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#溺愛
その日の夜。私は机に屋敷の図面と領地の地図を広げた。
「フレッド、そして皆。聞いて」
4人の視線が集まる。
「この領地の“これから”について、私の考えを話すわ」
私は指先で、屋敷の図面をなぞる。
「この屋敷の20以上ある客室を改装して……王都の貴族を招く“ホテル”と“レストラン”にするわ」
「ホテル……?」
フローラが小首をかしげ、迷うように言葉を続けた。
「王都から馬車で二時間もかかる場所に……わざわざ、お客様がいらっしゃるのでしょうか?」
私は小さく笑った。
「――2時間『も』かかるから、いいのよ。小旅行にぴったりだわ」
――ドン。
私はフレッドに用意させていた一冊の本を、机に置いた。『紅の真実』である。
「今、王都の令嬢たちはこの物語に夢中だわ。だったら――その“聖地”を作ればいい。この花畑こそが、物語の舞台だと噂を広めるのよ」
レオンが楽しそうに目を細めた。
「へえ、面白いね」
「ええ。ここには『小説そのままの景色』があるわ。足りないのは三つよ」
私は3本指を立てた。
「泊まる場所、食事をする場所、そして─」
私は地図の、荒れ果てた街道を指差した。
「ここへ来るための“道”よ」
「砂利道を石畳に整備して、馬車が通れるようにするわ。花畑も散策できるように整えるのよ」
私は力を込めて言い切った。
「……人が来れば、街に活気が戻るわ。アイリス領を、王国で一番の『人気観光地』に変えるのよ!」
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