コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……なぜそんな顔をしているんだ?」
凹んだ雰囲気を察した彼から、そう声をかけられて、
「……なんか、私って、ダメだなって。男の人と二人っきりになるのって、あんまり慣れてないっていうか……。さっきから何をしても、裏目裏目に出てる見たいで……」
少し前にも慰められたばかりなのに、またこんな話をしたら、旅行うんぬんの話じゃないけど、もう本当に嫌われちゃうのかもしれないとも感じる。
「……ごめんなさい……。私……」
「謝らなくていいと、言っただろう?」
「でも、こんなんじゃ私と一緒にいても、ちっとも楽しくないですよね……」
気持ちを切り替えなきゃいけないとは思うのに、一度ネガティブになった気持ちは、裏腹にどんどん沈んでいってしまう。
「楽しくないはずが、ないだろう?」
彼の優しさによけいに泣きそうになる。
「……僕は、君のそういう素直なところが好きなんだ。何も飾らない素顔を君が見せてくれることが、嬉しいから。だから君は、僕の前では素でいてくれたらいい」
溢れ出した涙を彼の指が掬い取ると、
「君が、好きだよ。他の誰でもない、君が、好きなんだ。だから、笑っていてくれないか」
伝えられた言葉が胸にじんと温かく沁み入るようで、私は「はい」と頷くと、今度こそにっこりととびっきりの笑みを彼へ返した──。