかる。
「そんなことないよ?だはっ、びっちゃびちゃ。」
服の裾をぎゅっと絞ってから、立ち上がって。
「あー、やっぱり泥だらけ。ごめんね、洗濯、面倒だよね。処分しても構わないからね?ほら、わかいはちゃんと傘差して。もう僕はずぶ濡れだから、いいから。」
差し掛けてた傘を少し押して、濡れてた俺の肩を傘の範囲に収める。
「なぁ…、あんた…。」
なんで無理すんだよ、と言いかけた口は、冷たい手で塞がれた。
「僕は、お兄ちゃんで保護者なの。言わないで。」
目を伏せて、震える声で言ったその言葉は。
俺の中に、堅い響きを持って落ちてきた。
そんなに俺、頼りないかよ。
こんな時に、手の一つも借りたくないくらいに。
そんなに俺じゃ駄目なのかよ。
なんでだよ。
「…好きにしろよ、先帰る。」
持ってたバスタオルを押し付けて、俺は踵を返した。
なんなんだよ、自分の方が年下みたいなことしてるくせに!
足元に落ちる雫は、雨なのか、他の何かなのか。
分かりたく、なかった。