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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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街から北へ50キロほどきた、山間にある温泉街。

途中の道の駅で、わさびソフトや特大五平餅、ジビエの料理も食べた。


「写真、撮ろうよ!これこれ!」


貴君が見つけたのは、顔ハメのパネル。


「よし!どっちが面白い顔するか、競うよ」

「負けないからね」


通りすがりの人にスマホを渡して、撮影をお願いする。


「じゃあ、いきますよ、はい、チーズ!ぶっ!」


はいチーズの瞬間、二人して思い切りおかしな顔をしたのでシャッターを切る瞬間ブレたらしい。


「すみません、ブレてしまいました」

「じゃ、もう一回!」


今度はうまく撮れたらしい。

笑いながらスマホを返してくれる。


「楽しいご旅行になるといいですね」

「はい、楽しみます」


答えながら貴君と腕を組む。

私と貴君は、どんなふうに見えるのだろう?なんて考えながら、とにかく楽しもうと思った。

家を出る時は、旦那に友達と旅行に行ってくるとだけ言ってきた。

相手が誰かとか、男か女かとかそんなことは何も言わないし、聞かれなかった。


「そろそろ、旅館に行こうか?早めにチェックインしてのんびりしようよ」

「そうだね、あ、運転かわろうか?」

「大丈夫、俺、運転は苦にならないんだよね」

「そうなんだ、じゃ、お願いします」


助手席に乗り、音楽をかける。

見える景色に感動したり、ふざけた看板につっこんだりして、楽しい。

貴君と結婚する人は、きっとこんなことが当たり前になるんだ。

私だって結婚した当初はそうだった、旦那とどこに出かけるのも楽しかった。


でも、今日はそのことは忘れよう。

貴君とこの旅行を楽しむことに集中しよう。


せっかくのご褒美だから。


温泉にのんびり入った。

露天風呂は混浴じゃなかったけど、開放的なお風呂は気分も解放してくれた。

二人のことを知る人は誰もいないと思うと、はしゃいでしまう私。

部屋で食べる料理は豪華で、辛口の地酒も美味しかった。


ちびちび呑んで、ゆっくり話す。


「結局さ、貴君は結婚はするんだよね?」

「うん、いつかはしないといけないと思ってる、長男だしね」

「子孫も残さないといけないし?」

「そうだね、代々続いてきた家系を俺の代で途切れさせてしまうわけにはいけないし」

「お見合いするの?」

「あー、俺はしたくないけど出会いもないからね、おふくろが、見合いの準備してるみたいだよ」

「…で、いい女がいたら?」

「結婚するだろうね」

「…そっか」


何を確認してるんだろ?私。

時刻は12時をまわっていた。


「ふぁーぁ」


あくびが出たのは貴君。


「そろそろ寝ようか?」

「そうだね」

「ねぇ」

「ん?」

「しよ」


ストレートに誘ってみる。

断られるかなと思いながら。


「気持ちはとりあえず、横に置いておいて、しましょう。そこまでがご褒美ということで」


少し間があった。


「いいよ、こっちに来る?」


並んだ布団の、貴君が寝ている布団に滑り込んだ。

貴君の腕の中に入る。

軽くキスをしたあと、貴君は私の首筋から胸に唇を這わせていく。

ゾクゾクと腰のあたりから焦ったいような、くすぐったいような何かの衝動がわきあがる。

この感覚、久しぶりだと思った。

皮膚と皮膚が合わさってそこからとろけていくような感覚。


もう一度、ねっとりしたキスをしながら、貴君の右手は私の腿を割ってもう充分に溢れているそこへ入ってくる。


「あ…ダメ、そこ、弱い…」


指を少しだけ入れて、感じるところをピンポイントで押すような突くような、回したりさすったり。

まだ、イキたくないとこらえる。


「今度は私が」


体を入れ替え、今度は私が上になる。

できれば、体だけでも私のものにしたいなんて強欲に願う。

セックスしたからって恋人ではないし、結婚するわけでもないけど、今の時間だけは誰にも邪魔されず一つになりたい。

そして、幸せになりたい、この瞬間だけでも。


私は貴君が好きだ。

言葉にはしないけど。

これが最初で最後、貴君がお見合いしてしまったら、こんなことはもうない。

ただの友達になるんだから。


何度も何度もイッた。


貴君が私の中に入ってきたときには、泣いてしまった。

暗い部屋では、きっと、貴君にはバレていない。

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