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入学式が始まった。 余、イリス、フレア、シンカは、2年生として列席する。
この学園は基本的に1学年あたり300人を越える。
入学者、3年生、教師陣や父兄も含めれば、1000人以上になるだろう。
「相変わらず大きな体育館だね」
「そうね。ま、私たちの魔王様が支援してくださっているのですもの。当然ね。私のバーンクロス家も寄付しているし」
シンカとフレアがそんなことを言う。
確かに、この会場は大きい。
参列者が1000人を越えるのだから当然ではあるが。
この人魔合同高等学園”ミリオン”は、魔王である余が推進した学園だ。
予算は潤沢である上、フレアの実家などからの寄付金もある。
「白竜ユノがいつ仕掛けてくるかわかりません。警戒しないと……」
イリスがそう呟く。
余たち4人は並んで座っていた。
壇上にいるのは、校長と思しき初老の男性だ。
あまり印象に残っていないが、昨年度も挨拶していたな。
それに、そもそも余が校長への就任を認可したのだったか。
「……本日は絶好の入学式日和であり……うんたらかんたら……」
校長が長々と喋っている。
少し退屈になってきたぞ。
魔王たる余も、さすがに退屈には勝てない。
何か面白い出来事でも起こらないだろうか。
そんなことを考えていた、そのときだった。
「ぐはあああっ!」
突如、悲鳴が上がった。
その声の主は、壇上にて長話を続けていた校長だ。
「な、なんだ!?」
「どうされましたか!?」
他の教師たちが慌てた様子で駆け寄る。
そして、倒れた校長を抱き上げた。
そんな彼らの元に、2つの影が舞い降りた。
「長話はもう結構ですわ」
そう言ったのは、オレンジの髪が美しい少女。
なかなかに品がある。
「コイツの言う通りだぜ。あたいは戦いたくて来たんだ。体が鈍っちまってしょうがねえ」
そんなことを言ったのは、水色の髪をポニーテールにした女生徒。
身体能力が高そうだ。
「き、貴様らは誰だ! 一体どうやってここに入ってきたのだ!?」
教師が叫んだ。
「わたくしの顔を覚えておりませんの? せっかく頑張って首席しましたのに……」
「へへっ。これからは、忘れられない名前になるぜ? このあたいが、この学園を支配してやるからな! 逆らう奴らはボコボコにしてやるぜ!」
2人はそう言って笑った。
「わたくしはバーンクロス家が次女。昨年度の首席合格者フレア=バーンクロスの妹、ユリア=バーンクロスと申しますの。以後お見知りおきくださいませ」
「あたいはヘルルーガ。見ての通り、鍛え上げた肉体が自慢だ。よろしく頼むぜ」
オレンジ髪の少女と、水色の髪をポニーテールにした少女が、壇上で自己紹介をする。
校長を襲撃しておいて堂々と名乗るとは、いい度胸だ。
「……何をやっているのですか、彼女たちは……」
イリスが小声で呟いた。
「そう言うな。なかなか面白いではないか」
「ディノス陛下がそう仰るのなら……。しかし、この状況はまずいですよ。入学式をめちゃくちゃにする気でしょうか?」
「そうかもな。クハハ」
「ディノス陛下まで楽しまないで下さい」
イリスは少し怒った口調でそう言った。
「はぁ……。ユリア、何をしているのよ……」
フレアがため息交じりにそう呟いた。
ちなみに彼女は今、余の右隣に座っている。
余の腕にしがみつき、寄り添うように。
彼女の柔らかさと温かさを感じる。
「うーん……。隣のあの子、どこかで見たような気がするんだけどなー」
余の左隣には、シンカが座っている。
彼女が首をひねりながらそう言ったのだった。