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後日、 またあのときと同じ猫が迷い込んできた。
「また来たの」
陸は作り終わったドリンクを持って体育館に戻ろうとしていた。
仔猫を見て、陸はある人を思い浮かべた。
「なんか君、あの学校の…あの子に似てるよね」
人懐っこさと何度も迷い込むアホさ。そして、小ささと毛色の明るさが似ている。
「烏野の…日向君に似てる」
荷物を一旦置いて撫でる。頭を擦り付けてくる姿は「もっと撫でて」と言っている様だった。
陸は少し考えて言った。
「そうだ、君の名前は翔陽にしよっか」
嬉しそうな鳴き声を上げてくる翔陽をもう一度撫でる。
「さて、そろそろ行かないと」
一度置いた荷物を持ち、体育館へと急ぐ。
翔陽は陸の後を付いてきた。
「…来たいの?」
答えるような声を出し、今度は体育館に入って来る。
「危ないから、邪魔しないようにね」
分かっていると言うように鳴き声をあげ、翔陽はボールで遊び始めた。
「あれ、あの時の猫じゃないですか」
金田一が言うと、陸はドリンクを渡しながら言った。
「そう。翔陽っていうんだ」
「なんか、烏野の十番を彷彿とさせる名前ですね」
「だってあの子に似てるんだもん」
金田一は「確かに…」と返しながらドリンクを飲む。
すると、足元に翔陽が寄ってきた。
「撫でて~って言ってるみたい」
笑いながら言うと、どこから湧いたのか。及川がやって来た。
「陸ぅ~」
「今翔陽撫でてる」
「翔陽?」
「うん、この子」
「何であえてその名前…」
及川は頭を抱え始めた。
(どうしたんだろ)
陸は翔陽の肉球を及川の頬に押し付けた。
及川が驚いたような顔をして陸を見ると、陸は「えへへ」と笑って言った。
「元気になった?」
その時だった。
陸の視界は及川でいっぱいになり、唇に何か柔らかい感触がぶつかる。
「!?」
すぐに感触は離れたが、及川も戸惑っているようだった。
「徹君、今…」
真っ赤になった顔で呟いた陸はすぐさま翔陽で顔を隠した。
どくどくと、煩すぎる程に心臓が脈打っていた。